話が脱線しかけたので元に戻そう。今回のベンチマークテストの測定中には、PC全体の消費電力を市販のワットメーターで計測した。測定中のイメージはこんな感じだ。記録値は、計測中の瞬間最大消費電力値を採択した。
さて、結果をまとめた表は以下の通りとなる。
表中、4K解像度のテストで「プレイ不可」判定となったGPUでは、フルHDテストの方が消費電力が高い結果を出しているが、これは誤記あるいは誤測定ではない。GPUが各ユニットにおいて“理想通り”に描画処理を回すことができず、結果としてGPU負荷率は常に99%に貼り付いているのに消費電力はそれほど上がらなくなる――これが、不思議な逆転現象の正体だ。
まず、フルHD解像度は今回試したGPU全てで「表示に快適」判定を獲得した。バリュークラスのGPUであるArc B580 Graphicsは理論性能が14TFLOPS程度だが、それでもグラフィックスメモリの帯域幅が毎秒456GB、容量も12GBあるので、フルHD解像度をターゲットにするなら良い選択肢となりそうだ。
ちなみに、Arc B580は消費電力も少ない。コスト重視の入門クラスのゲーミングPCにはピッタリかもしれない。
ベンチマークスコアでトップに立ったのは、当然のように「GeForce RTX 5090」である……のだが、「GeForce RTX 4090」もいい感じだ。というか、5090と4090のスコアはほとんど変わらない。
これには2つ理由がある。1つはCPU(Ryzen 7 5700X)がやや古いこと、もう1つはCPUのPCI Expressバスが「PCI Express 4.0」準拠で、5090が要求する「PCI Express 5.0」よりも転送速度で劣るということだ。CPUやPCI Expressバスの性能に足を引っ張られて、5090のポテンシャルを最大限に引き出せなかった可能性も否定できない。
しかし言い方を変えれば、今回テストに用いたPCと同程度の性能なら4090でも十分だということだ。もっとも、4090も5090も消費電力が非常に大きいことはとても気になる。
「GeForce RTX 4070」と「Radeon RX 6800 XT」は、解像度を問わず近しいスコアをマークした。理論性能だけを見るとRadeon RX 6800 XTの方が3割も低いのにスコアが拮抗(きっこう)したのは、グラフィックスメモリの帯域幅が近いからだと思われる。
「GeForce RTX 3090」は、2020年当時は“ウルトラハイエンド級”だったのだが、フルHD解像度のスコアは、1つ先の世代のミドルレンジである4070とほぼ同じだ。しかし、理論性能値とグラフィックスメモリ帯域の差に助けられて、4K解像度のスコアでは4070を引き離している。グラフィックスメモリの容量で見ると、3090は4070の2倍もある。そこにも大きな価値はあると思うが、消費電力は4070の1.5倍。あえて今から選択するのは難しいかもしれない。
比較用に借りた「Radeon RX 7600」と「GeForce RTX 4060 Ti(8GB/16GB)」の結果についても見ていこう。
まずグラフィックスメモリの容量が8GBのRadeon RX 7600とGeForce RTX 4060 Ti(8GB)については、4K解像度のテスト結果がかなり悪い。理論性能的にはより低いはずのArc B580にもかなわない。もっとも、Arc B580の4Kテストも「ゲームプレイに問題あり」であることには変わりないのだが……。
一方、同じ理論性能を持つGeForce RTX 4060 Tiの8GBモデルと16GBモデルを比べると、16GBモデルについては4K解像度でもギリギリで「ゲームプレイ可能」の判定となった。GeForce RTX 4060 Tiとほぼ同じ理論性能を持つRadeon RX 6800 XTは、グラフィックスメモリの帯域幅が広いおかげか「快適にプレイできる」スコアをマークした。
ちなみに、フルHD解像度ならRadeon RX 7600はもちろんGeForce RTX 4060 Ti(8GB/16GB)も「非常に快適にプレイできる」という判定となる。4Kで遊ぶことを考えなければ、グラフィックスメモリは8GB、帯域幅は毎秒300GB以下でも快適に遊べそうだ。
もっとも、GeForce RTX 4060 Tiの実売価格は8GBモデルでも7万〜8万円台で、下手をすると10万円弱の製品もある。「フルHDでも構わないからモンスターハンターワイルズを遊びたい」という人は、実売で半額程度から手に入るArc B580やRadeon RX 7600/7600 XTがベターかもしれない。
最後に、モンスターハンターワイルズベンチマークを実行している際のCPUやGPUの負荷についても言及しておこう。
テスト中は、フルHD/4Kいずれの解像度でもCPU負荷は60〜70%あたりだった。Ryzen 7 5700Xではなくて、1つ下の「Ryzen 5 5600X」(6コア12スレッド)でも大丈夫そうだ。ただ、PCではバックグラウンドプロセスがいろいろと動作していることを踏まえると、同じPCでゲーム実況配信も同時に行うなら8コア16スレッド以上のCPUの方が良いとは思う。
GPUについては、いずれも4K解像度時は負荷が99%に到達していた。逆にフルHD解像度ではGeForce RTX 4090/5090といったウルトラハイエンド級GPUなら80%前後にとどまる。これは、先述の通りCPUやPCI Expressバスの性能による“頭打ち”で、GPUの最大性能を引き出せなかったのだと思う。
筆者はPCゲーミングを積極的に楽しんでいる。それでも「PCI Express 5.0対応」「DDR5メモリ」というPCにアップグレードしたのは2024年になってからだった。
実際問題として、「普段使いのPC」として考えるなら今でも「PCI Express 4.0対応」「DDR4メモリ」のシステムで困ることはない。しかし、殊にPCゲーミングとなると、特に最新AAAタイトルは、最新技術を積極活用してくることもあって、ユーザーに対して要求する性能の“底”を年々、少しずつ上げてきている。
2025年の“底上げ”は、ある一定の性能クラスのPCを持つゲーミングファンに「買い換え」あるいは「システムのアップグレード」をやんわりと要求するレベルに達していると感じる。
筆者のように、2025年内にPCゲーミングのシステムをアップグレードしようと計画している人は一定の割合でいるはずだ。ゲーミングPC自体の新規購入/買い換えの計画を練っている人も多いだろう。
その際、ゲームプレイにおいて特に重要なアイテムとなるGPU選びには、ことさら慎重に熟慮を重ねた方がよい。その際に、この記事で挙げた3つの要件について意識して見てほしい。
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