Lenovoは、ThinkPad X9シリーズがなぜ「X9」なのか、特に説明していない。ThinkPad X1シリーズは「フラグシップゆえに『1(One)』である」ということが想像できるが、「X9」と名付けた“心”は分からない。何より、ThinkPadのアイデンティティーでもあるTrackPointを非搭載とした理由も語っていない。
そこで筆者は、バトラー氏に「X9」と名付けた理由を聞きつつ、ThinkPad X9の“らしくない”所について聞いてみることにした(一部、文脈を崩さない範囲で体裁を整えている)。
筆者 ThinkPad X9の「X9」には、どういう意味があるのでしょうか。また、私が執筆したThinkPad X9シリーズのリリース記事に対して、昔からThinkPadを使っている読者から「これがThinkPadなのか?」という疑問の声が複数寄せられました。これ(ThinkPad X9シリーズ)は、ThinkPadの未来の姿だと思っていいのでしょうか。
バトラー氏 もちろん、ThinkPad X9は“本当の”ThinkPadです。セキュリティ、耐久性、イノベーション、信頼性、そしてキーボード(の品質)――ThinkPadとして求められる(品質)要件を全て満たしています。ただ、1つ抜けている所(TrackPoint)がありますが。
以前も言った通り、ThinkPadのフラグシップといえば「ThinkPad X1」で、他にもTrackPointを備えるThinkPadはいろいろとあります。(TrackPointがなくなるという)心配は無用です。
(Lenovoは)約30%のシェアを持っています(筆者注:これはビジネス向けノートPCの出荷台数シェアのことを言っていると思われる)。見方を変えれば、約3分の2は私たちのThinkPadを購入していないということです。私たちはAura EditionのThinkPadをリリースする道のりにおいて「なぜThinkPadが選ばれないのか?」「何がThinkPadに欠けているのか?」ということをずっと考えてきました。
(他の記者が使っているMacBook Proを借りつつ)これを見ると、残念ながらThinkPadには大きなタッチパッドがありません。TrackPointを備えるモデルを含めて、複数のThinkPadを交えて(ユーザー)テストをしてみたところ、たった1つの大きなタッチパッドが新たなユーザーをThinkPadにもたらしうることが分かりました。
ThinkPadの要素を備えるこのモデルに、X1と対をなす、新たなフラグシップとして「X9」と名付けることにしました。X1はフラグシップの“始まり”として名付けました。そしてX9はちょっと間を空けていますが、これからは「X1」「X2」といった具合に、継続した、個別のフラグシップモデルを出していきたいという意図もあります。
最後に、TrackPointのことは心配無用です。
ThinkPad X9シリーズにはTrackPointがない。その代わり、巨大なタッチパッドが付いている。これは、従来ThinkPadを敬遠してきたユーザーを呼び込むための取り組みのようだ。なお、キーのタイプ感はしっかりとThinkPad品質で、キー手前の傾斜によって指への収まりも良くなっているThinkPad X9シリーズは、ThinkPadを知らないビジネス向けノートPCユーザーにThinkPadを訴求するための“切り札”のようだ。言い方は難しいが、ThinkPadの核心的な価値にフォーカスしつつ、ThinkPadが敬遠される理由を取り除いたフラグシップモデルということなのだろう。
ThinkPadの仕様変更で物議を醸したものといえばIBM時代のタッチパッド搭載、そしてLenovoに移管されてからのキーボードの6列化が挙げられる。実はどちらもThinkPadを敬遠するユーザーを新たに取り込むための取り組みだった。当初はどちらも拒否的反応が見られたものの、結局は定着している。
今回のThinkPad X9シリーズが一定の成功を収めると、TrackPointを搭載しないThinkPadのラインアップが拡大される可能性もある。ただ、LenovoでもTrackPointはThinkPadの“強い”アイデンティティーとして認識しており、バトラー氏も「TrackPointのことなら大丈夫(なくならない)」と繰り返していた。
筆者は“変わらず、変わっていく”ことがThinkPadブランドの強みだと考えている。TrackPointは今後も残り続けるのか――個人的にはいつまでも残ってほしいが、数年後になくなっても「しょうがないなぁ」と受け入れてしまいそうな自分がいて怖かったりする。果たして、どうなるだろうか。
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