スマホ内の写真や動画、さまざまな書類といった大切なデータのバックアップは、現代において重要な課題だ。スマホに組み込まれている純正のバックアップ機能(iCloudやGoogle ドライブ)は細かな知識がなくとも機能する一方、これらの機能は無料では保存できる容量の制約が大きく、有料プランで契約するとコストの面で不満に感じる人も多い。
そうしたコストを、DXP4800 Plusはどの程度まで吸収してくれるだろうか?
先に結論をいうと、DXP4800 Plusはクラウドストレージの完全な代替となるのは不可能だ。この製品に限ったことではないが、iPhoneの場合はデータのバックアップを行うUGREEN NASアプリを開きっぱなしにしない(バックグラウンドにすると)とデータのバックアップを行えない。これはiOSの制約なので仕方がない。一方、Android端末の場合、設定すれば自宅で使っている間に知らず知らずに(自動的に)バックアップ可能だ。
特にiPhoneで使う場合は運用の工夫は少し必要だが、写真や動画のバックアップに使うのは結構便利だ。USBメモリ用バックアップアプリなどの多くが、iPhone独自の付加情報(Live Photoや被写界深度など)を失ってしまうが、UGREEN NASアプリは付加情報をそぎ落とすことなくバックアップしてくれる。
ただし、連絡先や導入しているアプリ、アプリの設定などはバックアップできないため、標準のクラウドストレージとの並行利用は必須だ。とはいえ、写真と動画のバックアップという面では、期待以上のものだと思う。
スマートフォンで撮った写真のバックアップは、UGREEN NASアプリから行える。ただし、iPhone(iOS)の場合バックグラウンドでのバックアップに一定の制約があるため、きちんとバックアップを取るにはアプリをフォアグラウンドで起動し続けることをお勧めするなお、UGREEN NASでバックアップされた写真や動画は、アプリ内の「Photo」を起動すればそのまま閲覧可能だ。AI分析処理による検索機能も利用できる。
このAI分析や検索機能はUDXP4800 Plus内部で処理が行われるが、想像よりも実用的だ。今後AIモデルが洗練されていけば、さらに使いやすくなるだろう。もちろん、自分自身で手持ちの写真を学習させて、類似する写真を分類させるといったこともできる。
本機のデータ同期は、PCとの間であれば柔軟性はより高まる。PCとNAS間でデータを同期する「Sync & Backup」アプリをインストールしておけば、フォルダーの同期も可能だ。Macユーザーであれば、「Time Machine」のサーバとして動作することは大きなアドバンテージになるだろう。
大容量ファイルを好きなだけ置いておける利点は大きく、メインの写真/動画ストレージとしては十分活用できる。
DXP4800 Plusのハードウェアは、まだ経験の浅いメーカーとは思えないほど完成度が高い。
シンプルなアルミ押し出し材で作られた丈夫なキューブ型ケースは、背面にサイズいっぱいの大型ファンが装着されている。ファンを大きくする代わりに回転数を低くすることで、動作音を小さく抑えられている。
SATAベイは2.5インチと3.5インチのストレージに対応するが、特に3.5インチHDDの場合は工具なしでトレイに着脱できる。ケースが丈夫なためHDDの共振も少なく、動作していることを意識することはほとんどない(もちろんHDDの動作音がうるさいものの場合は致し方ないが)。
SSD用のM.2スロット(Type2280)とメモリスロットは底面にある。先述の通り、M.2スロットに装着したSSDはストレージとしてはもちろん、HDDキャッシュとして割り当てることも可能だ。運用の安全性を重視する場合、キャッシュとして使うなら「リード(読み出し)キャッシュ」として設定するとよいだろう。よほどのことをしなければ、高いキャッシュヒット率を期待できる。
ちなみに、筆者の環境ではキャッシュサイズは最大でも1TB程度で、ヒット率は80%近い。言い換えれば、512GBのSSDを2基装着してRAID 1で運用すれば、十分に高速化の恩恵を受けることが可能だ。
電源端子があることからも分かる通り、本機の電源アダプターは本体外にある。ただ、NASの故障原因において電源ユニットは意外と上位に来るので、電源アダプターの供給が続くという前提に立つと「こっちの方がトラブルに対応しやすくていいのでは?」と思ってしまう。 なお、本機はUPS(無停電電源装置)との組み合わせにも対応している。
初物の割に、DXP4800 Plusはハードウェアの完成度は高い。OSに関してもオープンソースの成果を生かしつつも独自のUIで差別化を図ろうとしている。今後は、この部分のさらなるブラッシュアップを期待したい。
さて、DXP4800 Plusは今選ぶべきNASなのだろうか。「4ベイの高性能NASキット」というと、老舗メーカーでもあるSynologyやQNAPが強力な存在感を放っているし、TerraMasterやASUSTORといった比較的新しいブランドもコストパフォーマンスに優れるモデルを投入するなど、選択肢は多い。
そんな中、DXP4800 Plusはどのようなポジションにあるのだろうか。定価ベースで見てみると、Synologyの上位モデル「DiskStation DS923+」やQNAPの「TS-464」と同水準だ。しかし、本機の場合、クラウドファンディング経由での限定価格として大幅割引(最大40%オフ程度)を打ち出しており、それを考慮すればコスト面のハードルは多少下がる。
しかし、DXP4800 Plusのスペックは、ライバルを圧倒する。Synology DS923+の場合、CPUはAMD製のデュアルコアCPUで、メモリ4GBと本機に比べると控えめだ。ネットワークも標準では1000BASE-T×2のみで、10GbEを使いたい場合は別売の拡張カードを追加する必要がある。
QNAP TS-464はIntelのCeleron N5105(4コア)や2.5GBASE-T×2ポートなど、スペック的には堅実だが、やはり10GbEを使いたいなら拡張カードが必要だ。TS-464ならHDMI出力を備えているが、Synologyにはない。意外かもしれないが、SDメモリーカードスロットを備えるNASも少ない。
これらを総合すると、DXP4800 Plusの“全部盛り”度は高い。特に10GBASE-Tポートの搭載は、将来のマルチギガネットワーク化を鑑みると長く使う上で心強い。
一方でソフトウェア面に目を向けると、QNAPやSynologyといった老舗メーカーの強みが光るのも事実だ。Synologyの「DSM」は長年の蓄積による完成度の高さと、100を超える膨大な公式パッケージ群が魅力だ。QNAPの「QuTS hero」「QTS」も幅広いアプリや高度なカスタマイズ性で知られる。
もっとも、UGOS PROも基本機能は押さえられており、Dockerの活用で個人的には不満はない。
最後にサポート体制だが、正式発売に先立ち十分なテストを重ねている様子で、少なくとも筆者の試用範囲ではアプリの安定性に大きな問題は感じなかった。なお、日本市場向けの販売は、PC周辺機器において長年の実績のあるフォーカルポイントが行っている。
DXP4800 Plusは圧倒的なハード性能と充実したインタフェース、静音やアイドル時の低消費電力、「速さ」と「使いやすさ」を兼ね備えた次世代NASである。少なくともクラウドファンディングでの価格は明らかにバーゲン価格だ。投資に見合う成果は得られる。
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