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まるで“ファンミーティング”な熱気 NVIDIA基調講演でフアンCEOは何を語ったのか?COMPUTEX TAIPEI 2025(2/3 ページ)

» 2025年05月20日 11時00分 公開
[井上翔ITmedia]

ジェンスン・フアンCEOが語ったこと

 このように、会場外での盛り上がりが想像以上だったジェンスン・フアンCEOの基調講演だが、コンシューマー(個人)になじみ深い内容としては、5月20日発売予定の「GeForce RTX 5060」搭載グラフィックスカード(ASUSTeK Computer製)と、「GeForce RTX 5060 Laptop GPU」を搭載するノートPC(MSI製)を手に取り紹介したシーンのみ。大半はエンタープライズ(研究機関を含む法人向け)製品の内容で、とりわけ台湾を拠点とするパートナー企業への謝意が盛り込まれていた。

ジェンスン・フアンCEO いつもの「皮ジャン」姿で登壇したジェンスン・フアンCEO。両親も発表会場に来ていたという
コンシューマー向け コンシューマー向けの内容は、発売が近いGeForce RTX 5060/5060 Laptop GPUに関する内容のみだった。「10ピクセルのうち1ピクセルだけレンダリングすれば、残りの(最大)9ピクセルをAIで描ける」と、NVIDIA製GPUの優れたAI処理性能によってゲームグラフィックスの超解像処理品質が向上したことをアピールした

台湾のパートナー企業への謝意

 NVIDIAはいわゆる「ファブレスメーカー」であり、自社で設計した半導体などの生産は受託生産を専門とする「ファウンドリー」と呼ばれる企業(工場)に委ねている。最近のGPUチップであればTSMC、グラフィックスカード(Founders Edition:日本未発売)であればFoxconnといずれも台湾企業が生産を担う。

 それだけでなく、グラフィックスカードを始めとする同社のGPU/SoCを搭載する製品を設計/製造/販売する企業の多くも台湾に所在する。台湾との“付き合い”は、30年を超えるという。フアンCEOはパートナーである台湾企業に謝意を示すと共に、これからもコンピュータエコシステムの中心を担う企業として共に新しい市場を開拓し、成長したいと語る。

台湾企業 フアンCEOの出身地である台湾は、NVIDIAにとって欠かせないパートナー企業が多数存在する

CUDAエコシステムの優位性

 現在のNVIDIAがGPUにおいて強いシェアを持つようになったのは、「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」と呼ばれる並列演算技術を導入したことが一因だ。2D/3Dグラフィックスに関する演算や描画だけでなく、汎用(はんよう)的な演算にも使おうという発想はとても画期的だった。

 CUDAは2006年に登場した「GeForce 8シリーズ」で初導入されて以来、GPUアーキテクチャと歩調を合わせて進化を続けてきた。そのエコシステムは2019年に登場したソフトウェアライブラリー「CUDA-X」によってさらに広がりを見せている。

 フアンCEOはCUDAやCUDA-Xがもたらす強みを解説しつつ、さまざまな業界において応用が進み、社会のいろいろな側面に浸透していることをアピールした。

CUDA GPUに「CUDA」という並列演算技術を導入したこと、そのCUDAを生かすためのソフトウェアライブラリー「CUDA-X」を整備したことで、GPUの応用範囲が広がった
基地局にも応用 GPUを多数搭載する「GPUサーバ」を使って携帯電話(モバイルネットワーク)の基地局の機能を構築するということは、ひと昔前までは考えられなかった。日本では、この取り組みをソフトバンク/京セラ/富士通とそれぞれパートナーシップを組んで進めている

ハイブリッド(量子+古典的)コンピューティングの取り組み

 昨今、従来のコンピュータ(CPUやGPU)では時間を要する演算を、量子力学の原理を使って高速に行う「量子コンピューティング」という概念が提唱されている。

 この世界において、NVIDIAも「CUDA-Q」という取り組みを進めている(Qは量子コンピューティングを意味する)。これは量子コンピューティングに特化した演算器である「QPU(Quantum Processing Unit)」では排除しきれない演算の“誤り”を、CUDA対応GPUを使って訂正して精度を高めようという取り組みで、多くの企業や団体と協力して研究が進められている。

QPUにGPU 「CUDA-Q」は、QPUに「NVIDIA GB200シリーズ」のようなCUDA対応GPUを連結することでQPUで発生しうる演算エラーを訂正し、量子コンピューティングのメリットを押し広げようという取り組みだ。量子コンピューティング(QPU)と、古典的なコンピューティング(GPUやGPU)を協調させるため「ハイブリッドコンピューティング」とも呼ばれる

「エージェントAI」の次は「物理的なAI」

 NVIDIAが、GPUを使ったAI演算について取り組み始めたのは約12年前だ。ここ数年はAIのパフォーマンスが向上し、フアンCEOの言葉を借りれば「ほぼ全てのあらゆるものを、あらゆるものに変換できるように」なり、「普遍的な関数近似器や翻訳機」を手に入れた。

 しかし、現状の生成AIは大量の学習データを元に作られたものであり、「知性」と呼ぶにはまだ足りない部分もある。それは主に「理由付け」だったり、「未知の問題を解決する能力」だったり、「問題を段階的に切り分けていく能力」だったりする。

 その観点でNVIDIAが注目しているのが「エージェントAI(Argentic AI)」だ。エージェントAIは現状の生成AIでは足りない「事象を理解し、思考(検討)し、行動する」というプロセスを踏むことが特徴……なのだが、これを実現するには現状の(1つのプロンプトに対して1つの出力を行う)ワンショットAIの100〜1000倍の演算能力が求められるという。

 フアンCEOは、「デジタル時代のロボット」たるエージェントAIが今後数年間のAIにおける重要な課題になるだろうとする。

エージェントAI 現在、生成AIは「エージェントAI」を志向するような研究が進められている。しかし、フアンCEOの言う通り人間の「知性」を模すとなるとワンショットで済んでいる現状の生成AIと比べても膨大な演算が必要となる

 フアンCEOは、エージェントAIの次に「物理的なAI(Physical AI)」という“波”が来ると語る。物理的というとちょっと分かりづらいが、これは「現実世界のことを理解するAI」のことだという。

 現実世界で発生する事象の結果には「慣性の法則」「摩擦(係数)」など、さまざまな物理的法則が絡む。これを推論できるAIが生まれれば、ロボティクスに対して大きな革命をもたらすことができると語る。

物理的AI エージェントAIの次に来るのは「物理的なAI」だと語るフアンCEO。物理法則の絡む事象についての推論を行えるようにする

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