未来を創る「子どもとプログラミング教育」

AI時代の教育革新とは――Googleと日本マイクロソフトの公演から見えた「Next GIGA」の胎動EDIX 東京 2025(1/2 ページ)

» 2025年06月17日 16時00分 公開
[石井徹ITmedia]

 4月23日から25日まで開催された教育ITの総合見本市「EDIX 東京 2025」では、さまざまな基調講演が行われた。中でも4月23日にはGoogleと日本マイクロソフトという二大プラットフォーマーが相次いで講演を行った。

 文部科学省が掲げる「GIGAスクール構想」の第2期(Next GIGA/GIGA 2.0)が始まる中で、両社共に生成AIにフォーカスを当てて自社の教育市場向けソリューションの強みをアピールしていた。

Google:世界が注目する「GIGAスクール構想」はこれから重要に

 Googleの基調講演では、Googleで教育部門のトップを務めるケビン・ケルス氏(Google for Education マネージングディレクター)が最初に登壇した。同氏は「日本の野心的なGIGAスクール構想は、世界が大きな関心を寄せている。(日本の)教育の状況を劇的に変えている」と、日本の教育デジタル化への取り組みを高く評価した。

 ケルス氏によると、「Google Workspace for Educationが世界で1億7000万人以上、Chromebookは5000万人以上が利用している」という。その上で同氏は生成AIと教育の関係について「今の学生は、生成AIを意識した教育を受けているわけではありません。しかしこれから先、彼らの職業生活全体がさまざまな形でAIの影響を受けることになります」と指摘する。

 世界経済フォーラムが公表した「未来の仕事レポート2023」にある予測では、2027年までに約23%の仕事が変化し、6900万件の新たな仕事が創出される一方で、8300万件の仕事が失われるという。ケルス氏はこの件に触れ、「環境の変化に学生たちを準備させるには、イノベーションを学び、コラボレーションツールを使いこなせるようになることが重要で、だからこそ(日本の)GIGAスクール構想は重要なのです」と語った。

ケビン氏 Googleの基調講演で語るケビン・ケルス氏。Google for Educationの責任者(マネージングディレクター)を務めている

生成AI「Gemini」を教育現場に本格展開

 ケルス氏は、Googleの生成AI「Gemini(ジェミニ)」の教育利用に関する現状を語った。

 Geminiモデルが使われているGoogle製品の月間ユーザーは、既に世界で20億人超となっている。当初、Geminiの利用年齢は「18歳以上」とされていたが、現在は「13歳以上」にまで拡大されている。規約上は、13歳の誕生日を迎えた中学1年生から使える計算となる。今後、年齢を「13歳未満」に引き下げることも検討しているという。

 ケルス氏は「教育者にとって、Geminiは時間削減につながります。よりパーソナルな学習を実現できるので、児童/生徒ひとりひとりの心をつかむこともできます。(児童/生徒が)自信をもって学ぶ助けになるでしょう」と力説する。

 Geminiの活用例として、ケルス氏は信州大学付属松本中学校の富永渉平先教諭の事例を紹介した。富永教諭は「Googleフォーム」で収集した授業に関する生徒のコメントをGeminiに入力して生徒の傾向を分析し、その結果から分かった課題を踏まえてGeminiに新しい授業計画を提案してもらったという。

 スライドで示された具体例では「あなたは中学校の教師です。中学生に向けてセキツイ動物の進化の単元に関する授業を計画しています」という状況に対し、Geminiが「進化すごろく」や「化石ハンター」といったアクティビティのアイデアを、具体的な実施方法まで含めて提案していた

教育分野での活用 信州大学付属松本中学校の富永渉平教諭のGemini活用例

 Geminiは教育で使うには「ハルシネーション」が気になる――そのような不安に対して、ケルス氏はGoogleには「NotebookLM」という生成AIもあることを紹介した。NotebookLMは学習の範囲を特定の情報源に絞り込むことで、ハルシネーションのリスクを軽減できる。これにより、指定した資料の内容に基づいて回答を得ることが可能だ。

Next GIGAではChromebookのシェアが6割弱に

 続けて、グーグル(Googleの日本法人)の杉浦剛氏(Google for Education 営業統括本部長)が登壇し、日本におけるNext GIGAに向けたGoogleの取り組みを紹介した。

 日本では、独自のソリューションとして2024年に「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を導入した。杉浦氏が「3種の神器」と表現するこのパッケージでは、学習用端末(Chromebook)、コミュニケーションツール兼アプリスイート(Google Workspace for Education)と、MDM管理ライセンス(Google GIGA License)を一括で提供する。Google GIGA Licenseも、日本独自のサービスだ。

 この成果もあってか、杉浦氏が言及したMM総研の調査によると、Next GIGAでは57%の自治体がChromebookを導入する意向を示しており、第1期の42%から大幅に増加しているという。

シェア GIGAスクール構想の第1期ではChromebook(ChromeOS)が42%のシェア、残りをWindows PCとiPadで分け合うような構図だったが、Next GIGAでは6割弱がChromebookになる見通しが示されている。ただし、どちらもMM総研の調査結果ではあるものの、アンケートの母数が異なることには注意したい

 Chromebookの紹介パートでは、実演を交えつつChromebookの耐久性向上についても紹介された。「ディスプレイパネルが割れる」「キーキャップが外れる」「バッテリーの持ち(駆動時間)が悪くなる」という、特に多かった3つの課題に対し、製造メーカーと4年かけて解決策に取り組んできたと杉浦氏は語る。

 ディスプレイパネルの破損対策としては、画面保護にCorning製の「Gorilla Glass 3」を広く採用している。またキーキャップが外れる問題については、キーキャップ自体に物理的な対策を施し、そもそも外れにくい設計とした。そしてバッテリーの駆動時間への対策としてはアダプティブ充電機能の実装を行ったという。

 実演では、鉛筆を挟んだChromebookを参加者に力いっぱい閉じてもらうという衝撃的なデモも行われ、会場を沸かせた。思っているChromebookよりも、3倍強くなっている――杉浦氏は胸を張る。

壇上 聴講者を壇上に招いて、実際に鉛筆を挟んだ状態で閉じてもらうデモンストレーションも行われた

NotebookLMで「ポッドキャスト風音声」を作るデモも

 Googleの公演では、NotebookLMで「音声概要」を作るデモも行われた。本機能は公演当時は英語以外の言語に対応しておらずテスト版で披露していたが、4月30日に日本語を含む50以上の言語でも利用できるようになった。

 講演内容を入力してから「20分くらいの要約で音声にまとめる」ように指示をすると、男女の対話形式で学校のICTセキュリティについて自然な会話をする「ポッドキャスト風の音声」が再生された。人間がラジオで話すように間の取り方や相づちを含む、高度な音声合成技術が披露された。

NotebookLM NotebookLMを使って日本語のポッドキャストを作成するデモンストレーションも披露された

 杉浦氏は、教室でのChromebookの活用を支援する新機能として「先生が指定したWebサイト/アプリだけに開けるようにする仕組み」や、就寝時間を設定して指定時間内はログインできなくする「ベッドタイム」機能なども紹介した。

 講演の締めくくりに杉浦氏は「(Google Workspace for EducationやChromeOSには)今回紹介しきれなかった多くのアップデートがたくさんあります。我々は、これからのAI活用を皆さんに紹介しながら、うまくテクノロジーで教育をサポートしていきたいと思っております」と述べ、Googleの教育へのコミットメントを強調した。

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