先述の通り、本製品は50TOPSのピーク処理能力を備えるNPUコアを統合したRyzen AI 7 350が搭載している。この強力なNPUコアによって、さまざまなAI(人工知能)を効率良くローカル処理できることが特徴だ。
例えば、Windows 11の「Windows Studio Effects」では、カメラ撮影時に「自動フレーミング」「アイコンタクト補正」「背景ぼかし」といったエフェクト処理をCPUやGPUに負荷をかけずに実行できる。このような処理はCPUやGPUでも行えるが、電力効率面ではNPUの方が有利だ。
カメラのエフェクトという面では、HP独自アプリ「Poly Camera Pro」も便利だ。Windows Studio Effectsではカバーしていないエフェクトが用意されている他、色味や明るさなど映像の細かい調整も行える。
さらに、AI Companion(β版)では、自然文によるPC操作やドキュメントの分析、タスク整理といった支援機能を提供する。現時点では対応するアプリや機能に制限があるものの、日常業務の一部をAIで補助できる可能性を感じさせるには十分だ。
将来的な機能拡充にも期待でき、ローカルAIの実用的な“入口”としては十分に魅力的といえる。
ここからは、OmniBook X Flip 14-fk(パフォーマンスモデル)の性能をベンチマークテストを通してチェックしていこう。
なお、今回は特記のない限り全テストを「最適なパフォーマンス」の電源設定で行っている。
まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスをチェックする「CINEBENCH R23」を実行してみた。結果は以下の通りだ。
マルチコアとシングルコア共に、モバイルノートPC向けCPU(APU/SoC)としては優秀な結果を記録した。マルチコア性能は、日常的な作業はもちろん、やや重めの処理やマルチタスク作業にも快適に対応できる水準だ。
シングルコアのスコアも2000に迫っており、アプリの立ち上げや操作の反応速度にも安心感がある。
より新しく、負荷の重い「CINEBENCH 2024」では、以下のような結果となった。
突出したスコアではないものの、やはりモバイルノートPC向けCPUと考えると良好な結果だ。普段使いからビジネス用途まで不満なくカバーできるだけの余裕は感じられる。
続けて、PCの総合ベンチマークアプリ「PCMark 10」の結果を見てみよう。
PCMark 10ではシステム全体の使い勝手を測るため、PCの基本動作からビジネス系、軽いクリエイティブ用途まで幅広いタスクをテストする。いずれのスコアも高い実用性を発揮できるレベルで、本製品の実力が見て取れる。
特に基本操作やOfficeアプリの動作においては、ハイエンドクラスのPCにも引けを取らないスコアを残している。
PCMark 10には、実際のMicrosoft Officeアプリ(とMicrosoft Edge)を使ったテストシナリオ「Applications」も用意されている。このシナリオでもテストを実施した結果、スコアは以下の通りとなった。
いずれのスコアも、モバイルノートPC向けCPUを搭載する製品としては高い。中でもExcelは2万ポイント超で非常に高く、関数やデータ量の多い作業でも快適にこなせそうだ。
WordやPowerPoint、Edgeなども1万ポイント前後をマークしており、日常業務でストレスを感じる場面は少ないだろう。
3Dグラフィックスの性能を測る定番ベンチマークソフト「3DMark」の主要テストにおける総合スコアは以下の通りとなった。
さすがに外部GPUを備えるゲーミングノートPCと比べるとさすがにスコアは低いが、CPUの内蔵GPUと考えるとスコアは高めだ。Radeon 860Mを搭載する他のノートPCと比べてもスコアの乖離(かいり)はほとんどなく、標準的なスコアとなっている。
Fire Strikeではミドルクラスに近いスコアを記録しており、DirectX 11ベースの軽量な3Dタイトルであればある程度快適にプレイできそうだ。一方でTime SpyやSteel Nomad Lightではスコアがやや低く、最新の3Dゲームを遊ぶには設定を調整する必要がありそうだ。
あくまでも、動画再生や2D主体のアプリの利用が主用途となる。
実際のゲームベースのベンチマークテストを実行してみよう。
まず、中程度の負荷となる「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」で、フルHD解像度/フルスクリーン設定で4つの品質設定でスコアを計測した。結果は以下の通りだ。
標準〜高品質では「やや快適」との評価で、最高品質ではスコアが3000台まで落ち込み「設定変更を推奨」という評価となった。
プレイ自体は可能だが、グラフィックス設定はやや抑えた方がよさそうだ。
より高負荷の「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチマーク)」ではどうだろうか。フルHD解像度/フルスクリーン設定で3つの品質でスコアを測った結果は以下の通りだ。
軽量および標準品質では「普通」と評価されており、設定を絞り込めばプレイは一応可能だ。ただし快適とは言いがたく、場面によっては処理落ちやフレームレート低下が発生する可能性もある。
高品質では「重い」と判定されており、グラフィックス負荷の高い環境でのプレイは現実的ではない。FF15のような高負荷タイトルは、この構成にとっては荷が重いかと思う。
PCMark 10に内包された「Battery Profile」テストから、Modern Officeシナリオを選択し、ディスプレイの輝度を50%とした上で満充電(100%)から残量5%(強制休止状態)に入るまでの時間を計測したところ、10時間7分という結果となった。
このテストでは、バッテリー駆動時間を安定して比較できるよう、ULが提供する専用の電源プロファイルを適用して実施している。このプロファイルは「省電力機能の無効化」に加え、「スリープやディスプレイオフの防止」「継続的なアクティビティの維持」といった設定が含まれており、常に負荷がかかった状態での測定となる。そのため、実際の利用環境よりもバッテリー消費が速くなる傾向がある点には留意しておきたい。
このように厳しめの設定にしたにも関わらず、10時間を超えるバッテリー駆動ができたということは、外出先でも安心して作業できるだろう。
HP OmniBook X Flip 14-fk(パフォーマンスモデル)は、基本性能/機動性/拡張性のバランスが取れた1台に仕上がっている。軽量ボディーに14型有機ELディスプレイを搭載し、ペン入力やタッチ操作にも対応するなど、ハードウェア面での完成度も高い。
テストの結果からも分かる通り、実際のパフォーマンスも安定している。業務用途から軽度なクリエイティブ作業、動画視聴といった日常利用まで、幅広い用途に応えられるポテンシャルを持つ。加えて、バッテリー駆動時間も10時間超と長く、外出先での実用性も確保されている。
惜しい点があるとすれば、ペンが付属していないことや、ゲーミング性能に限界があることが挙げられる。もっとも、「ペンはいらない」「モバイルノートPCでゲームはしない」という人には大きな問題ではないだろう。
性能/携帯性/画面の美しさ/拡張性といったモバイルノートPCに求められる要素をバランスよく備えた本製品は、日常的に持ち歩くノートPCとして非常に実用的な選択肢である。特に、2in1タイプならではの使い方に魅力を感じる人にとって、有力な候補となるだろう。
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