AOKZOE A1Xの実力を測るべく、いくつかのベンチマークテストと、実際のゲームプレイでパフォーマンスを確認してみた。テストは、Windowsの電源モードを「最適なパフォーマンス」とした上で、OneXConsoleのTDPを「30W」に統一して実施している。
評価機に搭載されているRyzen AI 9 HX 370のCPUコアは「Zen 5+Zen 5c」のハイブリッド構成で、合計で12基24スレッドを備えている。GPUコアは、内蔵GPUとしてはパワフルな部類に入る「Radeon 890M」を備えている。演算ユニット(CU)は16基で、パフォーマンス的には独立GPUには及ばないが、設定次第でAAAタイトルも十分にプレイ可能な水準のグラフィックス性能を有する。
まず、3Dレンダリングを通してCPU性能を計測できる「CINEBENCH R23」と「CINEBENCH 2024」でテストを行った。
CINEBENCH R23では、マルチコアが1万7808ポイント、シングルコアが1976ポイントと、ノート向けCPUとしてはかなり高いスコアを記録した。CINEBENCH 2024も同様で、マルチコアが976ポイント、シングルコアが112ポイントと、ノート向けCPUとしては優秀なスコアとなっている。
特にシングルスレッド性能は「Apple Mシリーズ」に匹敵するレベルに達しており、Zen 5世代のポテンシャルの高さがうかがえる。
続けて、内蔵GPUのベンチマークとして「3DMark」の各種テストを実施した。
「Night Raid」のような軽量テストではスコア3万点超と非常に高く、2D系ゲームやインディー作品では“過剰”ともいえるほどの余裕のあるパフォーマンスを見せている。このクラスのタイトルであれば、TDPを抑えてプレイすることでバッテリー駆動時間を延ばすといった使い方も現実的だ。
「Fire Strike」や「Time Spy」といった定番のDirectX 11/12ベンチでも、内蔵GPUとしてはかなり良好なスコアを記録した。AAA級タイトルでも「中画質」設定程度なら十分快適に遊べる。最新GPUを想定した描画負荷の「Steel Nomad Light」でこそやや控えめなスコアに留まったが、内蔵GPUとしては健闘している。
Ryzen AI 9 HX 370は、ポータブルゲーミングPCでありながら現行の多くの3Dゲームに対応可能な水準に達しており、ポータブルゲーミングPCとしてはトップクラスの性能を発揮する。
せっかくなので、カプコンの「モンハンワイルズベンチマーク」でもテストを行ってみた。
スコアは、グラフィック設定が「最低」だと平均で65.70fps、「低」だと平均64.37fpsとなった。評価は「問題なくプレイできます」だ。さすがに、描画品質は外部GPUを搭載するデスクトップ環境と比べて控えめだが、8型という画面サイズと、プレイスタイルを考慮すれば、十分に実用的なプレイを期待できるクオリティだ。
一方、「中」設定では平均49.12fps、「高」では平均39.78fpsとなり、動作の滑らかさにやや影響が出る。ただし、軽めのクエストや採集、探索といったプレイスタイルであれば十分対応できる。
場所を選ばず”一狩り”行けるのはポータブルゲーミングPCならではの魅力だ。
高負荷なオープンワールド作品「Cyberpunk 2077」の設定内ベンチマークテストでは、「低」設定で平均72.86fps、「高」設定では平均51.24fpsという結果だった。グラフィック品質を重視する「高」設定でも、ある程度は安定したプレイが可能だ。
もちろん、実際のプレイではエリアや状況によって多少のフレーム落ちが生じるある可能性はあるが、滑らかさを重視するなら低設定、描画品質とのバランスを取りたいなら中〜高設定といった調整で、快適なゲーム体験が得られるはずだ。
フロム・ソフトウェアの「アーマードコア VI」にはゲーム内にベンチマーク機能がないため、「CapFrameX」を用いてフレームレートを計測した。
グラフィック設定「低」では平均60.8fpsと非常に高いフレームレートを安定して維持できた。高速戦闘の多い本作においても、操作感に違和感はない。
「中」設定では平均47fps、「高」では平均41.0fpsと、ややフレームレートは落ち込むが、描画負荷を調整すれば十分にプレイ可能な水準だ。さすがに「最高」設定では平均31.5fpsと厳しくなるが、グラフィック設定を調整すれば、快適な操作感を維持できる。
見た目の派手さに反して、本作の描画負荷は比較的軽めだ。本製品のようなポータブルゲーミングPCでも快適なプレイ環境を確保しやすい。
アクション性の高いゲームをポータブル環境で楽しみたい人にとっては、心強いパフォーマンスを備えている。
実ゲームでの検証結果から、AOKZOE A1XのRadeon 890Mは、設定を適切に調整すれば多くのAAAタイトルを快適にプレイできるだけの高い実力を持っていることが分かった。
ポータブルゲーミングPCとしてはトップクラスのグラフィックス性能を発揮し、さまざまなゲームジャンルに対応できる汎用(はんよう)性の高さが魅力だ。
ポータブルマシンということで、バッテリーの駆動時間が気になるところだ。そこで、PCMark 10内のバッテリーベンチマークテストも実施した。
今回は「Gaming」シナリオを選択し、バッテリー駆動時における実ゲームプレイに近い条件での持続時間を測定している。その結果、満充電から5%(強制休止)になるまでに1時間47分の駆動が可能という結果となった。
内蔵GPUでのAAA級プレイを想定すれば妥当な結果ではある。ゲームの設定の見直しやTDP制御を併用することで、長時間のバッテリー動作を確保できそうだ。
なお、AOKZOE A1XはUSB PDによる100W急速充電に対応しており、対応充電器を用いればバッテリー切れ時でも素早く再充電できる。持ち運び時や旅行先など、限られた充電時間でも安心して使用できる点は大きなメリットだ。
搭載されているストレージはPCI Express 4.0 x4接続の1TB SSDだ。「CrystalDiskMark」の計測結果では連続読み出し最大毎秒約7000MB、連続書き込み最大毎秒約6000MBと、非常に高速だった。ランダムアクセス性能も高く、ゲームのインストールや起動、ファイル転送といった日常的な操作でも待たされる感覚はない。
容量的にも十分な余裕があり、複数の大型ゲームを同時にインストールしても運用可能。ポータブルゲーミングPCにおいて、ストレージ速度は快適性に直結する要素のひとつだが、本機はその点でも満足度が高い仕上がりになっている。
AOKZOE A1Xは、8型という大型ディスプレイと最新APUであるRyzen AI 9 HX 370を組み合わせることで、ポータブルゲーミングPCとして高い完成度を実現している。画面サイズの恩恵でゲームの視認性が高く、キックスタンドや豊富なインターフェース、専用アプリによる柔軟な設定項目など、使い勝手の面でも工夫が光る。
ポータブルゲーミングPCとしてはやや大柄な部類に入るものの、その分だけ冷却機構やバッテリー容量の“余裕”に生まれ、AAAタイトルを長時間プレイする上でも安定した動作を期待できる。ファン制御やTDP設定、バイパス電源モードといった機能は、モバイル時/据え置き時それぞれにおいて、最適な運用を実現するための支援となってくれる。
価格帯こそ、20万円前後と決して安価ではない。しかし、現状のポータブルゲーミングPC市場において、性能と操作性のバランスがここまで取れた製品は多くない。持ち運べるゲーミングPCに高性能を求めたいユーザーにとって、有力な選択肢となる1台だ。
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