西川善司のパソコン遍歴――ゲーム三昧の青春時代は“おじさん”になった今も続く私のPC遍歴30年(2/5 ページ)

» 2025年09月04日 19時45分 公開
[西川善司ITmedia]
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西川少年、「パソコン」と出会う

 小6になった頃、日本からイギリスにやってきたばかりのクラスメイトがパソコンを買ってもらった――そんな話を聞きつけた。当時、PCがどんなものかは知りもしなかったのだが、その友人から「プログラムを覚えれば、コンピュータゲームを自分で作れる」という話をされて、自分もPCが欲しくなってしまった

 今思えば、その教育方針はどうなのかとも思うのだが、筆者は親と「次の通知表が優秀ならPCを買う」みたいな約束を締結し、それをがんばって達成した。その翌年の正月に日本へと一時帰国をしたときに買ってもらえることになったのだが、当時はシャープの上級機「MZ-2000」が欲しかったのにも関わらず、買い与えられたのは同社の入門PCだった「MZ-721」であった。

 当時は画面に線や丸を描くのに憧れていたこともあり、MZ-721のBASICを起動後、最初に「LINE」命令や「CIRCLE」命令を打ち込んでみたのだが、「DEVICE OFFLINE」のエラーが出てしまった。この体験は、今でも筆者のトラウマとして鮮明に残っている。

 これはどういうことかというと、実はMZ-700シリーズには標準でグラフィックス機能はなかったものの、上位モデルの「MZ-731」にはプロッタプリンタが搭載されていたため、「LINE」「CIRCLE」といった制御用の命令は存置されていたということだ。「LINE」「CIRCLE」という命令は認識するものの、「プロッタプリンタがありません(DEVICE OFFLINE)」というエラーを返していたのだ。

 グラフィックス機能のない、文字だけのPCであることを知った当時の筆者は、人生初の絶望を味わった。しかし、1週間後には開き直って試行錯誤を続けた。そして数カ月後には、今でいうところの「絵文字」みたいな画面を使った、宇宙テイストのモグラ叩きタイプのゲームを作ったりして、自分なりに楽しんだ。

MZ-700 こちらは、MZ-700シリーズのプリンタ付きモデルである「MZ-731」。筆者が買ってもらったMZ-721には中央部にあるプロットプリンタが付いていない。ちなみに、プロットプリンタは後から購入して搭載したものの、あまり活用しなかった(写真提供:シャープ)

 その後、BASICは動作速度が遅い言語であることを知って、独学でアセンブリ言語(当時は「機械語」と呼ばれた)を学び、中1になった頃はスクロール型のシューティングゲームのようなものを作ったりしていた。もちろん自機も敵機も絵文字で、機銃の弾は「.」なのだが(笑)。

 ちなみに、当時のイギリスにも「国産PC」は存在していた。公共放送局であるBBCからの依頼を受けてAcorn Computers(※3)が開発した「BBC Microcomputer System(通称:BBC Micro)」、Sinclair Researchの「ZXシリーズ」、Commodoreの「VICシリーズ」を見かけたが、筆者はあくまでも日本のPCが欲しくて、現地ものには関心がなかった。

 そうそう、イギリスでもMZ-700シリーズは販売されていて、電気店で何度も実機を見かけた。ただし、日本版ではひらがなやカタカナが登録されている文字コードの部分には、日本版にはないキャラクタグラフィックス(絵文字)に置き換えられていて、驚いた記憶がある。

(※3)スマートフォンやタブレット向けSoCのアーキテクチャ開発で知られる「Arm」の社名は、元々Acorn Computersが1983年に立ち上げた「Acorn RISC Machines(ARM)」というプロジェクトに由来する。つまり、Acorn ComputersはArmのルーツなのだ。なお、Acorn Computers自体は1999年に「Element 14」と社名を変更した後、2000年にBroadcomに吸収される形で消滅した

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