高校時代から始めたOh!Xでの執筆活動は、大学に入学してからも続いた。
一方、大学の長期休暇時にはゲームスタジオに泊まり込んで「別機種用の市販ゲームをシャープ製パソコンに移植する仕事」を行っていた。稼いだお金は、ほぼ全てをPC機材や趣味のコンピュータ音楽のシステム構築に使っていた。
大学時代、筆者は自宅暮らしだったし、同年代と比べればそこそこ稼いではいたので、欲しかった主流PCは一通り買い集めて、それぞれのハードウェアの研究や実験を行っていた。具体的には、シャープの「X68000」、NEC(日本電気)の「PC-9821Ap2」「PC-8801FH」、セイコーエプソンの「PC-286VE」などが自室に並んでいた。
一方で、富士通の「FMシリーズ」とAppleの「Macintoshシリーズ」は、特に深い理由はなかったが、結局手を出さなかった。
X68000シリーズの最終かつ最上位モデル「X68030-HD(CZ-510C)」。筆者はX68000シリーズの初代「X68000」から始まり、「X68000XVI」「X68030」と、“全て”を買いそろえたそして先述の通り、当時の筆者はコンピュータを使った音楽制作にも没頭していくようになる。部屋にはMIDI楽器類としてコルグの「KORG M1」「KORG WAVE STATION」、そしてボコーダー「KORG VC-10」、ローランドの「Roland S-330」「Roland U-220」「Roland R-8M」「Roland CM-64」「Roland SC-55」、ヤマハの「SY77」を取りそろえ、各社の24chミキサー(当時はアナログ)や各種エフェクターも所狭しと並んでいた。さながら、自室はほぼ音楽制作スタジオみたいな状態だった。
執筆をしていたOh!Xでは、趣味だったコンピュータ音楽関連の記事を多く任されるようになり、その流れでオリジナルのコンピュータ音楽制作システムの開発に着手することになる。
「Z-MUSIC」と名付けられたこのシステムは、楽曲をプログラミングできるシーケンサーの役割の他に、ゲームプログラムと連携したBGM再生や効果音再生にも対応する機能を実装し、Ver.3.0まで開発を続けた。
Z-MUSIC Ver.3.0では、MIDI最大64ch、FM音源最大8ch、ADPCM最大16chの音楽制作に対応した。最大同時再生トラック数6万5535本、最大同時演奏チャンネル数88本は、当時世界トップクラスだったと自負しているプログラムの開発に際して、ある時期からシャープと協力関係を結んだこともあり、発売前のプロトタイプ「X68000XVI Compact」や「X68030」などが筆者宅にあったりもした。
Z-MUSICは初期バージョン(Ver.1.0)からロイヤリティーフリーとして公開していたこともあり、「Asuka 120% Burning Fest.」「Mad Stalker: Full Metal Force」「ヴェルスナーグ戦乱」「餓狼伝説」シリーズを始め、そこそこの数のゲームソフトに採用された。
なお、さらに詳細なZ-MUSIC 開発秘話については、2026年3月発売予定の「令和版 Oh!X」(8800円)に掲載予定だ。
筆者の高校から大学時代は異性との甘酸っぱい思い出は皆無で、その青春はPCのプログラミングとコンピュータ音楽に費やされたのであった。
写真は満開製作所が発売したX68060搭載アクセラレーター「060turbo」を搭載したX68030(通称「X68060 Turbo」)だ。巨大なZ-MUSIC Ver.3.0のソースコードを、超高速にアセンブルすることができたその後、1990年代半ばには「Windows 95」という“黒船”が到来し、独自アーキテクチャのPCはみるみるうちに淘汰(とうた)されていった。
筆者の自室も、段々とWindows PCに侵食されるようになっていく。当時は「DOS/Vパソコン」と呼ばれることも多かったWindows PCだが、筆者が最初に購入したのは、今はメモリ屋として知られるMicronが作った、初代Pentium搭載のデスクトップPCだったと記憶している。これを最後に、自分で使うデスクトップPCは全て“自作”となった。
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