QualcommのSoC「Snapdragon Xシリーズ」を搭載するWindows PCは、デスクトップタイプにも広がりつつある。レノボ・ジャパンが6月5日に発売した「ThinkCentre neo 50q Tiny Snapdragon」は、その選択肢の1つだ。9月12日時点における直販カスタマイズ(CTO)モデルの最小構成価格は9万7328円となっている。
Snapdragon XシリーズのCPUコアは、Armアーキテクチャベースだ。そのため、プリインストールされているWindows 11も同アーキテクチャ向けとなる。
Arm版Windowsの普及には、Microsoftや大手ソフトウェアベンダー“以外”の開発者の参入が鍵となっているが、ThinkCentre neo 50q Tiny Snapdragonのようなデスクトップモデルの登場は、Arm版Windowsのエコシステムの発展において重要なターニングポイントとなるだろう。Arm版Windowsに期待している筆者も、本モデルの登場に喜びを隠せない。
今回、レノボ・ジャパンから評価機を借りることができた。本機が筆者の期待に応えられるかどうか、外観からパフォーマンスまでチェックしていきたい。
その名の通り、ThinkCentre neo 50q Tiny Snapdragonはレノボが2014年から継続して投入している超小型フォームファクター「Tinyシリーズ」の一角を構成するモデルだ。
Tinyシリーズというと、コストパフォーマンスの良さから一部で人気を集めた「ThinkCentre M75q Tiny」を思い出す。2020年に初代(Gen 1)が出た当時、筆者はサーバやサブPCとして複数台購入した。似たような経験をした人も多いと思う。
本モデルは、そんなThinkCentre M75q Tinyを思い出させるサイズ感となっている。具体的なサイズは約179(幅)×182.9(奥行き)×36.5(厚さ)mmで、重量は“最大で”約1.18kgだ。
一方で、本製品はSOHO/SMB(個人事業主や中小規模ビジネス)を主ターゲットとする「ThinkCentre neoシリーズ」の一角を構成するモデルでもある。正面のデザインは、シリーズの他モデルと共通でフラットかつシルバー基調でおしゃれだ。
正面のポート類は、3.5mmイヤフォン/マイクコンボジャック、USB3.2 Gen 2(USB 10Gbps) Type-C端子、USB 3.2 Gen 2 Standard-A端子を1基ずつ備えている。この辺りは、Intel CPUを搭載する兄弟機「ThinkCentre neo 50q Tiny Gen 5」と同様だ。
背面のポート類は、Tinyシリーズならではの“詰まり”具合だ。標準では左から電源端子、DisplayPort 1.4出力端子、USB 3.2 Gen 2 Standard-A端子、HDMI出力端子、USB 2.0 Standard-A端子×2、USB 3.2 Gen 2 Standard-A端子、有線LAN(1000BASE-T)端子の順に並んでいる。
CTOオプションでWi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)/Bluetooth 5.3ボードを搭載した場合は、有線LAN端子の横に無線アンテナ端子も用意される。加えて、背面の右上には「オプショナルポート」があり、CTOオプションで追加のDisplayPort 1.4出力端子か、アナログRGB(D-Sub)出力端子を追加可能だ。
小型ながらもポート類が充実している。ワイヤレスキーボードやマウスなど、ノイズの影響を大きく受ける周辺機器用にUSB 2.0端子が用意されているのも嬉しいポイントだ。
内部のカスタマイズ性に目をやると、メモリはLPDDR5X-8448規格でマザーボードに直接実装されているため、購入後に増設/換装できない。一方で、SSD用のM.2 2280スロットは2基備えているため、「OS用」「データ用」といった形で2基のSSDを搭載可能だ。CTOオプションでは、最大1TBのSSDを2基搭載する構成も用意されている。
電源は外付け式で、現在も一部のThinkPad Pシリーズで使われている平形コネクターのACアダプターを利用できる。本製品に付属するACアダプターは65W出力だ。
レノボの直販サイトでThinkCentreシリーズを購入する場合、キーボードやマウス、縦置き対応モデルで縦置き時に利用する「バーティカルスタンド」などのアクセサリー類はCTOオプションとなっている。不要な場合、あるいは別途自分で用意する場合は、余計なアクセサリーを省くことで価格を抑えられる。
ThinkCentre M75q Tinyも、ACアダプター以外のアクセサリー類はCTOオプションとなっている。今回は“評価機”ということで、主要なアクセサリー類が付属していたので簡単に紹介しよう。
本体の縦置き時に使うバーティカルスタンドは、本体価格に1000円を追加すると付属できる。小型ながら安定しているので、縦置き運用を考えているなら付属しておくとよいだろう。
フルサイズスリムキーボードは、その名の通りテンキー付きのスリムキーボードだ。Copilotキーも付いており、Windows Copilotの呼び出しを簡単に行える。また、スマートフォン/タブレット用のスタンドが付いているのも特徴だ。
配列は日本語と米国英語(US)から選択可能で、日本語配列は2200円、US配列は3300円を本体にプラスすると追加できる。
なお、レノボではワイヤレスキーボード/マウスセットを本体と同時購入すると110円で購入できるキャンペーンを実施している。キーボードとマウスをワイヤレスにしたい場合は、付属せずにセットを同時購入するとおトクだ。
USB 光学式ホイールマウスは、オーソドックスな「2ボタン+ホイール」という構成の光学式マウスだ。本体に1100円をプラスすると追加できる。
マウス本体のカラーは黒で、ホイールはThinkPadのTrackPointと同じ赤色が採用されている。このカラーリングはIBM時代から脈々と引き継がれているもので、個人的に今でも自室に1つ飾っているほどに筆者のお気に入りだ。
ただし先述の通り、ワイヤレスキーボード/マウスセットの同地購入キャンペーンの方が金額的にはおトクだ。有線にこだわりがない場合はワイヤレスキーボード/マウスセットを同時購入した方がいいだろう。
レノボ、Copilot+ PCに準拠したSnapdragon X搭載ミニデスクトップPC
Arm版Windows 11で「ATOK」が問題なく使える日は来るのか? Qualcomm日本法人のPC事業責任者の見解
動画視聴にベストと思いきやTVの「ワイヤレス視聴」でハマった――Armベースの「Surface Pro(第11世代)」実用レビュー【第2回】
Snapdragon X Eliteを搭載した新型「Surface Laptop」 パフォーマンスをチェック ARM版Windowsの未来は意外と明るい?
QualcommがArm版Windows搭載の低価格開発キット「Snapdragon Developer Kit」を投入Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.