2019年5月21日にリリースされた「May 2019 Update(バージョン1903)」では、先のApril 2018 Updateと比べると記憶に残る新機能が幾つか導入された。ある意味で機能更新プログラムにおける“当たり年”だったといえる。
筆者的に一番重宝したのが、Windows Updateの「更新を7日間一時停止する」機能だ。以前のバージョンではWindows Updateの“一時停止”はHomeエディションでは利用できなかったところ、本バージョンからはHomeエディションを含む全エディションで1回当たり7日間(最長で5セット=35日間)一時停止できるようになった。
毎月1回行われる「品質更新プログラム」では、時折重大な不具合が発生することがある。そのため「Windows Updateの適用を遅らせて様子を見たい」というニーズもある。とはいえ、Windows Updateを完全に停止するのはセキュリティ面で良くない。そういう意味で、Windows Updateの一時停止機能は地味に助かるのだ。
他にも、「タスクマネージャー」の機能改善、マウスポインタの高解像度対応なども行われている。Proエディションでは、仮想マシンを使ってアプリの隔離して実行する「Windows サンドボックス」もサポートしている。
2019年11月12日に公開された「November 2019 Update(バージョン1909)」は、Windows 10のリリースから5年目、そしてWindows 7のサポート終了を約3カ月後に控えたタイミングでのリリースとなったことから強く印象に残っている。
特に注目すべき新機能として「Windows Search」の強化が挙げられる。オンラインであることが前提となるが、OneDriveに保存されたオンラインのファイルをエクスプローラーから検索できるようになったのだ。バージョン1709のオンデマンド対応によって生じた「オフラインのファイルしか検索できない」という新たな課題に対処した格好だ。
あくまで筆者の感覚ではあるが、このNovember 2019 UpdateでようやくWindows 10がこなれてきたように思える。
2020年5月27日にリリースされた「May 2020 Update(バージョン2004)」では、「このPCを初期状態に戻す」機能が改善された。
この機能は、動作が不安定でOSを再インストールしたいニーズに応えるべくWindows 10で新たに実装された。本バージョンでは、新たにオンラインでダウンロードした“最新”ビルドのWindows 10を再インストールする機能が実装された。ローカル再インストールと比べると少し時間は掛かるが、これにより常に最新のWindows 10を再インストールできるようになった。
他にはCortanaのアプリ化(≒OSからの分離)なども行われている。
2020年10月20日にリリースされた「October 2020 Update(バージョン20H2)」では、Chromiumベースの新生「Microsoft Edge」がOSに含まれるようになった。
Microsoft EdgeはMicrosoft独自のWebブラウザで、レンダリング(ブラウザ)エンジンも自社開発の「EdgeHTML」を使っていた。しかし、他のブラウザエンジンと比べると機能不足やパフォーマンスの課題を指摘されることもあったため、同社は2020年1月にレンダリングエンジンをGoogleが主導するChromiumに変更した。
October 2020 UpdateでChromium版Microsoft Edgeが標準化されたことで、わざわざダウンロードしてインストールし直す手間が省けるようになった。
Chromium版Microsoft Edgeは、Google自身が開発する「Google Chrome」とほぼ変わらないパフォーマンスの高さに加え、Microsoft独自のカスタマイズが行われていることもあり、愛用する人も少なくないはずだ。
2021年5月18日にリリースされた「May 2021 Update(バージョン21H1)」は、ある意味で“いにしえの”インターネットコンテンツとの決別を象徴する、個人的に印象深いバージョンだ。というのも、本バージョンではAdobe(旧Macromedia)のマルチメディアプラットフォーム「Adobe Flash」のランタイム(Flash Player)を削除したからだ。
Flashは1996年に旧Macromediaが開発したもので、2000年代にはインターネットゲームやインターネット動画の実現に大きく貢献した。 当時の日本では「Flash動画」が数多く生み出された。
しかしセキュリティ上の問題を解消しきれなかったことから、Adobeは2020年12月をもって中国を除く全世界でFlash Playerの開発と配布を終了した。本バージョンにおける削除も、その流れにのっとった取り組みとなる。
2021年11月15日にリリースされた「November 2021 Update(バージョン21H2)」は、「Windows 11」が登場した後に初めて登場した機能更新プログラムだ。
本バージョンでは、Wi-Fi(無線LAN)のWPA3セキュリティにおける「H2E(SAE Hash-to-Element)」のサポート、生体認証「Windows Hello」の大規模組織向け機能(Windows Hello for Business)の強化、「Windows Subsystem for Linux(WSL)」のGPUコンピューティング機能のサポートといった新機能が追加された。
WSLのGPUコンピューティング機能のサポート追加は、ヘビーユーザーにとっては嬉しい新機能だった……のだが、一般ユーザーに広く利用される機能ではなかった。
一方で、Windows 11と比べると新機能の追加は少なかった。いよいよ「Windows 10の終わり」が見えてきたと、筆者なりに実感したバージョンでもある。
Windows 10 November 2021 Updateでは、WSLにおいてGPUコンピューティングを利用できるようになった。ヘビーユーザーにとっては大きな変更であったが、一般ユーザーには違いをあまり感じられないという問題もあった2022年10月18日にリリースされた「Windows 10 2022 Update(バージョン22H2)」は、Windows 10向けとしては“最後”の機能更新プログラムだ。本バージョンは“最後”ということでOSの安定性向上に重点が置かれており、大きな新機能は搭載されていない。
ただし細かい新機能は追加されており、AIエージェント「Windows Copilot(現在のMicrosoft Copilot)」がプレビュー実装されている(後にアップデートで正式版に)。ただし、Windows 11における「Copilot in Windows」の機能は利用できないため、Webブラウザーから「ChatGPT」のような生成AIサービスを利用していることと体感上は変わりない。
Windows 10がリリースされた当初は「これがWindows最後のメジャーアップデートだ」とされており、筆者もそう信じていた。しかし、残念ながら時代の流れもありそうはならなかった。長い時間を掛けて“頼りがいのある背中”に成長したWindows 10は、その歴史の幕を閉じる。
ただし、以前の記事でも紹介した通り、個人ユーザーでも1年間は「延長セキュリティアップデート(ESU)」によってセキュリティ更新は引き続き受けられる。この期間を使って、感傷に浸らず、確実に「Windows 11」へアップグレードする方法を検討してほしい。
Windows 11が“ようやく”Windows 10をグローバルシェアで逆転 StatCounter集計
「Windows 10」のサポート期限切れまでにPC買い換えやアップグレードが間に合わない? 暫定措置の「拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)」をチェック!
「Windows 10のサポート期限終了」にどう対処する? 手持ちのPCをアップグレードする方法をチェック!
「Windows 10のサポート期限終了」は何を意味するのか? 改めて確認しよう!
Windows 10に入れるとセキュリティ機能を最大1年間“延命”できる 個人向け「拡張セキュリティプログラム(ESU)」の申し込み方法をチェック!Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.