AppleのAI戦略などが典型だが、一般にローカルAIが利用するデータは個々人のデバイスで閉じているため、基本的に外部に出すことがない。
しかし先に挙げた通り、クロスプラットフォームを特徴とするQiraでは複数のデバイスでパーソナルAI機能を利用できる。ユーザー視点に立つと「ある意味で当然」なのだが、こうしたユーザー中心な考え方を取っているのも、Qiraの大きな特色である。
現在、MicrosoftはWindows 11において「Copilot+ PC」でAIエージェントをPC内で動作させるための機能拡張を進めている。スマホの世界ではPCよりも早い段階で個人向けのAI機能の実装が進んでいるが、これらにQiraが将来的に入ってくる姿は容易に想像できる。
ここで興味深いのは、単に「デバイスをまたいで単一のAIエージェントが利用できる」というだけでなく、「別のデバイスで“知覚した”情報が、別のデバイスでもそのまま蓄積されていく」という点にある。
例えば、ユーザーがQiraに対応するスマートグラスやアクセサリ型のウェアラブル(IoT)デバイスを身に付けていれば、PCやスマホが起動していない状態でもスマートグラスやウェアラブルデバイスを通して収集された情報がQiraのパーソナルデータとして蓄積される。
一般にAIエージェントは、ユーザーとの接触時間が長いほど“強化”されていく。要するに、クロスデバイス対応とすることで、結果的にQiraがより強固な存在となるのだ。
Lenovoは今回、カメラやマイクといったセンサーを組み込んだQira対応のペンダント型デバイスのコンセプトモデル「Project Maxwell」を紹介した。PCのようなデバイスメーカーがAIエージェントとどのように向き合っていくのか――その1つの回答ともいえる。
Qiraを通じたLenovoのAI戦略について、ヤンCEOは次のように述べている。
LenovoにおけるAI戦略とは、エージェントが特定のデバイスに縛られず、ユーザー自身の「パーソナルなAIデジタルツイン(分身)」へと進化することだ。加えて、やがてはAIエージェント自身がPCやスマートフォンの画面を飛び出し、例えば「Embodied AI(身体をもったAI)」として物理的な世界でユーザーの行動をサポートするロボティクスのような未来が到来するかもしれない。
AIにおけるビジネスモデルだが、当面はQiraを課金モデルとして提供するのではなく、PCやスマホといったハードウェアの価値を高めるための差別化要素として推進していく。将来的には、エコシステム全体で収益モデルを検討していくことになるだろう。
ヤンCEOはLenovoのAI戦略を説明する中で「LenovoはIBMと異なり自前主義にはこだわらない」と発言している。
LenovoのPC事業の大部分は、2005年に買収したIBMのPC事業が基盤となっている。先の発言はそのことを意識したものだが、コンピューティングの世界が複雑化し、AIエージェントが主役となりつつある世界において、必要なものは協業によって賄っていくというスタンスを示した格好だ。この姿勢は、シリコンパートナーであるIntel/AMD/Qualcomm、そしてAI時代に特に注目されているNVIDIAからゲストを呼び、その存在を強くアピールしていたことからも伺える。
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOを迎えての提携発表では「AI Cloud Gigafactory」の取り組みが発表された。クラウドプロバイダーが何千や何万といった単位のNVIDIA GPUを組み込んだAIモデルを構築するとき、システムの設置から稼働までのノウハウやサポートをパッケージとしてLenovoが提供するというものだ。これはNVIDIAが発表したばかりの「Vera Rubin」にも対応している。
フアンCEOによると、世界のスーパーコンピュータの性能上位500基のうち約3分の1はLenovoのシステムをベースに動作しているといい、今回の提携はその知見が生かされるものだと述べている。
実はLenovoが基調講演を行ったSphereの「Big Sky」と呼ばれる巨大LEDスクリーンのレンダリングシステムも、Lenovoの技術が用いられている。
話をAIに戻そう。Lenovoのアシュリー・ゴラクプルワラ氏(エクゼクティブバイスプレジデント兼インフラストラクチャソリューションズ部門(ISG)担当プレジデント)によると、こうした大規模データセンターにおけるGPU需要は、今後も旺盛な巨額投資が続く見込みだという。
ゴラクプルワラ氏は、かつての検索エンジンやSNSがそうであったように、AIモデルの「学習」が勝者総取りの世界であることが巨額投資につながっている面が大きいと語る。しかし、Lenovoの考えるAIの世界の1つである「エンタープライズAI」の世界では、一般企業が必要とする「推論」においてクラウドAIとは別のトレンドを歩むことになるとも語る。
インフラを外部に依存してデータが“流出”する形になるクラウドAIは、コストやセキュリティの観点から現実的ではないこともある。物理的にレスポンスを重要視するニーズもあることから、オンプレミスまたはエッジサーバによる推論が一定の地位を占めるとの見立てだ。
現在、AIに必要な計算リソースは大部分が学習に充てられている。しかしヤンCEOは「現在計算資源の80%が学習に使われている状態だが、今後は80%が推論に使われるという逆転現象が起きる」と語る。この変化の過程では、推論の処理に必要なデバイス、より具体的にはオンプレミスのサーバやエッジデバイス(PCやスマホ)の重要性が増すという考えだ。
その際に、Lenovoが持つ豊富なポートフォリオや知見は、大いに役立つという。会場ではローカルで推論処理を動かすためのコンセプトモデルとしてNVIDIA GB10を搭載した「Project Kubit」が参考出展されていたが、将来的により「ローカルで動作するAI」というのが身近になっていくのかもしれない。
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