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AIは「学習」から「推論」へ――LenovoがSphereで語った新AI「Qira」とNVIDIA協業の全貌 脱“デバイス単体”のAI戦略CES 2026(1/2 ページ)

» 2026年01月23日 12時45分 公開

 AIと人型ロボットが花盛りだった「CES 2026」だが、米ネバダ州ラスベガスの新名所となった巨大球体型劇場施設「Sphere」において基調講演を行ったLenovoも例外ではない。

 基調講演では同社のヤン・ヤンチン会長兼CEOがLenovoのAI戦略を語った。ここ数年、同社は「Smarter AI for All」をスローガンに、全ての人を対象としたより“スマートな”AIの提供を目指している。

 AIならびにコンピューティングのUI(ユーザーインタフェース)やUX(ユーザー体験)のトレンドがいわゆる「エージェント型」へと推移していく中、Lenovoは傘下のMotorola Mobilityと共同で「Qira(キラ)」という新しいパーソナルなAIスーパーエージェントを大々的にアピールした。

Qira LenovoがAI戦略の中核とするスーパーパーソナルAIエージェント「Lenovo Qira」。子会社のMotorola Mobilityでは同じものを「Motorola Qira」として展開する
ヤン・ヤンチン会長兼CEO Sphereで基調講演に臨むヤン・ヤンチン会長兼CEO。筆者は基調講演を現地で取材していたのだが、記者席が会場のステージから遠すぎて、アップで写真を撮ることはかなわなかった(画像は配信分をスクリーンショットしたもの)

「Qira」ってどんなAI? 他社と何が違う?

 AIというと「チャットボット」や「生成AI」を思い浮かべる人も多いと思う。これらはユーザーからの問い合わせに対して逐次回答したり、入力されたプロンプト(指示)を基に各種出力をしたりするものだ。

 それに対して、昨今盛り上がりを見せているAIエージェント(エージェントAI)は、人間からの指示なしに、適切なタイミングで意図や目標を理解して自律的に行動するAIとなる。必要に応じて外部ツールも駆使しながら最終的なタスク達成に向けて行動することも特徴だ。

 AIエージェントは、推論と行動を繰り返して複雑な業務プロセスを自動化する「推論と計画」も行う。さらに個々のニーズに応じたタスクをこなすべく、ユーザーの行動を長期的に保管し分析する「記憶と理解」を通して個人最適化(パーソナライズ)も行われる。自律性、推論と計画、そして記憶と理解――この3点がAIエージェントの特徴といえる。

 コンピュータのUIが文字(キャラクター)ベースの「CUI」から画像(グラフィックス)ベースの「GUI」へと進化して一般に認知されたのは今から30年ほど前だが、CUIもGUIも必要な命令(指示)は全てユーザーが逐次行い、その結果を確認して次の行動へと移るという点での変化はなかった。

 だがAIエージェントの世界は、こうしたインタフェースをAIで代替することを主眼に据えており、ユーザーがコンピュータとの“対話”に費やしていた作業の多くをエージェントが代わりに行うことになる。ユーザーの行動パターンや志向を記憶し、その多くの作業を自動化してくれるからだ。

 LenovoとMotorola Mobilityが展開するQiraは、AIエージェント時代のユーザーとの対話インタフェースとして開発されたという。Qiraには大きく2つの特徴があり、1つはクラウドAIとローカルAIの2種類を必要に応じて組み合わせる「ハイブリッドAI」であること、もう1つはPCからスマートフォン、さらにはウェアラブルデバイスまで、複数のデバイスをまたいで共通のAIが動作する「クロスプラットフォーム」であることだ。

 特にクロスプラットフォームという点は、Motorola Mobilityを含めるとPCメーカーでも最も幅広い製品ポートフォリオを持つLenovoならではの特徴だ。PCメーカー各社が独自に模索するAI戦略の中でも、大きな差別要因といえる。

クロスプラットフォーム Qiraはユーザー中心のクロスデバイスプラットフォーム環境をうたう

複数のAIエージェントを束ねる「スーパーエージェント」を志向

 Lenovoでは、近年利用者が急増しているOpenAIの「ChatGPT」やGoogleの「Gemini」のようにクラウド上で動作するAIを「パブリックAI」、スマホなど個人の持つデバイス上でローカル動作するAIを「パーソナルAI」、そして企業が保有するデータを用いる外部公開しないAIを「エンタープライズAI」として区別している。

 その上でLenovoは特定のAI、例えばChatGPTのようなサービスが全てのニーズを賄うわけではない点を強調して「ONE size never fits ALL(1つのサイズが全てにピッタリなことは決してない)」と表現する。一方で、ユーザーが用途に応じて自らの判断でAIを適切に“使い分ける”のも、必ずしも“賢い行動”とは言いきれない。

3つのAI LenovoではAIを「パブリックAI」「パーソナルAI」「エンタープライズAI」の3種類に分類して考えている。それぞれは用途による使い分けがあり、1つで“全ての”をカバーするのは難しい

 こうしたAIの“単一の”窓口として機能するのが、Qiraということになる。ヤンCEOはQiraの位置付けについて「競合他社のサービスを排するものではなく、あくまで個人のための玄関口(Entry Point)だ」と説明している。

 ChatGPTやGeminiは膨大な知識を抱える巨大なデータベースだ。一方で、個人のデータはセキュリティ上の観点からローカルデバイスへと蓄積され続ける。ゆえに、AIエージェントの世界ではパブリックAIとパーソナルAIの連携が重要となる。例えば普段は個人データが存在するパーソナルAIを使ってその文脈(Context)を理解しつつ、必要な知識はパブリックAIから引用してくるといった連携だ。

 この仕組みをLenovoでは「Intelligent Model Orchestration」と呼んでおり、ユーザーが必要とする作業に応じて最適なAIモデルを適時選択してくる。そして、パーソナルAIとして個々の文脈を理解するエンジンとなるのが「Agent Core」だ。ある意味で、Agent CoreはAIエージェント時代の主要なインタフェースと呼べるかもしれない。

Agent Core パーソナルAIとして、個々人の“文脈”を理解して行動する「Agent Core」

 またAIエージェントで重要なポイントとして、Lenovoのトルガ・クルトールCTOは特定のAIエージェントが単体で動作するのではなく、人間同士がそうであるように「チーム」を組んで動作する点が重要だと語る。「もしAIエージェントに『没入感のある映画のような体験を実行して』と指示を出した場合、このために必要なそれぞれの役割を持つAIエージェントが協調し、目標に向かってチームを組む必要が出てくる。これがQiraのAIスーパーエージェントであり、最後の基盤技術の『Multi-agent Collaboration』だ」(クルトールCTO)

 Qiraを「AIスーパーエージェント」と呼ぶLenovoだが、これは1つの強力なアプリが複数の機能やサービスの窓口となるスマホの「スーパーアプリ」になぞらえた表現だ。単一の窓口として、機能特化型AIエージェントの窓口と“協調”を担うAIエージェント、もっと簡単にいうと「AIエージェントのエージェント」といえる。

クルトールCTO Qiraの仕組みを説明するトルガ・クルトールCTO
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