さて、以下では製品の特徴をさらに深く読み込んでみよう。
MacBook Neoの安さの秘密は、そのプロセッサにある。現行の他のMacは全て型番が「M」で始まるプロセッサを採用しているが、MacBook Neoのプロセッサは「A18 Pro」だ。このAで始まるプロセッサは本来iPhone用に設計されたもので、全く同じA18 Proは2024年に発表された「iPhone 16 Pro」が搭載していた。
iPhoneがあれだけ高度な処理をサクサクとこなせるほど、実は昨今のiPhoneのプロセッサは、Macのプロセッサと肩を並べるほどの性能を備えているのだ。ならば、その安価なプロセッサを使って、圧倒的低価格の製品を作ってしまえと作られたのがMacBook Neoだ。
日本の価格を見ると、安いと言ってもそれなりに感じる人がいるかもしれないが、米ドルでの価格は599ドルだ。これは完全に中堅スマートフォンの価格帯でもある。
MacBook Neo搭載のA18 ProはCPUコア数が6コア(うち高性能コアは2基、高効率コアは4基)で、MacBook AirのM1〜M3が8コアCPUだったことを考えると、数字の上では2基「少ない」構成だ。GPUコアも5コアで、iPhone 16 Proの6コアと比べても1基少ない。
これは「削った」と見るか、「最適化した」と見るかだが、私はどちらでもなく「MacBook Neoのターゲットユーザーに合わせて選んだ」と解釈している。
既に述べたように、本機は毎日PCを使い倒すプロや、動画編集に何時間も費やすクリエイターのためのマシンではない。Webを見たりメールを書いたり書類を作ったり、ときどき写真を編集する――そういった「普通の使い方」をする人たち向けだ。
そうしたユーザーには、8コアのフル性能よりも瞬発力が高く、バッテリーが長持ちし、薄くて軽く、そして安いマシンの方が、ずっと大きな価値がある。
AppleはMacBook Neoをゼロから設計したというが、それも既存のMacを安く再設計したのではなく、このマシンの想定ユーザーから逆算して、必要なものを必要なだけ積み上げ、この驚きの価格に納めた、という意味なのだろうと思う。
ベンチマークツールのGeekbench 6でスコアを計測してみた。CPUのシングルコアは3550で、M1 MacBook Airが2347、M2が2587、そしてM3でも2964〜3065程度なのに対して、MacBook NeoのA18 Proはそれらを全て上回っている。
AppleがiPhone用と位置付けるチップが、MacBook Airを上回るシングルコア性能を持っているというのは、なかなか驚きの結果だ。
このシングルコア性能が何を意味するかというと、1つ1つの処理の速さのことだ。アプリを起動する、Webページを表示する、写真にフィルターをかける、メールを送信するといった日常の作業のほとんどは、このような“1つ処理”の積み重ねで成り立っている。そういう使い方では、MacBook NeoはM3 MacBook Airにも引けを取らず、むしろ勝っている。
一方で、CPUのマルチコアスコアは9020だった。M1 MacBook Airの8500台のスコアは上回るが、M2の9500台には届かない。6コア構成の宿命で、複数のコアをフルに生かす長時間の並列処理では、冷却ファンを備えた8コアのM系MacBook Airには及ばない。ただ、これが実際の使用感に影響するのは、重たい処理を長時間続ける場面だ。普通に使っている分には、まず気にならない。
GPUのスコアはOpenCLで1万9775と、M1 MacBook Airの1万6000台は明確に超えているが、M2の2万3000台には届かない。ちょうどM1とM2の中間という位置付けだ。ゲームや3Dを本格的に楽しみたいという人には物足りないかもしれないが、写真編集や軽い動画編集、日常的なグラフィックス処理には十分な水準だ。
まとめると「シングルコアのキレはM3 Air超え、長時間の並列処理能力はM2 Air前後、グラフィックスはM1とM2の中間」というのがこのマシンの性格だ。これはM系MacBook Airの「何でも均等に強い万能型」とは異なる、iPhoneチップ由来の特性がそのまま出た結果で、既存のMacのどのモデルとも違う個性を持った製品に仕上がっている。
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