継ぎ目がなく、手になじむサイズと形のタマゴ型という、シンプルなデザインだからこそ苦労した点もある。そんな開発秘話を語ってくれたのは同社の筒井さんだ。
筒井さんは、「意匠のみに優れた製品ではなく、多くの人に手に取っていただき、暮らしに取り入れてもらえないと意味がない。そのためには、手に取りやすい価格帯にする必要がある」と考え、継ぎ目のないデザインを実現すべくボディーの二色成形やタッチセンサー搭載を考えたが、それでは価格が高くなりすぎてしまう。
そこで開発時に注力したのが、「指先に収まるコンパクトサイズ」と「一切継ぎ目のないデザイン」を実現させるということだった。
コンパクトサイズを維持するのに最も困難を極めたのが、乾電池の収納方法だ。収納方法によっては、基板や内部機構に接触してしまうからだ。
そこで考え出したのが、「3次元的な電池の配置」だ。縦方向にも横方向にも角度を付けて配置することで、内部の基板や機構との接触を避けられる。トップケースを着脱式にすることで、取り出しやすい機構も実現した。
次に直面したのが、どのように基板を配置するかという問題だった。基板をスイッチ用とセンサー用で2枚用意するとコストがかさむ。
コンパクトなサイズを維持しつつ、コストを抑制するために考え出されたのが、「空中に浮かせるホイールホルダー」と「特殊なスイッチ機構」だ。これには支えが必要だが、3次元的に配置した電池の収納部分が役立った。
継ぎ目のないデザインを実現すべく採用したのが、前述のシリコン製カバーだ。これにより、継ぎ目のない滑らかな表面を、コストを抑えつつ実現した。
とはいえ、本体とカバーがそれぞれABS樹脂とシリコンという異なる素材のために、調色で苦労することになった。製品に付属するシリコン製カバーは、本体と同じ色のものと、近い色の2パターンだが、同じ色を作り出すために「中国の工場に1週間缶詰になった」と筒井さんが振り返る。
シリコン製カバーを採用したことによる副産物も生じた。例えば、厚みを出すことでLサイズにする、突起をつけることでエルゴノミクスデザインにするなどのバリエーションを作ることができるというものだ。これらについては明確な製品化予定がなく、筒井さんは「その可能性がある」と言及するにとどまった。
電力を乾電池にすることとカバーを使うことで、本体の劣化を防いで長く使えるようになった。
最後に筒井さんは「世にないものを生み出すユニークな発想と人に寄り添った真摯(しんし)な物作りという、当社が40年間培ってきた製品開発の哲学を象徴する製品になったのではないか」と力強くアピールした。
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