今回接続したTVは、高画質な表示力と優れた音響性能を兼ね備えている。55型の4K大画面で映し出されるゲーム映像の美しさと没入感は圧倒的だ。これまでSteam Deckの7.4型有機EL画面で十分満足していたが、大画面ならではのスケール感はまさに別格だと実感させられた。
さらに、プレイを進める中で思いがけないメリットにも気付かされた。筆者はもともとRPGがあまり得意ではなく、ダンジョンで道に迷ったり強敵に行き詰まったりすると、すぐに放置してしまう傾向がある。攻略サイトのテキストを読んでもピンと来ないことが多いタイプだ。
ところが、Steam Machineを使って夕食後のリビングで『ドラゴンクエストI』をプレイしていたところ、同作を昔やり込んだ家族から「その敵は呪文なしで攻撃だけで倒せるよ」「次はあの目的地へ向かわなきゃ」「目的地が分からない? コントローラーのここを押せばマップに印が出るよ」など、横から的確なアドバイスが飛ぶようになった。
個人用の携帯型ハードであるSteam Deckでは生まれ得なかった、家族間のコミュニケーションが誕生した瞬間だった。おかげでここ1カ月ほど、100時間近く足踏みしていたRPGが、一気に前進したのだ。この「ゲーム体験の共有」こそ、リビング据え置き機がもたらす最大の醍醐味といえるだろう。
複数人でのマルチプレイにも配慮されており、本体内蔵のアダプターを通じて最大4台までのSteam Controllerを無線接続できる。コントローラーの電源を投入するだけで自動的に検出され、ペアリングの確認画面が表示される仕組みだ。
純正品に限らず、PlayStationやNintendo、Xbox、8BitDoをはじめとするサードパーティー製コントローラーも広くサポートしている。これらはBluetooth設定メニューから簡単に接続できるため、使い慣れたお気に入りのパッドでプレイしたいユーザーには非常にうれしい仕様だ。
リビング設置にあたり、家族それぞれのSteamアカウントを追加/共有したいケースも多いはずだ。追加手順はシンプルで、ユーザーアイコンから「アカウントを変更」を選び、順次追加していくだけで完了する。利用時の切り替えも同メニューから簡単に行える。
ただし注意点として、本体の再起動こそ不要なものの、システム上はログオフやクライアントの再読み込み処理が発生する。また、セーブデータは個別管理されるものの、別アカウントがインストールした未購入タイトルが自身のライブラリ画面に表示されてしまう仕様はやや煩わしい。購入促進の設計とはいえ、もう少しスマートなインタフェースにしてほしいところだ。
続いて、据え置きマシンとしてのグラフィックス描画性能を検証していく。ポータブル機のSteam Deckと比べてどの程度の差が出るのか、定番の3Dベンチマークソフト「3DMark」の「Steel Nomad」および「Fire Strike」を用いて比較を行った。
両機とも同じ4Kテレビへ接続し、解像度を「3840×2160」に固定した状態でテストを実施した。公平性を期すためそれぞれ5回計測し、その平均値を算出している。なお、SteamOS上で動作させるため、互換レイヤー「Proton」を経由して実行している。
まず重い描画負荷がかかる「Steel Nomad」では、Steam Deckの総合スコアが310(平均3.1fps)だったのに対し、Steam Machineは2024(平均20.25fps)を記録した。
続く「Fire Strike」においても、Steam Deckの総合スコアが3156(平均5.04fps)にとどまる一方、Steam Machineは1万3385.8(平均38.91fps)という圧倒的な数値を出した。
実際、テスト実行中のSteam Deckは激しいスタッタリング(描画のカクつき)に見舞われていた。もともと800p(1280×800)解像度での運用を前提としたポータブル機に、縦横約3倍(画素数では約8倍)となる4K出力を強いているため、Steam Deckにとってはかなり酷な条件であったことは間違いない。
とはいえ、メーカーが掲げる「Steam Deckの6倍以上のグラフィックス性能」というアピールが、決して誇張ではないことを実証できたのは大きな収穫だ。
筆者は以前からSteam Deckを所有しており、同機でもマルチアカウントの追加自体は可能だ。しかし、手元で遊ぶポータブル機という性質上、どうしても“個人専用デバイス”の色合いが強くなり、家族のアカウントまで登録して共有しようという発想には至らなかった。
一方、リビングのテレビに常設するSteam Machineであれば、家族で共有することに何の抵抗もない。「スマホは自分専用、リビングのPCは家族みんなのもの」であった、あのどこか懐かしい時代の空気感を思い出させてくれるハードウェアだ。
手軽に取り出して屋外へ持ち出せる機動性ではSteam Deckに一日の長がある。しかし、大画面ならではの没入感や、リビングでゲームを介して自然なコミュニケーションが生まれる点は、Steam Machineだからこそ得られる固有の価値といえる。
また、画面から十分な距離を取ってプレイできるため、老眼鏡を使わずに大画面を楽しめる点も、個人的には見逃せないメリットだった。
一方で、これまでSteamOS環境に触れたことがないユーザーに対しては、購入前に留意しておくべきポイントも存在する。
SteamOSのベースであるLinux環境では、特定のアンチチートシステムが機能しない場合がある。そのため、Steam上で配信されていても『Apex Legends』や『VALORANT』といった一部の大手人気タイトルがプレイできない点には注意したい。
また、Steamは同一アカウントによる同時ログイン・プレイを制限(排他制御)している。そのため、別PCやSteam Deckでゲームを起動している最中は、Steam Machine側で同アカウントでの同時プレイが行えない。大画面でメインゲームを遊びつつ、手元のSteam Deckで周回作業を行うといった同時並行的な使い方は不可能だ。
そうした制限はあるものの、コンパクトで洗練されたデザインはリビングのインテリアにも違和感なく馴染む。据え置き型デスクトップPCとして非常にユニークであり、高い所有欲を満たしてくれるプロダクトだ。
誰にでも手放しでおすすめできる製品ではないが、リビングで快適なSteam環境を構築したいと考えている方は、品薄が解消されたタイミングでぜひ購入を検討してみてはいかがだろうか。
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