A20 Proチップにはもう1つ、目立たない“数字”がある。メモリ帯域が50%増えているのだ。
オンデバイスでAIを動かすとき、結果を出力する速度に一番影響するのがメモリ帯域だ。応答性は計算速度で高められても、生成AIが出力するデータのスループットは、メモリに支配されてしまう。
MacでもiPad Proでも、ローカルでLLMを動かしたときの速さは、CPUの世代よりメモリ帯域の速度に比例してきた。ならば、iPhone 18 ProでローカルAIモデルを動かせば、メモリ帯域の差がそのまま数字に出るはずである。
今回、iPhoneでも動作可能な「MLX」(Appleの機械学習フレームワーク)で構築されたローカルLLMアプリを使って、iPhone 17 ProとiPhone 18 Proで同じAIモデル(Qwen3 4B 4bi)を実行してみた。
ピーク性能(トークンの出力数)に少しの違いが出るのはもちろんだが、最も異なるのは出力の“持続性”だ。iPhone 17 Pro(A19 Proチップ)では、長文出力性能が最大38%低下するのに対して、iPhone 18 Pro(A20 Proチップ)では15%以下に抑えられている。
ローカルでAI機能を動かすという観点では、Neural Engineを2基構成にしたことも大きな違いをもたらす。この変更はMac向けの「M6チップ」と同様で、発熱による制約が厳しい中で、AIの演算を効率よくこなすためのものだ。この効率向上は、カメラの画像処理でも大きな役割を担う。
GPUコアの「ニューラルアクセラレーター」がFP8演算時で最大2倍の処理性能となったことと合わせると、A20 ProチップはAI特化型の進化をしたSoCであるともいえる。
iPhone 18 Proシリーズでは、4800万画素のメインカメラに機械式の絞りが組み込まれた。これにより、開放のF1.48から始まり、F1.8/F2.8/F4.0の4段階の絞りを入れることが可能になった。
絞りは、レーザーカットした髪の毛より薄い6枚の羽根をローター機構で動かすようになっている。デフォルトは自動調整で「F1.8」となるが、暗所では光をより集めるべく「F1.48」となる。これはF1.8比で約50%明るい。「F2.8」はより深い被写界深度、「F4.0」は最大の被写界深度を得るために用意されている。
Appleによると、自動調整は「光」「被写体」「動き」の組み合わせで行い、暗い場所で1人を撮れば開放(F1.8)となり、複数人が入ればF2.8まで絞って全員にピントを合わせにいくのだという。F値は手動で選ぶことも可能で、F4.0にすると点光源に光条が出て、開放に戻すと羽根が閉じていくのが目で見える。
ただし、この可変絞りに過度な期待は禁物だ。このセンサーサイズでは、F1.48でも35mm判換算での被写界深度はF5.2相当でしかない。F4.0は35mm判換算でF14相当になる。絞りを開けても大きくはボケないし、絞ればほぼ全部にピントが合う。そして絞りすぎると回折が出て画質が下がるため、F4.0よりは絞れない。計算上でもF4.0が解像度の限界で、それ以上絞る意味はない。
「では、なぜ可変絞りは入ったのか?」という疑問に対する答えだが、その1つとして光条線の表現や、絞り優先AEによる撮影を考慮したのだと思われる。しかし、絞りの搭載で得られる実利は「暗所で1.5倍近い光を取り込めること」「明るい場所でシャッター速度を落とせること」の2点にあると思う。
滝や車のライトを流して撮るといった、これまでのiPhoneでは“無理”だった撮り方ができるのは強い。
iPhone Duoだけじゃない! 折りたたみの陰に隠れたApple新製品の「本当のすごさ」
まるで“狂気の沙汰”──ジョブズ時代のAppleを感じさせる「iPhone Duo」のヒンジと製造工程
新型「Mac mini」「Mac Studio」の“数字”を読み解く――驚異のAI性能と、日米価格設定のからくり
合法的な「コンテンツ利用」と「生成AI活用」の実現に向けての第一歩 アドビがクリエイター支援ツールに取り組む理由
AIモデルの性能競争から降りたAppleの狙いとは? AI時代の“計画的長寿命化”と「Siri AI」がユーザーとアプリをつなぐ理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.