目玉は“可変絞り”だけではない――「iPhone 18 Pro」を先んじて使って分かったこと本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)

» 2026年09月16日 21時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

 先行レビュー用として、Appleから「iPhone 18 Pro」「iPhone 18 Pro Max」の貸出機が手元に届いた。

 机の上で「iPhone 17 Pro」と並べてみたが、見分けがつかない。厚さは約8.75mmで変わらず、カメラの並びも同じ。画面上の「Dynamic Island」は小さくなっているが、並べてみてようやく「そういえばそうだったな」と分かる程度だ。「Face ID」ユニットは大幅に小さくなったものの、体感差は大きくはない。

 一方で新色のバーガンディは、写真に撮ると黒に近く写るのに、手に取ると深いワインレッドに近い。それに、今回は各色共に背面のカラーがベゼル部のカラーに近づけられており、先代(iPhone 17 Proシリーズ)よりも上品なたたずまいだ。外観上の話題といえば、言い換えればその程度の違いしかない。

 ところが、Apple本社(Apple Park)で行われた発表会と、その翌日に行われた個別ブリーフィング、そしてAppleへの取材で集めた情報を重ねると、筆者はiPhone 18 Proシリーズはここ数年で最も“中身”が入れ替わったProモデルだと感じる。

 機能面では、アウトカメラのメイン(広角)センサーに可変絞りが付いたことに注目が集まっている。iPhoneとしては初の“機械式”絞りの搭載なので、当然といえば当然だ。しかし、真に注目すべきは「A20 Proチップ」「熱設計」「メモリの帯域」の3点だ。いずれもオンデバイスでAI(人工知能)を動かす上で、とても重要なポイントだ。

 本稿では、A20 Proチップの実力、熱設計の考察、そしてカメラの可変絞りについてチェックしていく。

レビュー機 筆者の元に届いた「iPhone 18 Pro」のバーガンディ(左)と、「iPhone 18 Pro Max」のブラック(右)

「A20 Proチップ」は、なぜメモリを横に並べたのか?

 A20 Proチップは、2nmプロセスで製造された新世代のチップ(SoC)だ。先代の「A19 Proチップ」比で、6基CPUコアのうち2基の「スーパーコア(高性能コア)」が最大20%、7基GPUコアが最大40%、16コア×2構成の「Neural Engine(NPU)」が最大2倍のパフォーマンスとなったという。

 数字だけ見ると派手に見えるが、筆者が重要だと思うのはそこではない。CPUダイとメモリチップが“横並び”配置になったことだ。

 これまでのApple Aシリーズは、他社のスマホ用SoCの多くと同様に「SoCの上にメモリ(DRAM)を積み重ねる」というスタック構造を採用していた。これは基板の実装面積を節約しやすいメリットがある反面、熱密度が高くなるため放熱面でのリスクが生じやすい

 そこでA20 Proチップでは、Mac向けのApple Mシリーズと同様にDRAMをSoCの“横”に置くように改めた。Appleによると、こうすることで「メモリのシリコンダイを経由せず、チップの発熱を直接ベイパーチャンバーに逃がせるようになった」という。結果的に持続性能が向上し、長めのAIワークロードを走らせても性能が低下しにくくなった

 ただし、この実装方法では面積をより広く取るため、隙間のないiPhoneの中にこれをどう収めるかはSoCの設計チームだけでは決められない。ボディーのメカ設計、そして熱設計を一体で進めることで成立したものだ。

 今回、A20 Proチップの実物を見る機会もあったのだが、パッケージ自体がシールドを兼ねていて、それを外すと隣にメモリが位置している。スマホ向けSoCでこうした構造の製品は、筆者の記憶の限り他に見当たらないが、今後のトレンドになるかもしれない。

メモリを横に A20 Proチップでは、メモリ(DRAM)を“横”に置くデザインに変更した。基板への実装面積が増えるというデメリットがあるものの、SoCを冷やしやすくなるというメリットもある

ベイパーチャンバーの表面積は約3倍に

 iPhoneでは、iPhone 17 Proで初めて放熱機構としてベイパーチャンバーが搭載された。この時は「持続性能は『iPhone 16 Pro』シリーズ比で40%上がった」と訴求された。

 iPhone 18 Proシリーズでは、ベイパーチャンバーの表面積が3倍に拡大された。これにより、「持続性能がさらに最大40%上がった」とAppleは説明する。持続性能が2世代で2倍になった

 Appleによると、18 Proのベイパーチャンバーは構造部材を兼ねるようになったという。ボディーの剛性を受け持つ部品として設計することで、放熱部品として許容できる大きさを超えたサイズにできた。これが、「ベイパーチャンバーの表面積が3倍」のからくりだ。

 SoCは基板の上面に露出する位置へ移され、グラファイトと金属とフォームを重ねた熱界面材料(チップの熱を放熱部品へ伝える充てん材)でベイパーチャンバーへとつながる。ディスプレイ側には業界で初めて「ナノ双晶銅(ナノツインコッパー)」のプレートが入った。これも、ボディーの構造強度と、熱の拡散を兼ねた措置だ。

 強度の部品と熱の部品を1つにまとめて、両方の量を増やした――これが、iPhone 18 Proシリーズにおける熱設計の要点だ。

ベイパーチャンバー ベイパーチャンバーは先代から約3倍の面積となった

 サーモカメラでiPhone 17 ProとiPhone 18 Proの高負荷ワークロードを動かした際の映像を見比べると、17 Proは温まり方が緩やかで、ベイパーチャンバーの範囲内に熱が広がる。それに対して、18 Proは熱がより広く拡散し、チップの搭載位置にかかわらず温度の分布が均一になる

 長時間ワークロードで最大40%の性能差が付く――2026年のProは、ピーク性能も追求しながら、熱ダレもしないことを設計の主眼としたようだ。

iPhone 17 ProシリーズとiPhone 18 Proシリーズのベイパーチャンバーを比較
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