ヤフードームのエリア限定ワンセグに見る、イベントインフラとしての可能性神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2009年11月05日 07時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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放送中にメール内容が「字幕」に!

 それでは百聞は一見にしかず。ソフトバンクテレコムのエリア限定ワンセグの内容を紹介しよう。

 筆者の取材日は、ちょうど福岡ソフトバンクホークスの取材当日。エリア限定ワンセグでは、オフィシャルカメラの映像中継を軸に、共通配信プラットフォームを使って、ヤフードーム内と東京・汐留のソフトバンク本社食堂の2カ所でエリア限定ワンセグの実験を行っていた。なお、ヤフードーム内の設備は送信機1台とアンテナ2基で、これによりドーム内のほぼ全域でエリア限定ワンセグが受信できるという。

Photo ヤフードーム内。今回のエリア限定ワンセグ実証実験では、2基のアンテナで球場内をカバーした

 ヤフードーム内のプレス席に腰を下ろし、受信設定済みのワンセグを起動すると、試合映像の受信が始まる。しかし、ここまではテレビの野球中継と変わらない。今回のエリア限定ワンセグの特長は、データ放送の活用だ。

 周知のとおり、ワンセグ放送では映像とともにデータ放送が送られてきており、携帯電話のテレビ画面を分割して表示することができる。今回のエリア限定ワンセグでは、この機能を活用し、ホークスの試合映像にあわせてデータ放送エリアに試合関連コンテンツを表示。そこから応援メールを送ったり、専用の携帯サイトに接続して応援中の映像を送信することができる仕組みになっているのだ。そして、ユーザーが送ったメールや写真/映像は、コントロールセンターの操作ですぐにエリア限定ワンセグの放送内容に合成することができる。

 その中でも秀逸なのが、メールの合成機能で、放送中の映像に「字幕表示」することができる点だ。筆者もこの機能を試させてもらったが、自分が送ったメールが1〜2分以内に字幕表示される様子は、双方向的なUIでとても楽しかった。ニコニコ動画のように複数のユーザーが同時にコメント投稿できるわけではないが、今回の実験で用いられた野球中継などイベント用途では、ユーザー参加型の仕掛けとして盛りあがりそうだ。

 一方、映像による投稿システムは、ユーザーが自らの携帯電話で撮影した動画を専用サイトから送信。センター側でそれを受信し、放送中の映像と切り替えて配信するというものだ。実証実験ではホークスを応援する熱いファン(ソフトバンク社員だが応援は本気だ)が、応援している様子が時おり試合映像に混じって放送されていた。こちらは字幕と異なり、本放送の表示から切り替わるため、「字幕」に比べると合成がスマートではない。例えば、野球やイベント中継中にファンからの映像を織り込むとしたら、そのタイミングなど運用にはノウハウが必要になりそうである。

Photo データ放送エリアの応援メッセージのリンクを選択すると、携帯メールの送信画面に切り替わる。ここで応援メールを作成・送信すると、放送中の映像に「字幕」として表示される

Photo メールによる字幕放送は、最大48文字まで表示可能。この機能は今後のエリア限定ワンセグで、さまざまなサービスへの応用ができそうだ

Photo 映像投稿では、専用携帯サイトから携帯電話で撮影した動画を送信する。ここで送られた動画はオペレーションセンター側の操作で、エリア限定ワンセグの映像画面と切り替えて表示される

「イベント」のインフラとして可能性

 筆者は昨年行われた讀賣テレビ・NTTドコモ関西支社のエリア限定ワンセグ実験を筆頭に、複数のエリア限定ワンセグの実証実験を取材してきた。それらと比較しても、今回、ヤフードームで実施されたソフトバンクテレコムのエリア限定ワンセグは、サービスとしての応用性が高く、さらに運用コスト低減の工夫も随所にされており、完成度の高いものだった。とりわけ筆者が感心したのは、放送するコンテンツの制作/編集を簡単かつ低コストで実現できるという部分だ。受信メールの字幕化などを共通配信プラットフォームが持つことで、低コストで運用しながら、ITサービスの部分でエリア限定ワンセグならではの楽しさを作る工夫をしている。

 昨年取材した大阪でのエリア限定ワンセグでは、コンテンツ制作や放送オペレーションは讀賣テレビが担当し、専用機材とプロのスタッフがあたることで高いクオリティを実現していた。そうした“プロのクオリティ”を重視する考え方は重要であるが、エリア限定ワンセグの今後のビジネス化を考えると、やはりテレビ局のクオリティとコストを求めると展開できる領域に限界がある。「低コストで運用できるようにすることで、新しいマーケットを作る」(ソフトバンクテレコム)という考え方が必要だろう。今後、共通配信プラットフォームがASPとして提供されるようになれば、比較的小規模なイベントやスポットエリアで、エリア限定ワンセグの新たなサービス/ビジネスを展開する道が開ける。

 エリア限定ワンセグ全体の今後を見据えると、筆者はまず球場やコンサート会場などで「イベント」を盛り上げる施設インフラとしての需要から実用化が始まると考えている。放送サービスで最もコストのかかる映像コンテンツをイベント内容に頼れるうえ、集まる人たちの関心がまとまっているので、エリア限定ワンセグの訴求がしやすいからだ。その後、エリア限定ワンセグの運用コスト低減と安価で訴求力のあるコンテンツ制作の道が整えば、駅や街、大規模商業施設など「空間価値のある場所」でのエリア限定ワンセグ活用が考えられるようになるだろう。

 エリア限定ワンセグは、未だ商用化への課題は多いが、その展開次第では新しいメディアとしてさまざまな活用の可能性がある。引き続き、注目していきたいと思う。

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