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» 2011年11月14日 10時00分 公開

スマートデバイスのビジネス活用を考える(3):スマートデバイス導入、事前に考えるべき3つのポイント

成功するスマートデバイスの導入を考える本連載。3回目は、導入する前に把握しておくべき3つのポイントを紹介する。

[小澤浩一/内山英子(KCCS),ITmedia]

 今や、業務効率化に役立つツールとしてだけでなく、新たな業務スタイルを開拓するツールとしても注目が集まるスマートデバイス。成功するスマートデバイスの導入法を考える本連載の第3回目では、導入する前に把握しておくべき3つのポイントを紹介しよう。

ポイント1:導入の目的を明確に

 導入にあたっては「目的」を明確にすることが重要だ。スマートデバイスを使ってどんな業務をどのように改善するのか、これまでできなかったどのようなことを実現するのか――といった目的をしっかり考える必要がある。他のIT化プロジェクトなどと同様に、自社の課題を見つめ直すことで改善の余地が見えてくるだろう。

 例えば、会議の議決書類や機密文書が多く、印刷や廃棄に課題があるような企業なら、文書管理システムとスマートデバイスを組み合わせた利用が効果を上げるかもしれない。印刷にかかるコストや労力、廃棄に伴うリスクを低減できるのは企業にとって大きなメリットになる。また、スマートデバイスはPCに比べて操作が限定されるため、セキュリティリスクが低減されるのも1つの効果といえるだろう。

 さらに、自社の業務が、導入するデバイスの特性に合っているかどうかも確認しておく必要がある。

 例えば大きく明るいディスプレイを備えたタブレット端末は、表示した内容を誰かに見せるような業務には向いているが、見せてはならない情報を扱う業務には向いていない。スマートフォンの場合、データ通信を多用するとバッテリーの消耗が早く電話として使えなくなるリスクがあるとか、PC向けのWebシステムで作られたサイトを利用する際に高いユーザビリティが得られないなどの課題がある。スマートデバイスはその特性を考慮した上で、どんな業務にどのデバイスが適しているかを精査すべきだろう。

ポイント2:セキュリティ対策を慎重に

 セキュリティ対策も、導入時の重要なポイントだ。“どんな技術でどう対処するか”ということよりも、“リスクに対する考え方/基本方針(セキュリティポリシー)”を定めることが先決だ。

 スマートデバイスの活用にセキュリティリスクが伴うことは、広く認知されている。しかし、今はまだ普及途上にあるため、セキュリティ対策のための技術が十分にそろっておらず、PCと同等の対策を施すのは難しいのが現状だ。また、スマートデバイスで扱う情報によっては、そこまでのセキュリティ対策が必要ないと判断できる場合もあるだろう。

 セキュリティポリシーをどう定めるべきか、どこまで対策を講じるべきかは一概にいえるものではない。これはスマートデバイスがPCのような汎用品ではなく、特定用途で用いるものという位置づけであることによる。スマートデバイスで取り扱う情報の機密性はどの程度なのか、また、採用するデバイス・利用シーンにはどのようなリスクがあるのかを明確にし、そのリスクが企業にとって許容できるものなのか、どこまでの対策が必要なのかを検討していくべきであろう。

 場合によっては、PCと同程度のセキュリティ対策を講じられないこともあるので、“アクセスできる情報の機密レベルを変える”という判断も必要になるだろう。PCには顧客情報へのアクセスを許可するが、タブレット端末では販促資料までのアクセスにとどめる――といった具合だ。

ポイント3:端末管理の徹底

 スマートデバイスは、管理面でPCと異なる点が多いことにも注意が必要だ。PCは、管理者権限がなければソフトウェアのインストールも設定の変更もできず、ネットワークの設定をしなければ通信もできない。そのため、業務をこなす上で必要のないネットワークに接続することは想定しにくかった。

 ところがスマートデバイスには管理者権限という概念がなく、誰でも容易に設定の変更やアプリケーションの追加が行える。さらに多くの端末で最初から通信キャリアのモバイル通信回線が使えるので、インターネットにも自由にアクセスできる。あらかじめ制限をしなければ、社員が自由にインターネットにアクセスし、雑誌などで見つけたアプリケーションを好きにインストールするようなことも起こりうる。こうした使い方を放任していると、悪意のあるアプリケーションをダウンロードしてしまう危険性があるほか、もとの環境に戻すためのサポートや端末回収、設定変更といった余分な手間やコストが発生することにもなりかねない。

 さらに、小さく軽いというデバイスの特性から、PC以上に盗難や紛失への対策を講じる必要がある。幸いほとんどのスマートデバイス向けに、遠隔ロックや遠隔消去などのサービスが提供されている。こうしたサービスを利用し、紛失時に端末をロックしたり、データを消去したりできる仕組みに加え、必要に応じてタイムリーにそれを行える体制も必要となるだろう。

 PCとは異なる特性を備えたスマートデバイスについて(1)設定を統一する(2)職務に応じて使用可能なアプリケーションを変更する(3)アプリケーションを配信する などの集中管理を行えるようにするのが、Mobile Device Management(MDM)システムである。最近では、国内外の多くのベンダーからMDM製品がリリースされており、端末のライフサイクルを適切に管理する上では、これらの製品を活用することも非常に有効である。


 スマートデバイスを業務で使おうとすると、何かと運用負荷がかかってくるのが実情だ。そのため導入に当たっては、IT部門の業務に支障をきたさない運用体制の確保やアウトソーシングの検討も必要になる。

 さまざまな活用情報が雑誌やニュースサイトにあふれているスマートデバイスだけに、エンドユーザーからの要望への対応に追われないよう、活用の方向性を示すガイドラインの策定や、導入展開計画の事前アナウンスなど、先手先手の活動が必要となる。

執筆者プロフィール:小澤浩一(おざわこういち)

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 京セラコミュニケーションシステム ICT事業統括本部 ネットワークサービス事業本部 コミュニケーションサービス事業部 事業部長。

 1996年、京セラコミュニケーションシステムに入社。ID管理や文書管理などの自社パッケージシステム「GreenOffice」シリーズの開発企画に携わる。2009年10月よりコミュニケーションサービス事業部事業部長に就任。データ通信サービス「KWINS」をはじめとするリモートアクセス/モバイルアクセス、仮想デスクトップなどのサービス事業に携わる。近年では、リモートアクセス/モバイルアクセスでの経験を活かし、スマートフォンやタブレット端末など、PCに限らないさまざまな情報端末の導入支援やアプリケーション開発に取り組む。



執筆者プロフィール:内山英子(うちやまひでこ)

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 京セラコミュニケーションシステム ICT事業統括本部 事業推進本部 事業推進部 企画1部 部長 公認情報システム監査人。

 大学卒業後に外資系企業にシステムエンジニアとして入社。数多くのIT企業の日本におけるスタートアップに携わった後、2002年に京セラコミュニケーションシステム入社。セキュリティ関連の事業開発責任者や米SOX法対応に関する同社のシステム導入プロジェクトに携わる。現在はICT関連事業のマーケティング、プロモーションを担当。



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