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» 2009年04月24日 11時00分 公開

クリエイティブ・チョイス:マザー・テレサは何をした?――目的が明確であるほど、手段から自由になれる

「○○のためなら手段を選ばない」――と言えるまでに強い目的意識を持つことができたなら、「創造的な選択」をする準備はできています。マザー・テレサ、ムハマド・ユヌスといったノーベル平和賞受賞者たちはいったいどんな選択をしたのでしょうか。

[堀内浩二,Business Media 誠]

連載「クリエイティブ・チョイス」について

 問題を「イエスかノーか」に絞り込んでしまってませんか?――。新連載「クリエイティブ・チョイス」は、選択肢以外の「第三の解」を創り出し、仕事や人生の選択において、満足度を高めることを考えます。4月23日発売の書籍『クリエイティブ・チョイス』から抜粋したもので、今回は序章のコラムからです。


目的が明確であるほど、手段から自由になれる

 「○○のためなら手段を選ばない」という表現があります。「手段を選ばない」と言えるまでに強い目的意識を持つことができたなら、「創造的な選択」をする準備はできていると言えるでしょう。

 目的が明確だった2人のノーベル平和賞受賞者を例に挙げましょう。

 聖職者というとお金に疎いか蔑視しがち、というイメージがあります。しかしマザー・テレサは貧困問題の撲滅という目的のために、自分の知名度を活かして積極的に寄付金を募っていました。こんなエピソードもあります。あるとき、ローマ教皇から彼女にリンカーン・コンチネンタルが寄付されました。彼女はその車を使った? いいえ。では売った? いいえ。なんと宝くじを催し、一等の景品にその車をあてたのです。結果として、高級車の値段を大きく上回る活動資金を得たのです(中井俊已著『マザー・テレサ 愛の花束』PHP研究所、2003年)

 2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスも、マザー・テレサと同じく貧困問題に取り組んでいます。しかし大きな目的は同じでも、彼が選択した手段はまったく異なります。彼がグラミン銀行を通じて人びとに与えたのは、「援助」ではなく「ビジネスチャンス」でした(ニコラス・サリバン著『グラミンフォンという奇跡「つながり」から始まるグローバル経済の大転換』東方雅美、渡部典子訳、英治出版、2007年)

山の頂にいたる道は一本ではない

 目的と手段の関係は、山頂とそこにいたる道のようなものです。下から見上げているときには目の前の道しか見えません。ところが登ったあとで上から見下ろすと、多くの道があったことが分かります。

 図2-1の、今立っている場所からA地点に登って行くためには、稜線をたどっていくのが妥当そうに思えます。しかしA地点に着いたところで周りを見下ろしてみると、違った風景が見えてきます。A地点にたどり着ける道は他にもたくさんあることを発見するはずです。

 ここで、もし目的地がB地点であり、A地点は通過点に過ぎないとしたらどうでしょうか。B地点から見下ろせば、そこにいたるルートはさらにたくさん見つかるはずです。必ずしもA地点を通る必要のないことが分かるかもしれません。

 もちろん、山に登る前にその頂に立つことはできないので、すべてのルートを事前に知ってから出発するわけにはいきません。ただ、よく観察することでルートの選択肢が広がります。想像力を働かせることで、起きるかもしれない事態に備えられます。

 同じように、目的から考え下ろしたからといって、結果的に最善となる選択が事前に分かるわけではありません。しかしわれわれは往々にして目的をあいまいにしたまま選択を行い、目的を考えることの積み重ねが自分をどこに連れて行くのかをじっくり考えていません。だから目的をはっきりさせてそこから考え下ろしてみるだけで、選択肢が広がったり、とるべき選択肢が見えてくることが多いのです。

 イギリスの生物学者ピーター・メダワー(ノーベル生理学・医学賞の受賞者)はこのようにいっています。

 「凡庸な問題やつまらない問題は、凡庸な答えやつまらない答えを生み出す。だから、大きく考えることが必要なのだ」と(ゲイリー・ハメル、ビル・ブリーン著『経営の未来』藤井清美訳、日本経済新聞出版社、2008年)。

今日のクリエイティブ・チョイス「まとめ」

 目的の再定義が「創造的な選択」の核心です。目的に焦点を当てることで、手段にとらわれずに発想できます。

著者紹介:堀内浩二(ほりうち・こうじ)

株式会社アーキット代表。「個が立つ社会」をキーワードに、個人の意志決定力を強化する研修・教育事業に注力している。外資系コンサルティング企業(現アクセンチュア)でシリコンバレー勤務を経験。工学修士(早稲田大学理工学研究科)。著書に『「リスト化」仕事術』『リストのチカラ』の文庫化/ゴマブックス)がある。グロービス経営大学院客員准教授などを兼任。


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