【CamiApp×希望点列挙法で考えた】あったらいいな、こんな検索エンジン(後編)アイデア発想実践記(2/2 ページ)

» 2012年04月17日 11時00分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]
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どうすれば、たくさんアイデアを出すことができるの?

 これまで、KJ法ブレインライティング法SCAMPER法TRIZ法カードBS法、そして今回の希望点列挙法とさまざまな発想法を試してきました。その中で感じるのは、「(質はともかく)たくさんアイデアのタネを出せた方が、会議はより盛り上がる」のは間違いないということ。たくさんタネがあるからといって、必ずしも「これだ!」と思えるアイデアが抽出できるとは限らないですが、ある程度の数がないとそもそも議論が活性化してくれません。

 3人共に、短時間で量を出す知恵の絞り方はつかめてきたような気はするので、ではそのためにはどんなことに注意すればいいのか、全員で考えてみました。

(1)表現は、究極まで簡素化すべし

 時間の制約がある中で数多くアイデアを出すには、発想の能力もさることながら、「手短かつ簡潔に表現するスキル」が必要。ていねいに書く、美しい文章をつづる、文法的に正しく表現するなどはいったん無視し、単語やフレーズ(とその組み合わせ)だけで表現することを意識した方がよさそう。

(2)未完のアイデアを恥ずべからず

 アイデアを考えていると、中途半端なモノがたくさん思い付きます。というか、ほとんどがソレです。未完のアイデアしか思い付かず、詳しい説明をする自信がないと、「これは残すまでもないな……」と自己却下しそうになりますですが、ガマンをして書き留めるのです。これを実行するのは、心の奥歯に物が挟まったような不快感を耐えるようで、じつは言うほど簡単ではありません。ここで開き直ることができれば、出せるアイデアの量は急増するでしょう。未完のアイデアが、他のメンバーの想像力で補足され、完成することに期待しましょう。

(3)連想ゲームで効率よく量産すべし

 1つアイデアを思い付いたら、二毛作的にアイデアを刈り取るべく、1人連想ゲームをして膨らませるのです。元のアイデアの左右を入れ替えたり、意味合いを逆転させたり解釈を広げたりしていくと、毎回ゼロから発想するよりラクに量産できます。鷹木さんはこれを意識しており、1つの発想から次、次、そのまた次……へとドミノ倒しのように展開させるのがうまいです。


反省点とメンバーのコメント

 以下、各メンバーのコメントです。

中山

始める前は、TRIZ法やSCAMPER法のような発想の着火剤がないのが多少不安だった。けれど「己の理想、願望に従えばよい」と気楽に取り組んだ結果、我ながらまずまずの発想ができたかなと思う。自分のアイデアがベストアイデアに選ばれるのは、とてもうれしい(笑)。


鷹木

漠然としたアイデア出しの場合、まずは数を出さないとダメなことが多いので、「つまらないアイデア」を意識的に出すようにするのがポイントかな。つまらないアイデアが出つくすと、面白いアイデアが出てくるはず!……と信じてやりました(苦笑)。


上口

1つのアイデアをつい説明しようと長々と書いてしまう癖があるので、今回のように5分という短時間で発想する場合は箇条書きで次々とアイデアを出せればよかった。他の人のアイデアを聞くと自分と似たような願望があって「そういう切り口でもありだな」と思ったり、また聞いたアイデアから新しい発想が出ることもあるので、その点は面白かった。



石井さん監修コメント

 希望点列挙法は、いわばブレストのテーマ設定に近い技法です。既存のAという製品やサービスがあったら、フェーズ1は「あったらいいなこんなA」「理想的なAのアイデア」というテーマでブレストをします。この記事の通りです。フェーズ2は、それらの中でも特に魅力度の高いものを1つ選び、そのアイデアはどうやったら実現できるだろうか、というブレストします。いわば、What系ブレストをして、次にHow系ブレスト、と2段階のブレストをします。これを通じて、「理想的でかつ実現方法のあるアイデア」が創出できます。

 ITの世界でもとても有名な企業でもよく行っています。希望点列挙法という、大上段に構えた呼び方はせずに、単に「ブレインストーミングセッション1→セレクト→ブレインストーミングセッション2」ぐらいの感じの進行プロセスで扱われます。ブレストを2段階に構造化するだけのシンプルな工夫ですが、効果的です。

 普段の1人での企画仕事で「WhatとHowの両方がそろったアイデアを出そう」としてしまいがちですが、着想というのは生まれた当初は未成熟な存在ゆえ、ふと浮かぶ考えは、着想→即却下をたどってしまいます。2段階のブレストの場合は、半分ずつ考えればいいので、生産性が上がります。また(この記事のように)複数人での企画会議の場合、Whatを思い付くのが得意な人Howを思い付くのが得意な人はタイプが少し違うため、メンバーの多様性を生かしやすくなります(How系の人は、前半は口数が少ないですが後半にたくさん貢献します)。

 なお、希望点がなかなか発想でいないという人は実際の所、います。そうした人にとっては、この技法は乾いたサンドイッチみたいな手法に思えるでしょう。面白がり(少し堅い言い方をすると、肯定的心理様式)な人が少ない場合「希望点……って、いってもなぁ」という反応になります。

 物事の理想的な姿を発想するには、大量の多様な良いものを見ていてその要素を目の前の問題に置きなおすような「豊富なインプット&概念適用の柔軟性」がいります。そうではない人には、発想系の手法から示唆となるようなものを提供するとよいでしょう。例えば、TRIZのような発想コンテンツのリッチな分野から引用して(技術的、物体的なものになりますが)、理想性の高いものが持っている特徴を46個提示しておきます(「セルフX」と呼ばれます)。

1:配置する

2:内蔵する

3:調節する

4:試験する

5:電力を得る

6:ロックする

7:清浄する

8:位置決めする

9:規動する(※1 Regulate:規則正しくなるように調整する)

10:支える

11:較正する(※2 Calibrate)

12:付加する

13:開閉する

14:補正する

15:密閉する

16:除去する

17:粘着する

18:開始/停止する

19:偏移する(※3 Bias)

20:調心する(※4 Centre/Center)

21:加圧/除圧する

22:修復する

23:学習する

24:水平にする

25:時間を測る

26:加熱/冷却する

27:穴あけ/ネジ切りする

28:膨らませる

29:混合する

30:破壊する

31:伸張する

32:制限する

33:潤滑する

34:ラベルを付ける

35:注入する

36:発振させる(※5 Oscillate)

37:撹拌する

38:立て直す

39:充填(じゅうてん)する

40:消火する

41:研磨する

42a:鋳込む(※6 金属を溶かして鋳型に流し込む)

42b:含浸する(※7 ゴム、合成樹脂を織物、紙などの組織または構造のすき間にしみこませる)

42c:磨く

42d:照らす

42e:臭いを消す

出典『TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新』ダレル・マン(Darrell L. Mann)著

 これらのうち、検索エンジンの理想性として当てはまるものを挙げていくと、いくつかの案が出ます。

1.配置する→がっかりしたWebサイトはインテンドを下げられる

13.開閉する→検索されたサイトの画面のサムネイルをスライドショー的にゆっくり画面の一部に流しはじめる

25.時間を測る→検索結果をクリックして戻ってくるまでの時間の長さを表示してくれる。ざっと探してゆき、後で有用だったWebページをピックアップするときに便利

 のように行います。


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