「モバイルクラウド」で働き方はどう変わる?モバイルクラウド(2/2 ページ)

» 2013年01月25日 10時00分 公開
[八子知礼Business Media 誠]
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動き回りながら仕事ができる

 企業環境では、具体的にモバイルクラウドでどんなことができるようになるのか考えてみたい。

 ホワイトカラー(事務職、企画職などデスクワーク中心)職種の人々がモバイルクラウドを活用する場合には、これまでに述べてきたようにデスクを必要としないワークスタイルが実現できる。よって、動き回りながら仕事ができるメリットがある。

 モバイルクラウドを活用できるホワイトカラーの仕事のタイプにもいろいろある。例えば経営者やマネジメント層でいえば、ダッシュボードと呼ばれるような、売り上げや地域別の販売量の推移といった経営環境の各種指標や時系列での変化など、今までだとPCを開かなければ見られなかったものが、iPadなどのタブレットやスマートフォンで見られるようになる。すると、現場を把握できていない不安感がなくなり、意思決定も迅速化できるというメリットがある。

 また、今までは社内に戻らないと決裁事項のワークフローの承認ができないなどの話がよく聞かれたが、モバイルクラウド環境ならスマートフォン上でワークフローを承認してしまうことができる。

 そうすると、会社の中で他の部門を待たせない効果がある。稟議書が回るスピードが格段にアップするのだ。上司が出張に行ってしまったために稟議が滞ってしまうなどといったことは日本企業ではいまだによく聞く話だが、モバイルクラウドではこのような意思決定にかかわるスピードの遅さを確実に解決できる。

ビジネスがスピーディかつリアルタイムになる

 会議用に配っていた紙を、今ではすべてタブレットに代替した企業もある。会議やプレゼンで出席者に配られる資料が非常に多かったり、該当する資料を探すのが一苦労だったり、また会議中にどの資料を説明しているか分からないといったことが発生したりしていた。

 モバイルクラウドを使ってタブレットに表示すれば、会議やプレゼンが完全にペーパーレスになるし、会議後の検索も容易だ。また議事進行中には勝手に他のページを見られないように、主催者が中心となってページを中央で一括制御して進めるといったことも可能になる。何も社外でのみモバイルクラウドが必要になるわけでもないのだ。

 顧客情報もそうだ。ホワイトカラー職種の人々からすると、顧客情報もしくは社内のナレッジを出先やお客様の店舗内でも参照できるようになる。

 ナレッジとは、例えば過去の事例や、展示イメージなどのことである。具体的にいえば、飲料メーカーがスーパーの店頭でどんなふうにノベルティを置くかとか、棚にどうやって大量の飲料を陳列するかといった際に、過去の事例を写真で参照したり、「ここはこんなふうに工夫した」といったような事例集を参照したりすることが考えられる。

 これも今までなら、社内のデータベースにアクセスできる人でないとなかなか見られなかったのが通例であった。ところが、モバイルクラウドを導入することによって、実際の現場で迷っている、困っているときにこそ、モバイルデバイスから過去の事例データベースを探るとともに、最新の事例についてはその時期に最も成功している他店舗での事例を迅速に参照して店頭業務に反映できるメリットがある。

筆者紹介:八子知礼(やこ・とものり)

松下電工、外資系コンサルティング会社などを経てデロイト トーマツ コンサルティングに入社、2011年より通信・メディア・ハイテク業界担当リーダー。

通信キャリア、サービスプロバイダー、ハイテク業界を中心に、新規事業戦略立案、CRM/顧客戦略、商品/サービスマーケティング戦略、チャネル戦略の策定、バリューチェーン再編を中心としたプロジェクトを多数手掛けている。

著書に『モバイルクラウド』『図解クラウド早わかり』、共著書に『図解 ロジスティクスマネジメント』がある。

週刊BCNの連載「視点」の「モバイル」担当、隔月寄稿中

新世代M2Mコンソーシアム理事

CUPA(クラウド利用促進機構)アドバイザー

MCPCモバイルクラウド委員会/モバイルシステム活用委員会アドバイザー


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