「発想と行動へのポイント」〜システム化計画/実施段階(後編)〜
従って――
- プロジェクト運営の事後評価について、関係者全員で話し合おう。経験の共有をしよう。そうすれば、各スタッフや組織の能力を着実に高めてゆける。
情シスのイロハ その19
ユーザー企業のIT化の仕事は、まず「人」と「組織」が相手となる仕事である。
従って――
- パソコンの画面よりも人を好きになろう! 人と向き合う時間を増やそう!
- 問題も答もオフィスの机の上にはない! 業務の現場、ITの現場に足を運ぼう。
- 世の中は動いている。狭いIT島に閉じこもらず、広い世界に関心を向けよう。
情シスのイロハ その20
仕事を能動的に考えないと、ローリスクでもノーリターン、「自律」も「自立」もかなわない 。加えて、同じ課題でも受身の仕事にしてしまうと「できて当たり前」という減点主義が評価基準になる。相手の求める通りにはできないのが普通であるから、採点はいつもマイナスだ。達成感がなく面白くない、言い訳ばかりの毎日になる。
従って、以下のことを心掛けてみよう――
- 人は「言葉」で考える。「言葉」が行動を支配し、行動がやがて「習慣」や「常識」を作る。IT関係者が1日に何度も使っている「対応」という言葉を使うのを、まずやめてみよう。「対応」は典型的な受身の姿勢を表す言葉だ。
- 課題は「どのように行うのがベストなのか」「妥当なのか」をまず考えよう。次に、自分たちがいまできるさまざまな方法を考えてみよう。そして最後に、「両者のギャップの原因が何なのか」をメモしておこう。年に1度、全員でこのメモを持ち合わせて話し合えば、これから時間をかけてでも取り組むべき「組織の問題」や「個人の向上のための目標」が見えてくるはずだ。
- 「やる」と決めたことには、達成目標を自分で設定しよう。それで結果を評価してみよう。 自分でPDCAを回そう。「できるだけのことはやってみます」というのは逃げの姿勢だと認識しよう。
情シスのイロハ その21
IT部門にIT化の仕事があるように、経営トップには経営トップの仕事がある。IT化について「トップを含めた経営層に理解を求め、関係部門に説明して納得を得て、成果を出してゆく」のはIT部門の責務である。IT化はトップのためでもなければ、誰かほかの人のためにやって“あげて”いるわけではない。
従って――
- 「トップに理解がない」「関係部門の協力が得られない」「〜してくれない」といった泣き言はもうやめよう。「理解がない」のなら、理解をしてもらえるよう努力をするのも仕事のうちだ。関係部門に協力を求めるのも、自部門の仕事のアピールもまた、日ごろからの大切な仕事である。不満を言う暇があれば、1つでも2つでも、そんな努力にエネルギーを使おう。大人になろう。
- 「トップの理解、支援」とは、自分たちが期待したり認識したりしているものとは、もう少し別の次元のものと考えよう。少なくとも、「関係部門の協力獲得」などを“IT部門に代わってやってくれる”ようなことではない。
情シスのイロハ その22
マネジメントや計画・企画の仕事において、「深く考えること」はすなわち「広く考えること」である。考えを深めてゆくに従い、その問題にかかわりのあるいろいろな分野の、いろいろな事柄や、より多くの利害関係者が見えてくる。直線的思考で済ませてしまうと、後日、思いも掛けぬ所から横やりが入ったり、やったことが原因で新たな問題が発生したりして、いわゆる“モグラ叩き連鎖”が起きてしまう。
従って――
- 日ごろから、幅広い分野に関心を持ち、知識や理解を深めておくことが大切である。そのために、まずIT以外にもう1つ、何か分野を決めてじっくりと勉強してみよう。勉強すれば関心が持てる。関心を持っていると情報が自然に集まる。2つの分野を組み合わせてみるだけでも新たな観点が得られる。幅広い関心や知識の有効性・必要性が実感できると思う。
- 狭い範囲の問題でも良いから、一度、トコトン考え詰めることを試してみよう。「これで終わり」と思っていた先にも、まだまだ考えられる問題があることを経験してほしい。何度、壁を突き破れば、「どの程度の水準の結論」に到達できるのか、壁の突き破り方や「努力と成果の関係」を感覚としてつかめると思う。また、他の問題においても、他人の話を聞きながら、その人が「その問題をどの程度まで深く考えているか」の感触がつかめるようになってくる。
情シスのイロハ その23
業務プロセス改革や、今後発生してくるより複雑な問題の解決には、対象の構造を論理的に捉え、問題の解決法を論理的に考え、それらを他の人に論理的に説明できる能力が強く求められてくる。
そのために――
- システム分析、システム構成、最適化の概念と手法をマスターしよう。
- そのうえで、日ごろ使っている「システム」という言葉の意味や仕事の「やり方」「考え方」がシステマティックなものになっているか、考え直してみよう。
- 自ら「事実」を見る機会を増やそう。「何が問題なのか」を自分の頭で考えてみよう(特にWeb検索や、ハウツーものの書籍、セミナーなどに依存して、目先の「答え」を安直に求める習慣を続けていると、問題発見のための「観察力」、本質を見抜く「洞察力」、最適な解決策を幅広く考える「問題構成力・解決力」が退化してゆくから要注意だ)。
- 問題・課題は、解決できる形に設定しなければならない。いろいろな問題について、複数のとらえ方と複数の解決方法を考える習慣を付けてみよう。
さて、いかがだっただろうか。もし思い当たることがあるようなら、前回同様、ここに書いたことを自分の中でそしゃくしたうえで、ぜひ心掛けてみてほしい。
profile
公江 義隆(こうえ よしたか)
情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)、情報処理技術者(特種)
元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にかかわる
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