クローン携帯をめぐる、“真偽”の判断通信業界・禁断の謎に迫る(後編)

» 2004年02月03日 17時56分 公開
[細田時弘&杉浦正武,ITmedia]

 前回は、クローン携帯が存在する可能性に言及した。クローン携帯が悪用された場合、一般人に被害が及ぶことも十分予想される。これを読んで、強い不安を感じたユーザーもいるかもしれない。

 ただ、現実に「クローン携帯」として、世間で騒がれている事例のすべてが、“本物のクローン携帯”かというと、多少の疑問も残る。今回は、クローンを取りまく現状について、もう一度考えてみたい。

残る「そのほかの可能性」

 一般に、クローン携帯の騒ぎは、ユーザーが携帯電話の請求書を見て、その額の大きさに驚くところから始まる。自分はこんなに使っていないはずだ、これはクローン携帯に起因するトラブルではないか――というわけだ。

 だが、単に“想像以上の料金を請求された”というだけなら、クローン携帯以外にさまざまな理由が考えられる。誰でも考えつくのが、「ユーザーの勘違い」というもの。

 近年、携帯電話のアプリケーションも高機能化し、それなりの容量のパケットを扱うようになった。この状況下では、気付かないうちに何万円ものパケット料金が発生することもあり得る。身内の人間が、自分の携帯電話を無断で使用し、それがもとで高額の料金を請求された可能性もある。

 これに関して、興味深い報告がある。NPOの日本情報保全協会は、クローン携帯の問題について関心を寄せ、ユーザーの相談を受けると共に、各種調査を行っている。

 同協会のサイトを見ると、「寄せられる高額パケット通信の相談のうち、一番多いのは『子供が使っていたのだが、そんなに使うはずはない』というもの」という記載がある。昨年末の時点で、半分以上はこのケースだという。

 中には、「授業時間中だから、使えるはずがない」と主張する相談者もいるとのこと。これに対し、同協会では「それでは、その時間の担当の先生に、『○○さんは確かに携帯を使っておらず、授業中もまじめに勉強していた』と一筆もらってほしい」とお願いをしてみるのだという。すると、後で子供が「実は使っていた」と申告する……というケースも、多々あるようだ。

 ほかに考えられるのは、キャリア側の誤課金の可能性。携帯キャリアも課金システムが正常に動作するよう、最善の注意を払っているだろうが、やはり人間の作ったものである以上トラブルは起こり得る(関連記事その1その2その3その4その5)。キャリア側の責任でなくとも、端末それ自体に不備があるケースもあるかもしれない。

 こうした可能性を疑っていくと、世間で騒がれているものの9割がたは“偽クローン携帯”ではないかと考えている。それらすべてに該当しないもの――それこそが、「クローン携帯」だ。

海外での事例

 クローン携帯は、韓国や台湾など、電話の先進国では必ず問題になっている(朝鮮日報の報道参照)。

 その発生順序は どの国でも一緒だ。まず最初に、電話マニアの手によって携帯電話の内部構造が解析される。それをもとに携帯電話を開けて、IDを記憶している部分を直接書き直すという、純ハードウエア作業によるクローン製造法が開発される。

 ハードウェアからシステムが分かると、通信のためのプロトコルが解析できるので、今度はキャリアと同じようにシリアル通信で内蔵されているEEPROMを直接書き直す方法が開発される。

 ただ、海外の事例を見ると、日本のユーザーが懸念するのとは異なる使い方をされているケースもある。

 すなわち、台湾や韓国では「自分で自分のクローン携帯を所有する」という事例もあるのだ。自宅に1台、会社に1台 自動車に1台、という具合で所有する。この場合、社会的には他人にそれほどの被害をもたらさないため、黙認されていたという状況もある。この点も、指摘しておきたい。

まずは、確認作業を行ってみよう

 ここまで読むと、実際にクローン携帯の被害に遭っていても、勘違いかどうか分からなくなるユーザーも出てくるだろう。

 にわかに信じられないほどの請求を受け取り、自分の端末のクローンがあるのではと疑いを持った場合に、何をチェックすべきか? ここでは、2つの方法を紹介したい。

 まず、自分の携帯電話の電源を切ってみよう。その際、留守番電話サービスなどは解除する。この状態で、自分の携帯に電話をかけてみる。仮にプルプルと呼び出し音が鳴れば、クローンの可能性が考えられる。

 PCを所有しているなら、定期的に自分の携帯アドレスにメールを送信してみるのもいい。携帯電話のサーバは、受信されるとメールが消されてしまう。仮にクローン側で受信されると、「メールが届かない」という現象が発生するわけだ(もちろん、携帯側で受信拒否設定をしていないか、ISPでメール遅延が発生していないかはよく確認すべきだろう [2月4日12時追記] )。この症状がないかどうか、確認してみてほしい。

前編 通信業界・禁断の謎に迫る (終わり)

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