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» 2004年04月01日 16時03分 UPDATE

番号ポータビリティ、議論の帰結先:(後編)MNPで、積み残された課題

ひとまずはユーザーニーズが認められ、導入スケジュールが示された番号ポータビリティ。ただし、今後継続して話し合わなければならない問題も、多く残されている。

[杉浦正武,ITmedia]

 導入への道筋はついたものの、まだ議論すべき部分も多い――。それが、携帯電話の事業者を変更しても、番号を変更する必要がないシステム「番号ポータビリティ」(MNP:Mobile Number Portability)の議論を聞いた上での、素直な感想だ。

 3月30日、総務省の研究会である「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する研究会」は第6回会合を開き、研究会として提出する報告書案をまとめた。この中には、今後の「検討課題」としてひとまずは棚上げされた問題が、いくつか存在している。また、文中には書いていないが今後表面化のおそれがある問題もある。順に、見ていこう。

やはりポイントは「手続きの早さ」

 MNPの課題を考える上で、手っ取り早いのは諸外国の状況を見ることだ。既にMNPを導入した国が、どの点でつまずいたのかを確認すれば、日本のMNPでどの部分が問題になりそうかも分かってくる。

 既に欧州各国は、EU指令に基づき1999年頃から導入が進んでいる状況。米国でも、事業者が必要性を疑問視して訴訟を起こすなどのトラブルもあったが、2003年11月に導入されている(11月25日の記事参照)。アジアでは、シンガポール、香港などがそれぞれ導入している。

 それぞれの利用率を見ると、「(MNPの)手続きにかかる所要時間が短い国では、利用率が高くなる傾向が見られる」(報告書案より抜粋)。

 たとえば英国では1999年の導入当初、番号移転手続きに25日かかっていた。しかしその後、所要時間が7日間に短縮された結果、手数料の低廉化などもあるが利用者数は25%増加したという。

 香港などでは、1999年からMNPを導入しているが、手続き期間が1〜2日間と短いこともあってか、累積で全体の86.3%(約578万人)のユ―ザーが利用している。ちなみに、期間の短さでいえば韓国の「30〜1時間」が目立つ。こちらは2004年1月に導入されたが、早くも全体の1%程度にあたる、30万人が利用しているという。

 こうした事例を見ていると、国内でも手続き期間を短くすることが重要だと分かる。では、具体的にどうするのか。諸外国を見ると、販売代理店などでMNPの利用申請・手続きを“ワンストップで”実現している国が多い。

 それでは日本でも――と考えたくなるが、実現には課題も多いという。「料金滞納者に関する債務情報の取り扱いや、契約解除時に行うべき説明責任を確保できるかどうか、(中略)手続き費用の精算の方法等を慎重に整理する必要がある」(報告書案より抜粋)。現状では“実現可能性も含めて”詳細な検討が必要、との表現にとどめられた。

番号をどう管理する?

 もう1つ、気になるのが番号割り当ての問題だ。現状、携帯電話の番号は090/080に続く3桁が事業者番号として割り当てられ、以下5桁を事業者が割り振るかたちになっている。

 しかし、MNPを導入すれば「本来ドコモの番号だったが、auの契約になった」番号も出てくる。これをどう考えるかも、難しい問題だという。

 「たとえば、ユーザーがドコモからauに乗り換えたとしても、データベース上はドコモが番号管理をしなければならない。すると、他社サービスの実現のための費用を負担する、という事態になる」(NTTドコモ取締役経営企画部長の辻村清行氏)

 これを解決するには、データベース管理のための別組織を立てる必要があるのでは、と辻村氏はコメントする。いずれにせよ、番号割り当ての制度そのものをいじるのかも含めて、検討が必要とされた。

  研究会では、「番号(ナンバー)ポータビリティ」という日本語が、はたして消費者に正確に理解されるかといった議論もあった。

 インボイスの木村育生社長は、いわゆるマイライン導入にあたり、販売代理店の人間が消費者に「マイラインというのは、割引サービスなんです」との誤った説明を行ない、特定のキャリアサービスへの勧誘につなげることもあったと指摘する。

 「ナンバーポータビリティでも、同様の事態が起こるかもしれない」(木村氏)。“ナンバーポータビリティ”ではなく、日本語表記を心がけるべきでないかとした。

 これに対し、同研究会の構成員で、日本経済新聞論説委員でもある関口和一氏は、「日経新聞でも、そうした議論はあって、最初は『持ち運び制度』にしようかという案が出た」とコメント。「しかし、携帯は持ち運べるのに、この上何を持ち運ぶんだということになって、結局は意訳である『番号継続』などの表記にした」。

 結局は、研究会の座長である東京大学名誉教授の齊藤忠夫氏が、「そういうのは新聞が得意なこと」とコメント。メディアの表記にまかせるべきとの見方を示した。

メールはどうなる?

 ユーザーとして気になるのが、「メールアドレスのポータビリティはどうなるのか」だろう。2003年11月には、「メールアドレスのポータビリティは時期尚早」との声が上がっていた(2003年11月の記事参照)。

 報告書案を読むと、当時と同様に実現には後ろ向きであることが分かる。まず、ドメイン名を引き継ぐ必要があることから、「携帯電話に限らないインターネットサービス全体の大きな問題がある」。

 さらに、「音声通話の場合と違って、転送サービスを利用すれば、(中略)メールを自動的に移転先のメールアドレスに転送することができ」る、との記述もある。このため、番号ポータビリティほどユーザーニーズがないという。番号ポータビリティとは切り離して考えるべきとの意見もあり、議論は深まらなかった。

 ただし、この記述については第6回の会合で「『転送できるから不要』などと言い出したら、番号ポータビリティでも同様ではないのか。MNPとは話がそれるが、メールアドレスのポータビリティについては新たな策を講じる必要もあるのではないか」(インボイスの木村社長)との意見も聞かれた。

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