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» 2004年05月14日 16時10分 UPDATE

Opera搭載「AH-K3001V」が目指したもの

iモードならば有料のコンテンツでも、Operaを搭載し、PCと同じインターネットサイトが見られる「AH-K3001V」ならば無料で、高品質なサービスが受けられる。キャリアのポータルビジネスを揺るがす可能性さえもつAH-K3001Vは、Operaでフルインターネットを快適に利用することを目指して開発された。
◆キーワードは「X+V」? OPERAが携帯を見据えて進める次世代ブラウザ

[斎藤健二,ITmedia]

 日本で初めて「Operaブラウザ」を搭載した携帯、DDIポケットの「AH-K3001V」が発売になった(4月22日の記事参照)。開発のポイントは、第一に“フルインターネット”。

 「ユーザーにメリットがあるのはどういうサービスか。その結論がフルインターネットだった」と、企画担当の京セラ・事業推進部事業推進課マーケティング係の富家八栄子氏は話す。

kcera1.jpg AH-K3001Vの開発に携わった京セラのメンバー。左から国内営業部の細川喜玄氏、プロジェクトリーダーの通信システム機器第1事業部の大森光氏、企画担当の事業推進部事業推進課マーケティング係の富家八栄子氏。中央下は、無線アクセス事業部国内営業部の責任者、木村哲夫氏

すべてはフルインターネットのために

 京セラが、携帯でフルインターネットの可能性を模索し始めたのは2002年末のことだ。iモード以後、“携帯インターネット”といえば、携帯に特化させた専用のページを見ることだった。小さな画面、遅い通信速度、貧弱な入力環境という制限を考えれば、当時はこれが最適な解だったのかもしれない。

 しかし、携帯にとらわれず、PCと同じWebサイトを見られるサービスへのニーズがあるのは間違いない。「フルインターネットができるブラウザは何か探してきた。その答えがOperaだった」(富家氏)。

 フルインターネットという特徴を活かすため、「表示系のデバイスは重視している」とプロジェクトリーダーの通信システム機器第1事業部の大森光氏。携帯に比べてコストに厳しいPHSでは、何でも高機能な部品を使えばいいというわけではない。例えば「QVGA液晶にするか、カメラを31万画素にするかは最後まで議論があった」(大森氏)と言う。

 日本の携帯では初採用となるOperaも、決して搭載が簡単なものではなかった。「Opera自体を動かすのに3Mバイトくらいのメモリが必要。(AH-K3001Vで)最も大きなアプリケーションだ」(大森氏)。ブラウザ動作中は、搭載したアプリCPU「SH-Mobile」を最高速度で動かしているというから、携帯向けとはいえOperaを実装する難しさが分かる。

フルインターネットがもたらす衝撃

 携帯からフルインターネットが使えることは、特にモバイルコンテンツ業界には大きな衝撃をもたらす可能性がある。「いつも自宅で見ているサイトが、自宅に帰る前に見られる」と富家氏。普段使っているサイトの“携帯版”を探す必要なく、そのまま閲覧できてしまうのだ。

 さらにいえば、モバイルコンテンツの課金ビジネスを揺り動かす端末だともいえる。Operaブラウザが携帯で普及したら、コンテンツ課金ビジネスは大きな方向転換を迫られる──そのくらいのインパクトを持っている。

 携帯版であれば月額数百円かかるコンテンツも、PC版ならば無料かつ高機能だからだ。電車の乗り換え案内コンテンツも、地図サービスも、各種ニュースも──いわゆるPC向けのコンテンツが無料で利用できてしまう。

 さらに通信費も、AirH"の定額制プランを利用すれば固定料金だ。

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「『Operaだから見えない』というサイトには出会ったことがない」と富家氏。Macromedia Flashこそ動かないが、HTML4.1に対応、SSLやJavaScriptも動作する。グラフ描画も問題ない。文字はインライン入力可能で、予測候補も表示される

 この点を考えると、コンテンツポータルビジネスに力を入れてきた携帯各社の場合、そのビジネスモデルを突き崩すフルインターネットブラウザを採用するのは難しいのは間違いない。

 京セラ・無線アクセス事業部国内営業部の責任者、木村哲夫氏はフルインターネットサービスについて、「定額制などDDIポケットのサービスを最大限に生かせる端末」だと話す。Operaブラウザ搭載携帯は“DDIポケットだからできた”とも言えるかもしれない。

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タブに分けられたブックマーク。待受画面から数字を入力してOperaボタンを押すと、ブックマークに登録したサイトにダイレクトにアクセスすることもできる

PDAに取って代わる

 AH-K3001VはPHSではなく、電話機型のPDAだと見る見方もできる。液晶サイズこそ2.2インチとPDAに比べれば小さいが、解像度はQVGAで同等。通信環境を内蔵している分、Webブラウズは容易だ。

 「同じことをやれてもPDAは大きい。その意味ではPDAに取って代わる」と大森氏。社内システムにアクセスする用途にPDAが使われることも多いが、Webベースのアプリケーションを使う限り、AH-K3001Vで十分だ。

 スケジューラなどPIM機能は確かに貧弱だが、Webベースのカレンダー/スケジューラを利用できる。社内のグループウェアに簡単にアクセスできることを考えると、端末内にスケジューラを備えるよりも実用性は高いともいえる。

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AirH" PHONEのもう一つの特徴である(2003年2月27日の記事参照)、POP/SMTPアクセスも「AH-K3001V」では強化された。受信するメールアカウントをあらかじめ設定しておくことはもちろん、毎回受信時に指定することもできる。会社や個人のメールも、これ単体で閲覧できる

 DDIポケットの契約者数は約300万。うち、音声端末の利用者は150万人程度だ(4月15日の記事参照)。“新しいPHS端末”とだけ捉えたのでは市場は小さく見えるが、フルインターネットサービスの可能性を考えると、iモードなどのインターネットサービスのヘビーユーザーや、PDAからインターネットにアクセスしていたユーザーも取り込む可能性が十分にある。

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