世界の加入者1000万突破、「経過は順調」とUMTS会長

» 2004年10月25日 18時24分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 10月20日と21日、英ロンドンにおいて「UMTS Congress 2004」が開催された。世界的に3Gサービスの提供に向けた気運が高まる中、関係者らがUMTS(2003年3月の記事参照)にかける期待も大きい。

 欧州では、オペレータ各社の3Gライセンス取得による負債が後の通信バブルを引き起こしたこともあり、3G展開が遅れていた。しかし2月に通信最大手の英Vodafoneがデータ通信カードで3Gサービスをスタートするなど、今年に入ってサービス立ち上げの兆しが見えてきた(5月26日の記事参照)

 基調講演に登場したUMTS Forum会長のジョン・ピエール・ビィエネメ氏は「3G/UMTSは順調」というメッセージを打ち出した。

世界のUMTS/3G加入者は1000万人、うち日本が65%

 2004年8月末時点で世界24カ国46ネットワークのUMTS/3Gサービスが稼動しており、加入者は全世界で1000万人の大台を超えた。加入者のうち65%を占めるのがドコモとボーダフォンで、欧州が31%だ。欧州で最初に3Gサービスを開始したハチソンの子会社英3(スリー)は、加入者が120万人に達したという(5月24日の記事参照)

 UMTS/3Gサービスは、世界24カ国46ネットワークで稼働


 世界のトップ10オペレータのうち、8社がUMTSを開始、あるいは開始予定

 まだ普及の初期段階にある3Gサービスだが、その中にはいくつかのトレンドが見える。ビィエネメ氏が挙げるのは「パーソナライズ」「オペレータによるポータルサービスの増加」「データ通信カードに代表されるビジネス顧客」の3つだ。

 パーソナライズとは、ユーザーがコミュニケーションやアプリケーション、エンタテインメントなどの要素を、嗜好に合わせて自分仕様にしたい──というニーズ。

 オペレータが各種サービスの統一窓口を提供するポータルは、ドコモの「iモード」の成功を受け、ほかのオペレータも踏襲している。有名な例としてはVodafoneが世界展開する「Vodafone live!」がある。データ通信カードは、欧州でブームを呼んでいる3Gサービスで、3を除くほぼすべての欧州オペレータがデータ通信カードで3Gに参入している。

 またビィエネメ氏は、地域により3G導入のプロセスが異なることにも触れた。日本における3Gは2Gの延長であり、ユーザーにとっては既存サービスからの“アップグレード”の感覚だ。韓国では、オペレータが3Gを全く新しいサービスと位置づけており、3Gを意識したブランディングが行われているという。3G市場が立ち上がりつつある欧州ではその中間を取るだろうと同氏。3Gで新規参入した3は韓国型といえるし、大手英VodafoneはGSM/GPRSと同じポータル名に“3G”を付けた「Vodafone live! with 3G」というブランドを発表している。

 地域差はあるものの、普及のポイントは同じだとビィエネメ氏。「オペレータとコンテンツプロバイダのバランスが取れていることが、日本と韓国の成功の原因」。また欧州では、EUの規制などからコンテンツの著作権管理(DRM)が重要になると指摘した。

GPRSや無線LANとの組み合わせたデータ通信サービスも〜欧州3G

 またサービスの現状についてビィエネメ氏は、課金、端末、ネットワークの観点から説明した。

 日本でKDDIがパケット定額制を開始(10月22日の記事参照)、ドコモも後に続いたように(3月24日の記事参照)、各国のオペレータとも課金面の模索を続けている。プリペイド加入者が多い欧州では、ターゲットユーザー層の違いもあり、データ通信用途がブームだ。データ通信カードでサービスインしたオペレータ各社は現在、提供方法で試行錯誤を重ねている。例えばGPRSとセットにしたり、無線LANアクセスと組み合わせたオペレータもある。

 一部地域では既に値下げも見られるなど、プロモーション方法もさまざまだ。利用可能なデータ容量を2倍にしたVodafone、3カ月の期間限定で容量を拡大したOrange(5月24日の記事参照)など、あの手この手でビジネスユーザーにアピールを図っている。音声サービスでは、3が通話とSMSを組み合わせた3種類のセット価格やプリペイドを提供するなど、料金プランのバリエーションを増やしている。

 端末のラインアップも重要なポイントだとビィエネメ氏。FOMAの離陸も英国で3の加入者数が急激に伸びたのも、転換点には端末ラインアップの拡大が関係しているといわれている。現在、UMTS端末は世界に75機種あり、「クリティカルマスに達しつつある」(ビィエネメ氏)。特に最新の端末は、バッテリー寿命もサイズもレベルの高いものになっており、「ユーザーを十分にひきつけられるのではないか」という見方だ。

 ネットワーク面については「GSMオペレータにとって、UMTSはネットワークなど既存技術の最適化により実装コストを最大50%削減できる」と述べ、大きな障害ではないことを強調した。

 端末、ネットワークなどUMTSサービス開始に必要な基盤が整ってきていることから、ビィエネメ氏は「欧州では今年末から来年前半にかけて、主要オペレータのほとんどがUMTSネットワークを(データ通信カードだけではなく)一般消費者に向けて開放(サービス開始)するだろう」と予測している。

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