「どこまでやれば気が済むのか」〜機構設計者をぼやかせた「W22H」(1/2 ページ)

» 2004年12月03日 01時24分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 「多機能ながらコンパクトに」「ほかとは違う個性的なデザインに」──携帯電話に求められる要求は高くなる一方だ。

 そんな中、開発現場の話を聞いていてよく話題に上るのが、デザイナーと機構設計者との攻防。高い要求を満たすために尽力しているのは両者とも同じだが、「どこで折り合いをつけるか」が問題だ。開発期間やコストが限られている携帯電話では、それも重要な要素になる。

 日立製作所の「W22H」(11月16日の記事参照)もこの例に漏れず、現場では激しい攻防が繰り広げられたという。しかし、当時の様子を話す開発陣のやりとりはいたって和やか。デザイナーがツッコミを入れ、機構設計者がぼやくという、漫才のような流れで話が進んだ。

 「どこまでやれば気が済むのか」と、機構設計者をぼやかせたW22Hのこだわりを、順に見ていこう。

広がりのある間接照明のような光り方

 まずこだわったのは、着信ランプの光り方だ。最初にリリースした「W11H」(10月22日の記事参照)は背面のカバーの下からライトを光らせ、「優しくやわらかい光」を演出。W22Hはスライド部分を光らせることで、間接照明のような効果を狙った。

 ルミナススリットと名付けられた着信ランプ。着信時にはスライドの隙間がおくゆかしく光る

 LEDは上面の方向キーの裏側に1個装備され、導光板で光が広がるようにしている。「最初に取り付けたときは(光が)点みたいに小さかった。もっときれいに光らせてほしいと頼んだ」(日立製作所ホームソリューションデザイン部の専門デザイナー、岩間徳浩氏)。

 しかし「導光板を付けても、なかなかうまく広がってくれなかった」とカシオ日立モバイルコミュニケーションズ開発設計本部の下山田和郎氏。そこで導光板にギザギザを付けて光が広がるようにした。「乱反射させながらも、光を下側に集めなければならない。そうしないと余計な光が周りに拡散してきれいに光らない。反射のさじ加減が難しい」(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ開発設計本部の下山田和郎氏)。

 よく見るとギザギザがついているのが分かる


 開いたときにもきれいに光るように、ダイヤルキーの上部に斜面をつくっている

 きれいに光らせるための工夫はほかの部分にも及ぶ。ダイヤルキーを取り囲むUの字の部分は、スライドの滑りをよくしたり、滑らせたときにキズがつかないようにするためのものだが、ここにも光を反射させる処理を施した。「鏡面のような処理をしている。この部分もうまくデザインの一部にして光を効果的に拡散させた。これがなかったら、隙間の黒い部分がきれいに光ってくれない」(岩間氏)

 滑りをよくするために設けられたダイヤルキー面のUの字部分も、光を反射させるために鏡面のような処理を施した

滑らかなスライドのための工夫

 W22Hはバネを使った「スライドアシスト」機構を備えているが、さらにスライド部分の見映えや手触りにも配慮している。「折りたたみ型と変わらないダイヤルキー面のレイアウトとハンドリングには気をつかった」(岩間氏)。

 多くのスライド端末は、側面からくわえ込むような形でスライドさせているが、「この機構では側面にレールが来てしまい、ハンドリングするときに違和感を覚える。脇にレールがあるのは避けたい」(岩間氏)。

 「“指にレールが触るのはやめて”といわれても……どうするのかというところで、悩みが始まった」(下山田氏)

 下山田チームは裏面にスライド用のレールを持っていき、そこで端末をくわえる仕組みにすることで解決。金属のレールとジュラコンというすべりのいい素材を組み合わせることで、滑り具合も改良した。

 側面からくわえ込む形のスライドの場合、側面に溝ができてしまい、持ったときに違和感を覚えると岩間氏。デザイン面でも、ダイヤルキー部分のレイアウトを折りたたみ型と変わらないようにしたかったため、背面にレールをもってきた

 しかしデザインチームからは、さらなる指示が。

 「最初は金属のレールがむき出しになっていた。これは人でいえば内臓が見えているのと同じ。裏面は使っているときに外に見える部分なので、色を変えてほしいと」(岩間氏)

 「注文が多いんです……」(下山田氏)

 スライドのレールは裏面に。ダイヤルキー面や側面に溝が出ない構造だ

基板やパーツの配置が難しかった〜斜めのスライド

 ボディを斜めにカットする「スラントスライディング」機構がW22Hの大きな特徴。開いたときに重なる部分が薄くなり、文字入力操作がしやすくなるというものだ。

 端末を斜めにカットしたスラントスライディング機構
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