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» 2005年02月07日 15時55分 UPDATE

韓国携帯事情:韓国ユーザーを悩ます「スパム電話」

1日平均1.7本──。韓国では、突然かかってくる“スパム電話”が社会問題化している。政府は規制強化などを進めているが、根本的な解決への道は遠そうだ。

[佐々木朋美,ITmedia]

 「<<最高5000万ウォン>> 当日貸し出し……」。携帯電話にかかってくる、ローン勧誘やポルノ関連の広告電話(SMSも含む)「スパム電話」が急増し社会問題となっている。借金やポルノ以外にも、バーゲンセール、運転代行、出会い系など内容はさまざま。毎日送りつけられる広告メールやワン切り電話、自動音声電話などのスパム電話に、ユーザーたちは悩まされている。死亡事故まで起き、深刻化するスパム電話を撲滅する方法はあるのだろうか。

1本のスパム電話が事故の引き金に

 昨年9月末、ビル外壁ペイント業のイさんの元へ、15階での作業中に1本の電話がかかってきた。急いで取ったもののそれはスパム電話。不意に気が抜けたのと同時に、携帯電話を片手にバランスを失ったイさんはビルから落下し死亡した。

 「高所での作業中、急用は携帯電話で伝えるようにしていますが、次々かかってくるスパム電話のせいでこんなことになってしまいました」。事件から3カ月後の12月末、イさんの同僚チョンさんは青瓦台(大統領官邸)Webページに今回の事件について書き込み、スパム電話の取り締りを政府へ強く訴えた。

 この一件は韓国の人々に、スパム電話被害の深刻さを改めて実感させた。今年1月にはスパムメールの防止方法などを話し合う専用Webサイトまででき、街では「大事な会議中にかかってくるので困る」「成人向け広告が子どもの携帯電話に来るのが心配」といった声が聞かれる。

 情報通信部の調査によると、昨年、韓国情報保護振興会とキャリアに寄せられたスパム電話に関する申告は87万件。これは3万件だった一昨年の30倍近くにもなる。現在のところ1人あたり1日平均1.7本のスパム電話を受けているという調査結果も出ている。それで計算しても、携帯電話の加入者約3700万名へ毎日約5000万件以上のスパム電話がかけられているという推測だ。

スパム電話の特徴とは

 スパム電話の識別番号には「060」が付くことが多い。060というのは、電話を通じて情報提供をする「ダイヤルQ2」のようなサービス。マネーや占いなど内容はさまざまだが、実際は5分の1程度が成人コンテンツが占めており、それらの業者が無差別にスパム電話をかけている状況だ。

 060-600が付く電話番号はDACOM、060-700はKT、060-800はハナロ通信、060-900オンセ通信を経由している。これらの番号から電話がかかってきた際には、各電話会社に遮断要請をすればいいのだが、業者が多すぎて遮断要求が追いつかないのが現状だ。そのため最近は、060から着信があるとそのまま切る人も多い。ところがそれに対抗した業者が、ソウルの家庭電話の識別番号である02などに変えてかけたりするため、電話会社とユーザー、そして業者とのいたちごっこが続いている。

 こうしたスパム電話を許す最大の理由は、やはり個人情報の流出にある。リストがインターネット上などで売り買いされ、2000以上ともいわれる広告業者同士がそれを共有しているという。韓国情報保護振興院不法スパム対応センター(以下、対応センター)という、政府の対応部署はあるものの、着信履歴を写真で撮ったり音声を録音して送らなければならないという手間があるため、普及はしていない。

撲滅に腰を上げた政府の対策とは

 「情報通信網利用促進および情報保護等に関する法律」によると、現在のところメールや電話を通じて広告を配信する場合、タイトルに広告であることと、受信拒否方法を明示することが義務付けられているほか、受信拒否をしたユーザーに、それを再送することはできないとされている。違反者には3000万ウォン(約300万円)以下の罰金が課される。

 しかし深刻化するスパム電話問題に、情報通信部は昨年12月同法を改正し、本格的なスパム電話の取り締まりを決定した。これにより、それまで拒否したい広告をユーザーが申告する「オプトアウト」制だったのが、ユーザーが事前に広告を受けたいと希望しない限り、電子媒体を通じた広告を送ることはできない「オプトイン」制に変わる。

 さらに万一、ユーザーが不法のスパム電話を受けた場合は、対応センターに申告すると同センターが通信事業者を通じて、被害者に電話が行ったことを確認した後、スパムを発送した事業者に過怠料3000万ウォン(約300万円)を課す。来る3月31日から適用される予定だが、これに先駆けた2月から情報通信部はモニタリングを開始、本格的な監視と取り締まりを行っている。

 しかし最近のスパム電話は識別番号を変え無差別にかかってくるだけでなく、サラリーマンたちが仕事後の一杯で酔った状態のときにかけてくる──といった姑息な手まで使うようになった。対策を立てれば立てるほど高度化するスパム電話を、果たして完全に防ぐことはできるのだろうか。

 起きたことを罰するより、個人情報流出を未然に防ぐ対策や、ユーザーの個人情報に対する意識を高める必要性も感じられてならない。そうした点に日本との共通点をも感じられる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。

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