「ウォークマン携帯」が登場したり、日本でも「着うたフル」が300万ダウンロードを記録するなど、「携帯電話で音楽を聴く」という行為は世界的な流行になりつつある。その流れを作った韓国の「MP3フォン」の人気ぶりは以前お伝えした通りだが、最近MP3フォンの元祖ともいえるLGグループが新しい流れを作っている。
韓国では昨年末から今年始めにかけて「MP3フォンの元祖」、CYON(LG電子)が発売したMP3フォンが大きな話題となった。この端末はカメラや大型スピーカーを搭載する、MP3フォンとしてはスタンダードなもので目立った特徴は決して多くない。そんな端末が大ヒットした理由は「オモナ」だ。
LG電子は「MP3フォン」という特徴を強調するため、この端末のCMに新進の女性演歌歌手、チャン・ユンジョンのヒット曲「オモナ」(「オモナ」は、女性が驚いた時などに不意に発する感嘆詞)を採用。
さらにタレントも出演しないシンプルな映像を流すことで、音楽に強い印象を全面に出すCMを放映した。するとこのCMが評判を呼び、端末には「オモナフォン」という愛称が付けられる程の人気に。販売数も1月末には1日3000台、月間では10万台に迫るという韓国では異例の大ヒットを記録した。
一方チャン・ユンジョンは、「オモナ」のヒットで昨年の音楽賞で多くの賞を受賞。さらに端末売り上げに大きく貢献したということで、LG電子から純金製の「オモナフォン」を贈呈されたという。「音楽性」を強く打ち出したいMP3フォンと、(日本同様)注目は低いながらも実力は高い韓国演歌──。「オモナフォン」は、お互いの相乗効果で大きなヒットを生み出したといえるだろう。
「オモナフォン」CM(左)。最初は万華鏡のような画面が「オモナ」に合わせて動いているだけで、自然と音楽に耳を傾けるように。最後の最後になって携帯端末が映し出される。※
LG電子がMP3フォン端末の元祖なら、キャリアとしての元祖はLG Telecom(以下、LGT)だ。こちらも引き続きMP3フォンに注力しており、他のキャリアのCMを比べてみても、LGTのMP3フォンに関するものの比重が高い。
そんなLGTが打った次の一手は、「普及版MP3フォン」だ。MP3フォンの多くは高機能が売りとなっているものが多く、端末価格も50万ウォン(約5万円)程度と高額。しかし新たにLGテレコムが投入する「LT7000」は、36万3000ウォン(約3万6000円)とこれまでと比べ非常に安いのが特徴だ。
この端末は東芝と提携して開発されたもの(販売はパンテック&キュリテル)で、18曲まで再生可能なMP3プレーヤー機能に加え、26万色表示のQVGA液晶を搭載するなど比較的高性能ながら、既に海外向けに販売された端末をベースに使用したり、メモリ容量(75Mバイト)やカメラの画素数(33万画素)を抑えたりすることで低価格を実現している。
LGTは今後もMP3フォンに注力する方針だ。今年発売される端末の80%以上にMP3機能を搭載する予定であるほか、同社が運営する音楽配信サイト「musicON」でも、今年早々からコンサートの協賛を行ったり、MP3フォンプレゼントなどといった継続的なMP3普及キャンペーンを行っている。現在はホワイトデーにぶつけた「ホワイトカップルパーティ」と称したイベントが進行中で、musicONで音楽をストリーミング鑑賞後、ペアの食事券を応募したり、愛のメッセージを送った人に抽選でカップル携帯端末が当たる内容となっている。
CYONのサイト上で行われているアンケートによると、携帯端末で最もよく使う機能として、カメラ(522名)、SMS/MMS(346名)、モバイルバンキング(96名)を抑え、MP3が816名でトップに躍り出ている(3月6日現在)。
この結果を見るまでもなく、今後もMP3フォンの人気は続く見込み。今年4月にはmusicON、MelON(SK Telecom)に続きKTFも音楽配信サービスを開始予定で、3キャリアが音楽配信でもぶつかることとなる。LGTのユニークかつ斬新な戦略に、他2キャリアがどう対抗するのか。韓国は今年もMP3フォン市場が熱くなりそうだ。
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