ケータイ小説の「女王」が企業から注目される理由(1/3 ページ)

» 2005年06月10日 20時28分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 ケータイ小説の分野で、数々のヒットを飛ばしている女性作家がいる。彼女は、2つの方向から注目を浴びているようだ。1つは、彼女の作品のファンから。そしてもう1つは、マーケティング活動としての携帯小説に注目する企業から。

 女性作家の名前は、内藤みか氏。携帯サイト1日7万アクセスの実績を持ち、一部で「ケータイ小説のクイーン」の異名をとる。内藤氏に携帯小説を執筆する難しさと、なぜ企業から注目が集まっているのかを聞いた。

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先細りの出版業界で、見つけた「生き残り策」

 携帯小説を書くようになったきっかけを、内藤氏は「生き残るための策」だったと笑いながら話す。

 昨今、出版業界は市場の規模が縮小しているといわれる。本は売れず、文芸誌の勢いにもかげりが見える。「ある文芸誌は、厚さが3分の2になってしまった。偉い人(文豪)の作品を載せるだけでせいいっぱいで、私のような30代の若手作家が小説を載せるスペースがない」

 どうすればいいか、と模索していたとき、声がかかったのがケータイ小説というジャンルだった。2003年の9月に「新潮ケータイ文庫」に作品を掲載したところ、特に宣伝しなかったにも関わらず2週間でアクセス1位になったという。

 「そこで編集部から召集がかかって、これは連載できると。それで2003年12月に連載を開始したのが『いじわるペニス』という作品」

 29歳の女性が、さびしさをまぎらわせるように男娼を買うというストーリーだったが、これが好評を博した。PVは1日1万アクセスを記録し、累計で70万アクセスを達成。編集長からは「人気が落ちたら、即連載終了だ」とおどされたが、人気は衰えることなく、作品は最終的に単行本化されている。

 「単に、官能小説だからウケたんだろう」と冷ややかな見方もあったが、続けて執筆した携帯小説「ラブリンク」も1日1万3000PVを叩き出す。こちらはアダルトな表現を抑えたにも関わらず、最終的に累計アクセス数が134万にまで達した。

 「それで、周囲は批判することをやめた。その後、6社から連載のオファーがきた」

“携帯向けに書く”ときの工夫とは

 もちろん、誰でもこうしたケータイ小説を書けるわけではない。実は内藤氏は、22歳からスポーツ新聞の官能小説などを手がけており、10年のキャリアがあった。しかし携帯向けに書くときは、文体を工夫したという。

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