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» 2006年07月25日 15時50分 UPDATE

携帯+腕時計の未来を探る(4):腕時計型端末に垣間見える“ビジネス”の難しさ (1/2)

コンセプトと製品の“でき”はよいが、ビジネスとしては成り立たない──。これが腕時計型デバイスの多くが抱えてきたジレンマだ。腕時計型端末が市場に受け入れられるための打開策はあるのか。

[江戸川,ITmedia]

 腕時計型の製品はこれまでいくつも市場に登場してきた。そのジャンルもテレビ、PC、PDA、GPS、カメラPHS音楽プレーヤーなど多岐に渡る。

Photo 左からエヌエイチジェイの“腕テレビ”「VTV-101」、ドコモの腕時計型PHS「WRISTOMO」、腕時計型MP3プレーヤー「リストオーディオプレーヤー WMP-1V」、腕時計型デジタルカメラ「リストカメラ WQV-1」

 これらの製品に共通するのは、登場時はいくらか話題になるものの、いつの間にか市場から見かけなくなるという点。腕時計型端末は市場に受け入れられない宿命なのだろうか。

腕時計型製品の“ジレンマ”とは

 腕時計型端末の多くは、四角をベースとする大きめなサイズの筐体を採用する。これは四角いディスプレイの形状に合わせたものであると同時に、内蔵する基板の形状や実装スペースの有効活用化を図ったものだ。また、先進的な機能を搭載したことを強くアピールするため、そのデザインも従来の腕時計とは異なるものが多い。さらに、黒やシルバーを基調とするビジネスツールの趣が加わり、そのターゲットは必然的に新しい製品に興味を抱く男性ビジネスユーザーになる。

 仮に究極の小型化が実現できるのなら、デザインは限りなく自由になり、女性向けの仕様や完全防水タイプ、複数の機能をあわせ持つ複合・融合タイプなどの開発も可能になる。

 また、腕時計市場は決して低価格製品ばかりが出回っているわけではない。数十万円から数百万円というクラス──いわゆるブランド物も、かなりの量が流通しているのだから、これらに内蔵できる可能性もゼロではない。

 高級感を持たせる製品であれば、デザインや質感にはこだわりたい。「白や淡い色は、半年も経つと色の劣化が始まるので、高級な腕時計には使えない」(シチズン時計 木原啓之氏)というように、カラーバリエーションも多ければいいというものでないようだ。

 なお、メタル系素材は、電波のシールドとなり感度の劣化を引き起こす以外に「メタル自体に重さがあるので、万一落下させたときに本体へのダメージがあるかもしれない」(カシオ計算機 奥山正良氏)という心配もある。

 また、デザインを考慮したとしても「腕時計型端末は、その機能が腕にないと困るというものでないと難しい。日常的に使うものではなかなかない」(セイコーインスツル 広富淳氏)というように、組み合わせる機能の候補不足を指摘する声も挙げられる。

 そのような中で、あくまでも“腕時計”であることを意識した製品は過去に存在した。2000年10月に発売された、セイコーエプソン製腕時計型PDA「Chrono-Bit」(クロノビット)である。デザインは普段使いの腕時計を優先、しかし機能面ではPCとの連携を図った理想的な製品は、市場でどう受け止められたのか。

Photo セイコーエプソンの腕時計型PDA「Chrono-Bit」(クロノビット)

セイコーエプソン「クロノビット」の場合

 セイコーエプソンはプリンタや腕時計の技術開発だけでなく、半導体、液晶表示体、水晶デバイスという3つの電子デバイスも生産するメーカーだ。腕時計の微細・精密加工技術を応用し、小さな機構の中に、少ない電力で長時間動く電子部品を組み込むことが、同社における電子デバイス事業の原点だという。

 1996年11月、同社は新たに精密応用開発部を設立し「省パワー/省スペース/省タイムにつながる“省”の技術」を使った製品の開発を行うことになった。約半年のテーマ探索活動の結果、次のような製品コンセプトができあがった。テーマは「世界最小、簡単、しかもスタイリッシュ、スマートなリスト型携帯情報ツール」である。

  • PCの主要PIMソフトと、ボタン1つで簡単にデータをシンクロできる
  • いつでも、スケジュールやToDoリストを即座に確認できる
  • スケジュールの予定時刻に振動アラームで通知する
  • お気に入りソフトや環境設定で自分好みにカスタマイズできる
  • 世界最小のジャストウォッチサイズで日常生活用防水を実現

 このコンセプトはいまでも十分に通用するものであり、10年前にこのような製品開発のテーマが具体化されたことは賞賛に値する。このとき重要視されたのが、いわゆる腕時計型コンピュータ──すなわち単なる電子ガジェット的な製品ではなく、ビジネスシーンにおいてデザインも大きさも違和感なく携帯できるもの、個人情報を簡単に活用できる「実際に使える道具」を目指したということだ。

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