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» 2006年12月11日 18時00分 UPDATE

「赤耳」はどれくらい速いのか?――「W-OAM」対応W-SIMを試す

変調方式をダイナミックに変更し、高速かつ安定したデータ通信を実現する「W-OAM」対応の新W-SIMが登場する。デモ機でそのパフォーマンスをさっそくチェックした。

[坪山博貴,ITmedia]

W-OAM対応の“赤い”新W-SIM「RX420AL」

photo 従来のW-SIM(右)とW-OAM対応のW-SIM(左)。当然ながら形状は同じで、上部に赤いラインが入るのがW-OAM対応のRX420AL(アルテル製)。「速い」と「赤」をつい結び付けてしまうのは、どうやらITmediaだけではないようだ

 今回試用する「RX420AL」は、通信モジュールのみのW-SIMでは初の「W-OAM」対応製品で、人気のW-ZERO3シリーズでも利用料金はそのままに通信速度の向上が期待できる。首を長くして待っていたユーザーも多いだろう。

 W-OAMに簡単に触れておくと、基地局と端末の無線通信に従来のQPSK方式に加えて、より効率の良い8PSK方式も導入することで、基地局との通信状態が良好な場所では通信速度を最大で約1.6倍に高速化し、通信速度は従来の(QPSK方式の)半分になるが、その分エラー訂正能力の高いBPSK方式も採用する事で基地局と端末間での通信可能距離を拡大するものだ。

 利用する無線の帯域幅などはそのままであり、従来の端末との互換性が保たれるほか、基地局の改修が小規模で済むのも大きな特徴だ。変調方式の動的な変更による高速化は無線LAN(例:IEEE802.11b→IEEE802.11g)でも採用されている。

 ウイルコムでは、W-OAMをPHS網高速化の最初のステップとしており、8PSK変調に対応するW-OAMデータ通信カードをすでに3製品投入している(1月27日の記事参照)

そのパフォーマンスを山手線内側のエリアでチェック

 W-OAMで高速化された通信速度を利用するには、基地局側の対応も必要だ。ウイルコムは具体的にどのエリアがW-OAMに対応しているかを公開していないが、発表会などの資料によれば山手線の内側は対応済みのようだ。そこで、8xパケット通信のレビューで好成績を記録した場所(2004年12月の記事参照)を利用し、実通信速度のチェックを行った。

 新W-SIMだけでは相対的な速度の変化が分かりにくいため、従来のW-SIMも比較用に準備した。ただし、4xパケット方式の契約変更が間に合わなかったので、まずは2xパケット方式で比較し、新W-SIMの4xパケット通信での速度も計測するという形をとった。なおダイヤルアップ接続先は「PRIN」に統一している。

 9(nine)の内蔵フルブラウザを使った比較では、2xパケット方式では従来のW-SIMが最高56Kbps、新W-SIMが最高70.3Kbpsとなった。後者はもう少し速度が出てもよい気がするが、それでも従来では絶対に出ない速度だ。4xパケット方式では168Kbpsを記録し、W-OAMの高速性をはっきりと示してくれた。

photophotophoto 左から従来のW-SIMによる2xパケット方式、新W-SIMでの2xパケット/4xパケット方式の結果。新W-SIMでの4xパケット方式では、168Kbpsという受信速度を記録した

 次に「W-ZERO3[es]」との組み合わせで試した。新W-SIMもなんら問題なく認識し、オンラインサインアップを実行するだけで問題なく通話やインターネット接続が利用できた。

 この組み合わせでは2xパケット方式で従来のW-SIMが最高58.2Kbps、新W-SIMが最高80Kbpsを記録した。新W-SIMでの4xパケット方式ではぴったり128Kbpsとなることが非常に多く、20回程度の速度計測で11度も同じ結果になった。9(nine)との組み合わせでは何度も128kbpsを越えていたが、W-ZERO3[es]では1度しか141.8Kbpsを記録しなかった。

 新しいW-SIMと端末間の通信速度に制限があるのでは、というイメージだが、ウィルコム広報では、W-ZERO3[es]と新W-SIMの組み合わせで128kbpsを超える実測値を確認しており、仕様的な問題ではないという。回線の混み具合や電波状況などが原因として考えられるが、W-ZERO3[es]との組み合わせでは9(nine)よりも低速となったことは事実だ。

photophotophotophoto 左から従来のW-SIMでの2xパケット方式、新W-SIMでの2xパケット方式と4xパケット方式による例。4xパケット方式では128Kbps、116Kbpsという結果が集中した。128Kbpsを越えたのは20回中1回のみだ

 最後にW-ZERO3[es]と組み合わせ、PCと接続してモデムとして利用してみた。2xパケット方式では従来のW-SIMが最大58.7Kbpsと9(nine)やW-ZERO3[es]の端末ブラウザと変わらない結果になったが、新W-SIMでは最大93.3Kbpsを記録し、さらに4xパケット方式では175Kbpsを記録した。W-OAMの高速性がはっきりと感じられる結果だ。

photophotophoto 左から従来のW-SIMでの2xパケット方式、新W-SIMでの2xパケット方式と、4xパケット方式。
新W-SIMでの高速通信を発揮した結果だ

 先に触れたとおり、W-OAM対応端末自体はすでに登場しているが、PDAライクなW-ZERO3シリーズでも高速なパケット通信を利用したいユーザーも多いと思われる。また、W-SIMを利用できる「DD」や「WS008HA」と組み合わせ、1契約でデータも音声も利用したいユーザーもいるだろう。W-OAMに対応したRX420ALは、こういったユーザーの期待に十分応えてくれるW-SIMといえそうだ。

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