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» 2008年08月07日 17時10分 UPDATE

HSDPAからLTEに、段階的に高速化――HSPA Evolutionのロードマップ

ドコモが2010年の商用化を目指し、KDDIが事実上の採用を認めるなど、次世代高速通信規格としてLTEに注目が集まる一方、一部の通信キャリアはLTEまでの高速化を段階的に進めるHSPA Evolutionの導入を検討している。両規格の現状と今後のロードマップを、日本エリクソンCTOの藤岡雅宣氏が説明した。

[後藤祥子,ITmedia]
Photo エリクソン 北東アジア チーフ・テクノロジー・オフィサーの藤岡雅宣氏

 ドコモが2010年のサービス開始を目指しKDDIが採用を事実上認めるなど、次世代高速通信規格のLTEが注目を集めている。その一方で、ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長が「3.9Gの概念はいろいろあるが、ソフトバンクモバイルとしてはHSPA+(Release 7)として、将来的にLTEにアップグレードも可能なものを選択したい」と話すなど、今のHSPAの延長線上にある高速化技術の段階的な導入を検討しているキャリアも存在する。

 LTEとHSPA Evolution(HSPA+)は、いずれも標準化団体の3GPPが仕様の策定を進める高速通信規格。両規格は、高速化のロードマップ上でどのように位置付けられているのか。エリクソン 北東アジア チーフ・テクノロジー・オフィサーの藤岡雅宣氏が次世代通信規格の現状と今後について説明した。

sa_hs02.jpgsa_hs03.jpgPhoto モバイルブロードバンドのロードマップ(左)とHSPA市場におけるエリクソンの採用実績(中)。エリクソンはPC向けの組み込みHSPAモジュールも開発しており、レノボ、デル、東芝ら4社と契約を交わしたという。「2008年の秋から冬にかけて搭載機が出てくる予定」(藤岡氏)

マルチキャリア化で下りの高速化も――HSPA Evolutionのロードマップ

sa_hs05.jpgPhoto HSPA Evolutionのロードマップ(左)とDual-Cell HSDPAの概要

 日本市場では現在、NTTドコモとイー・モバイルが下り最大7.2Mbps、ソフトバンクモバイルが下り最大3.6MbpsのHSDPAを導入している。この方式はいずれも3GPPが定めたRelease 5に準拠しており、スペック上では下り最大14Mbpsまでの高速化が可能だ。

 そしてRelease 5と同じ5MHzの帯域幅で、下り最大20Mbps超の高速化を実現するのがRelease 7で仕様が策定されたHSPA Evolution。この規格には(1)変調方式に64QAMを採用した下り最大21Mbps(2)送信アンテナと受信アンテナを2つずつ使う2×2 MIMOを採用した下り最大28Mbps の2つの方式があり、前者はソフトウェアのアップデートのみで高速化できることからハードウェアに手を加える必要がなく、コストを抑えて導入できるというメリットがある。なお、HSPA Evolutionについては、64QAMの変調方式と2×2 MIMOの組み合わせで、下りの通信速度を最大42Mbpsまで引き上げることを目指しており、2008年末にも3GPPで策定されるRelease 8で仕様が決まる見込みだ。

 さらにHSPAの拡張仕様と並行して開発が進んでいるのが、マルチキャリア方式の「Dual-Cell HSDPA」(DC-HSDPA)。隣接した2つの5MHz帯を利用することで下りを高速化する技術で、既存の基地局を生かした形で「64QAMと同じ21Mbpsくらいまでは出る」と藤岡氏。こちらもRelease 8での策定が予定され、「ソフトバンクモバイルやイー・モバイルが実用化する可能性がある」(藤岡氏)という。この規格については今後、隣接しないセルや異なる基地局間の利用、上りのマルチキャリア化などといった拡張の可能性があるとしている。

CDMA2000陣営からの移行が顕著に――LTE

 100Mbps超の下り通信速度を実現するLTEは、ドコモがスーパー3Gとして2010年の商用化を目指すとし、これまでCDMA2000を採用していたKDDIも事実上の採用を認めている。藤岡氏はLTEの現状について、世界的にも採用を表明するキャリアが増えており、CDMA2000からの移行を検討する通信事業者も増加しているという。

 「CDMA2000の事業者では、米Verizon Wirelessが導入を決めており、北米やその他の海外のCDMA事業者も、ほとんどがLTEかW-CDMAなど、HSPAのほうに動いているのが現状。KDDIも正式に発表はしていないが明らかにLTEだと思っている」(藤岡氏)

 HSPA陣営もAT&TやTelia Sonera、TeleNorがLTEの採用を表明しており、欧州でも各国で2.6GHz帯のオークションが開始されることから、藤岡氏はLTEも比較的早期に立ち上がるのではないかと予測する。「Telia Soneraとは、2009年の夏頃に300局の基地局を建てる契約を交わしている。欧州では2.6GHz帯のオークションが始まっていて、多くの事業者がLTEを採用する意向を示している」(藤岡氏)

sa_hs07.jpgPhoto 世界のLTE移行への動き(左)と、LTE、W-CDMA、GSMへの移行を表明したCDMA2000陣営の通信事業者

 なお、LTEとHSPA Evolutionのプロモーションについては「HSPA Evolutionは主に、現状、HSPAを導入している通信事業者がハードウェアに手をかけずに入れられるということを訴求し、LTEは、新たな帯域の免許を取得した通信事業者や、CDMA2000から移行するなど新たな技術を入れようとしている通信事業者にプロモーションする」とした。

 「MIMOを入れてアンテナを増やす必要があるとすれば、(ハードウェアをに手を入れる必要があることから)LTEに行くのもHSPA Evolutionに行くのも変わらない。ただ、HSPAを導入している通信事業者はある程度の基盤があるので、Release 5からの高速化で64QAMの変調方式を変える方法を選べばソフトウェアを変えるだけで済む」(藤岡氏)

 藤岡氏はまた、コアネットワークの標準化もLTEと並行して進んでいるとし、2009年後半をめどに標準化される見込みのRelease 9でFMC的な統合が進むことを期待していると話す。「今後は移動系も固定系もオールIP化が進み、ネットワークが一体化すればトータルコストが下がる。端末についても携帯電話と無線LANの融合が進んでおり、今後アーキテクチャ的にもSAE(System Architecture Evolution)をベースにして、FMCが進んでいく可能性がある」(藤岡氏)

sa_hs09.jpgPhoto W-CDMAでは導入当初、相互接続性などの面で問題が多かったが、LTEについては導入に向けて各種団体がエコシステムの構築や相互接続性の検証を進めているという

sa_hs13.jpgPhoto EricssonのLTE/SAEソリューションのシステムイメージ(左)と、GSM/W-CDMA/LTEに対応した基地局(右)

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