インタビュー
» 2013年08月09日 23時30分 UPDATE

開発陣に聞く「DIGNO R 202K」:世界一をもう一度 京セラが“世界最軽量スマホ”に挑戦した理由 (1/2)

ソフトバンクが発売した「DIGNO R 202K」は、重さ94グラムと世界で一番軽いスマートフォンだ。開発した京セラに、軽量化の狙いとどのように世界最軽量を実現したのかを聞いた。

[房野麻子,ITmedia]

 ソフトバンクモバイルが発売した京セラ製の「DIGNO R 202K」は、4G対応の防水モデルでは世界一軽い、重さ94グラムのスマートフォン。4.3インチのディスプレイを搭載した幅60ミリのコンパクトボディは持ちやすく、小型軽量のスマホを求める層からも注目されている。

photo 「DIGNO R 202K」

 ディスプレイの大型化が進み、ハイスペック化と同時に重量も増え続けているハイエンドモデルに対し、軽さで差別化を狙ったのはなぜか。そしてどうやって世界最軽量を実現したのか。商品企画を担当した京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部の川居信男氏と、同デザインセンターの東出和士氏に話を聞いた。

世界最軽量ケータイを開発した京セラ スマホで世界一をもう一度

――(聞き手、ITmedia) 今回、世界最軽量を狙った理由と、どうやって実現されたのかを教えてください。

photo 京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部の川居信男氏

川居氏 「DIGNO R 202K」はソフトバンクモバイルに投入する初のDIGNOブランド端末です。投入に当たって色んなモデルを検討させていただきましたが、1つの案として軽量化に着目しました。

 弊社は2Gから3Gへの過渡期だった1999年ごろ、軽量化をコンセプトに重さ59グラムという当時世界最軽量のPDC携帯電話「D206K」を開発しています。スマートフォンが大型化して重量も増えている今、スマホに軽量化の考え方を取り入れてはどうか、ということで製品化に至りました。

 また現在のマーケット的にも、フィーチャーフォンからスマートフォンへの乗り換えニーズに応えるモデルが必要です。そこで、フィーチャーフォンと同じようなサイズ感で持てる端末ということで、スマホとして大きすぎない、重すぎないサイズを目指しました。

―― 94グラムという重さについてですが、95グラムの他社端末を指標にしたそうですね。それと、D206Kの59グラムを目標にするのはやはり難しかったのでしょうか。

川居氏 95グラムの他社モデル(Xperia SX SO-05D)がありますので、それを超える、しかも防水仕様で超えることを目指しました。当然、対応サービスやスペックが異なるので単純な比較はできませんが、軽量化の数値目標として開発しました。

 59グラムについてですが、軽かったらそれでいいかという問題があります。スマホとして手にした際の安心感という意味で、ある程度の重さとサイズは必要かなと思います。

―― 端末の重さとサイズは密接な関係があると思います。軽さを追求しようとすれば、もっと小型にする方法もあったのでしょうか。

川居氏 DIGNO Rは軽さにフォーカスしたモデルですが、現在のスマホとして十分なスペックと機能を持ち、さらに持ちやすく使いやすいサイズも大きなポイントだと思います。今回も使いやすいサイズを目指して、モックアップを使った調査を何度も行いました。結果、手になじみ持ちやすいサイズとして、幅60ミリという数値に落ち着きました。

photophoto 女性の手でも持ちやすく操作しやすい幅60ミリのボディ

―― フィーチャーフォンでもそうでしたが、やはり持ちやすさには幅が重要なんですね。

川居氏 調査結果を見ると、幅が1ミリ変わると極端に評価が落ちるわけではありません。持ちやすさのピークがなだらかに落ちていき、ある程度大きくなると満足度がかなり低くなるという感じです。60ミリは持ちやすさではピークの値で、65ミリを超えると徐々に満足度が下がってきます。

―― DIGNO Rの厚さは10.4ミリですね。例えばですが、これが9ミリ台だとまた大きなインパクトがあったように感じます。

photophoto 持ちやすさを考慮して、あえて厚みを増したという

川居氏 ボディを角ばった、スクエアなデザインにすれば、そのサイズは狙えます。ただ、DIGNO Rが想定する主なユーザーはフィーチャーフォンからの乗り換え層ですから、持ちやすく手になじむフォルムでなければなりません。そのためにある程度の丸みが必要です。ラウンドフォルムにすると数値上の厚さは増してしまいます。

東出氏 (厚さではなく)幅を少し広げて丸みを持たせることも検討しました。しかし幅60ミリをキープすることが最優先でしたから、厚さを増して丸みを持たせています。

軽量化のためにマグネシウム合金を採用 ガラスや塗装も軽さを意識

―― DIGNO Rではマグネシウム合金のフレームを採用されているそうですね。マグネシウムを使った携帯電話やスマートフォンはあまりないと記憶しています。

photo 京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部 デザインセンターの東出和士氏

東出氏 通常の端末は内部の構造部材を支えるためにステンレスの板を使っていますが、今回は軽いマグネシウム合金を採用しました。

―― ステンレス製と比べて強度は高いのですか?

川居氏 マグネシウム単体だと柔らかい金属なので、合金にすることで強度を高めています。実はステンレスの方が強い部分はあるのですが、そこは(筐体の)セット全体で強度を保つようにしています。軽いから弱いということはありません。

―― そのほかにスマホならではの軽量化の方法はあるのでしょうか。

川居氏 部品点数を減らす、あるいは軽いものを使うなどの手法は、フィーチャーフォンのころと基本的に同じです。ただ、スマホは前面のほとんどがディスプレイでカバーガラスが占める割合が高い。またバッテリーサイズもかなり大きいなど、異なる部分もあります。DIGNO Rではそうした点もあらためて検討して軽量化を図りました。

東出氏 DIGNO Rのディスプレイでは、従来より薄いカバーガラスを採用しました。

川居氏 フィーチャーフォンではアクリルを使うこともあったんですが、スマートフォンではタッチパネルの仕様を考えるとガラスの方が向いています。今回は旭硝子の「Dragontrail(ドラゴントレイル)」という強化ガラスをさらに加工して薄くしています。ここも軽量化に寄与している部分です。

―― 厚さは何ミリくらいでしょうか。

川居氏 約0.4ミリです。「HONEY BEE 201K」のものと比べると0.2ミリくらい薄くなっていて、手触りや目視で分かるくらいの差はあります。4.3インチクラスになってくると、この0.1、0.2ミリの厚みの違いが重さに響きます。

DIGNO RとHONEY BEE 201Kのディスプレイパネル。HONEY BEEのものより0.2ミリほど薄いものを採用している

―― 加工の手間が掛かると、その分コストは上がりますよね。

川居氏 そうですね。もうお小遣いのやりくりですよ(笑) トータルのコストは決まっているので、その中でいかに作り込めるかです。

東出氏 塗料の膜厚も重さに響きますので、それも考えながらデザインした部分があります。例えばホワイトは白さを出すために何層もの塗装が必要で、膜厚がほかの色より厚い。そういうことで本当に微妙な差なんですが違ってきます。もちろんすべて94グラム内に収まっていますが

デザインやカラーも軽さを表現

―― DIGNO Rを手にして感じるのは(94グラムという)数値以上に軽く感じる点です。これは持ちやすいフォルムであることも関係しているのでしょうか。

東出氏 軽さを演出するようなデザインを心掛けましたので、そうした点が影響していると思います。例えば、ユーザーが目にする前面はスクエアでかっちりした(重さを感じる)デザインですが、実際に手にしている背面は柔らかくて丸みがあり(重さが感じにくい)形状になっています。

 そのほかに側面にシボ加工を施して背面から(ボディが)浮き上がるような印象を与えました。側面に描くラインが直線ではなくアーチ状なのも、軽さを感じさせるためです。

photophoto 軽さを意識した側面のデザイン

 色に関しても軽さを表現するように意識しています。ホワイトの背面は少しパールの効いたマット仕上げで、シルクのような質感を狙っています。それに対して正面は上質感を演出する金属調のシルバーのベゼルを採用しました。ピンクはパールの入ったマット仕上げの背面に対して正面はキャンディカラー。黒は重々しいイメージを抱きがちな色なので、軽さを表現するためにグラデーションを採用しています。ブラックの塗装の上にブルーのパールだけを吹いて、それをグラデーションとして表現しています。今回、パールだけを使って色を出すことにこだわり、光の加減で黒になったり青が見えたりして、軽さを演出しています。

 有彩色のピンクとターコイズグリーンの正面にはドットパターンをアクセントとして入れ、ふわっとした印象を与えています。正面が真っ黒なスマホが多い中で、フィーチャーフォン的なカラーに対するニーズがあるだろうと、ピンク、シルバー、白など、黒以外のフロントフェイスも用意しています。

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