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» 2013年08月26日 07時00分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:動画や雑誌、アプリも……スマホの“コンテンツ使い放題”が増加したワケ (1/2)

アプリやコンテンツの課金方法として注目を集めている定額制の“使い放題”サービス。特にスマホの普及とあわせて、キャリア自身が強力にプッシュしている。その背景を探った。

[佐野正弘,ITmedia]

 スマートフォンの普及でモバイルコンテンツビジネスのあり方が劇的に変化している。ユーザーにとっても影響が大きいのが、コンテンツやアプリの購入方法だ。市場のスマホシフトが進むなか、各キャリアは定額(サブスクリプション)制の“コンテンツ使い放題”サービスを全面に打ち出してきた。使い放題が台頭する背景には一体何があるのだろうか。

スマホの広まりとともに急増した使い放題サービス

 スマートフォンがモバイルコンテンツにもたらした変化は多岐に渡るが、中でもコンテンツサービス面で大きな変化をもたらしたものに“コンテンツ使い放題”がある。これは、月に数百円〜千円程度と比較的低価格の定額料金を支払うことで、相当数のコンテンツをまとめて楽しめるというものだ。

 特にこの分野に力を入れているのが携帯電話キャリアだ。例えばソフトバンクモバイルは、フィーチャーフォン向けとして、20以上のモバイルコンテンツを定額で利用し放題にした「コンテンツ得パック」を提供するなど従来から力を入れている。

 だがその動きが加速したのは、やはりスマートフォンの販売が本格化した、2010〜2011年ころからであろう。2010年6月にはソフトバンクの系列企業が、iPhone・iPad向けに複数の新聞・雑誌を定額で配信する「ビューン」を開始。2011年6月にはKDDI(au)が、100万曲もの楽曲が聴き放題となるサービス「LISMO unlimited powered by レコチョク」(現在は「KKBOX」にサービス名を変更)を開始。NTTドコモも月額525円で、7000タイトルもの動画が見放題となる動画配信サービス「dマーケット VIDEOストア powered by BeeTV」(現在は「dビデオ powered by BeeTV」)を、2011年11月に開始した。

photophoto 使い放題サービスが注目されるきっかけとなったauの「Lismo unlimited powerd by レコチョク」。今年4月には他キャリアにも対象を広げるべく「KKBOX」にリニューアルした

 その後もキャリア各社は、さまざまな分野でコンテンツ使い放題のサービスを矢継ぎ早にリリースしている。例えば動画配信のジャンルを見ても、ドコモはdビデオの提供だけでなく、2011年9月に定額動画配信サービスの「Hulu」と提携したほか、2012年7月には角川書店と提携して、アニメ専門の「dマーケット アニメストア」(現dアニメストア)を開始した。

photophoto dビデオが好調なNTTドコモは動画サービスをアニメにも拡大。2012年7月には「dマーケット アニメストア」(現dアニメストア)の提供も開始した

 またauは、旧作映画の見放題だけでなく、新作映画も毎月1本視聴できる「ビデオパス」を2012年5月から開始。ソフトバンクもエイベックスとの合弁会社を設立して、同年12月より音楽に注力した定額動画配信サービス「UULA」のサービスを開始するなど、各社がこぞってサービスを増やしている。

幅広い分野に広まる使い放題、利用者数も順調に増加

 使い放題のサービスが増えているのは動画だけではない。電子書籍に関して言えば、ビューンが女性向けの「ビューン for Woman」を2011年8月に開始したほか、2012年12月にはauが、書籍の読み放題サービス「ブックパス」を開始。ブックパスはその後、読み放題の対象を書籍だけでなく雑誌にも広げている。

photophoto 使い放題サービスの草分け「ビューン」は、女性向けにも「ビューン for Woman」サービスを展開、コンテンツの幅を広げている

 音楽サービスでいえば、最新の楽曲をラジオ感覚でストリーミング再生できる、auの「うたパス」やドコモの「dマーケット MUSICストア powered by レコチョク」(現dヒッツ powered by レコチョク)なども、使い放題サービスの一種といえるかもしれない。これらは米国主体に提供しているストリーミング音楽サービス「Pandora」を意識したサービスとみられ、好きな楽曲をユーザー自身で選べる訳ではないが、最新の楽曲をラジオ感覚で聞けることもあり人気が高まっている。

 また音楽に関しては、キャリア以外からも定額配信サービスがいくつか登場している。ソニーは2012年7月から、定額音楽配信サービス「Music Unlimited」を日本でも開始。またレコチョクも、J-POPを主体とした定額音楽配信サービス「レコチョクBest」を3月から開始している。

 こうした“コンテンツ使い放題”系のサービスは、サービス内容が分かりやすく、また低価格で利用できることもあり、ユーザーからの支持も得やすいようだ。事実、NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は、2014年3月期第1四半期決算の会見において、7月時点で「dビデオ」が455万、「dヒッツ」が140万、「dアニメストア」が92万の契約数を獲得したことを明らかにしている。さらに8月21日には、dアニメストアの契約数が100万を突破したと公表されており、順調な伸びを見せていることが理解できる。

photo ドコモの使い放題コンテンツは順調に会員数を伸ばしており、主力の「dビデオ」は400万を超える会員を獲得

Google Play等とは異なる使い放題アプリの人気

 動画や音楽といった特定ジャンルのコンテンツを使い放題にするだけでなく、幅広いコンテンツやアプリ、サービスなどをまとめて使い放題にしてしまうサービスも増えてきている。中でもスマホ向けの使い放題サービスとして開始当初から大きな注目を集めているのが、auの「auスマートパス」だ。

 auスマートパスは月額390円を支払うことで、さまざまなアプリはもちろん、Web上の有料コンテンツやクラウドサービス、さらにはリアル店舗で使える割引クーポンと、非常に多くのサービスが使い放題になる。2012年3月のサービス開始から急速に会員数を伸ばし、現在では700万会員に達するなど、かなりの規模に成長してきている。

photophoto アプリを主体としてさまざまなサービスを定額料金で提供する「auスマートパス」。700万会員を獲得するなど会員数の伸びは好調だ

 auスマートパスといえば、多くの人がイメージするのが“アプリが取り放題”ではないだろうか。Google Playでは有料で配信されているようなアプリが、サービス契約中はいくらでも利用し放題となることから、アプリ利用のハードルが非常に低く、初心者でも利用しやすいのが特徴だ。同サービスはiPhone向けにも提供されているが、こちらはアプリの配信に制約があることから、対象アプリはHTML5を用いた、Webコンテンツを主体としたものに限られている。

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