なぜドコモからiPadは発売されないのか――NTTドコモ・加藤薫社長の囲みにツッコミ石川温のスマホ業界新聞

» 2013年11月01日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 10月25日、NTTドコモは2013年度第2四半期の決算を発表した。営業収益は2兆1990億円で前年同期比83億円減、営業利益は4732億円で同20億円増で、減収増益となった。上期はツートップ戦略によって、スマホシフトが加速。下期にはiPhoneの効果が見込めるようになるという。会見終了後、加藤社長の囲みが行われた。

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―― 下期に向けて意気込みは。契約者の流出をどう食い止めていくのか。

加藤社長 これはなかなか難しい。ユーザーがフィーチャーフォンからスマートフォンに移るタイミングで、我が社内で変わって欲しいと思う。そんななか、iPhoneは強力な武器になる。Androidも長持ちする電池だとか個性がある。そうするとポートアウトが減っていくのが効いてくる。ポートインされた方からは、ネットワークがいいねという声もあれば、料金も安いよねと言う方もいる。もっともっと、このサービスが使えるからいいねという声も大きくしていきたい。そういうかたちで新しいステージで競争していく。

(★ 端末、ネットワークというより、最近はキャッシュバックの量で決まっている感もありますな。健全な競争ではないですが)

―― MVNOが格安SIMを出しているが、これらが増えることによってドコモにどんな影響を与えるか。

加藤社長 私たちのお客様として契約者数が増える。我々が提供するサービスと単独のSIMの割安感が、お客様にとってどういう価値になるかという結果になる。スピードや容量で犠牲になる面がある。それだけにものすごくたくさん増えているかといえば、そうではなく、増えている事業者もあれば減っている事業者さんもあったり、時期によっても変わってくる。きっちりと見ていきたい。お客様の選択肢が増えることはいいことだ。

(★ MVNOが盛り上がることに期待したいけど、SIMロックフリー端末が増えないようだとなかなか厳しいかも。iPhoneもSIMロックかかっちゃってるし)

―― 格安SIMが入ってきたことにより、通信キャリアへの料金引き下げの圧力につながっていくのか。

加藤社長 私たちの料金、何度も言いますが、端末とサービスとネットワーク、チャネルなどの総合的な満足度はお客様のなかにしっかりとあるんだと思っている。それ(MVNOとの)の棲み分けはできると思っている。

(★ 日本通信は別として、ドコモのネットワークを借りているMVNOはドコモと握っているだけに、劇的な差別化は難しく、料金引き下げの圧力にはならないんじゃないかな)

―― パケホーダイのライトがあるが、それに加えて、対MVNOに向けて料金プランを増やすという方向にはないのか。

加藤社長 料金プランはいろんな側面で考えているが、いまのところ、すぐに(新料金プランを投入する)予定はない。

(★ 他キャリア宛の通話が半額になるオプションは用意して欲しいかも)

―― 冬春モデルの販売が始まっているが、状況はどうか。

加藤社長 昨日(10月24日)、Xperia Z1を売り出した。これが売れたかというと、他はどうだと聞かれますので、なかなか言えないのですが、順調に滑り出しております。

(★ Xperia Z1もいいけど、Xperia Z1fのほうが気になります)

―― 加藤社長はiPhone導入前、「2〜3割なら導入は可能だ」という話をしていたが、実際にiPhoneを発売し、最終的にはどれくらいの割合になりそうなのか。

加藤社長 なかなかそれは難しい質問でして、いろいろありましてお答えできないというのはご理解くださいませ。

(★ まぁ、言えないわな。でも4割ぐらいは行っちゃうんじゃないかな)

―― iPhone5cが売れ残っているようですが、今後はどうしますかね。

加藤社長 お客様が選ばれることで、いまのところはiPhone5sのほうが人気があるというのは事実。そうしたなかで、時間が経っていった中で、お客さんの相対がどう変化するのか見極めたい。

(★ キャッシュバック効果でいくらでもなるような)

―― iPhoneとAndroid、サービス面での格差があるが、どのようにして差を埋めていくのか。

加藤社長 できるだけ早く、(各種サービスを)iPhoneに対応させたい。ドコモメールをiPhoneで対応させるには時間がかかり、12月中旬ぐらいになってしまう。それも含めてdマーケットのサービスも対応させていく。

―― アプリのプリインストールが難しいような部分は解決できるか。

加藤社長 いろんな工夫があります。

(★ アプリのプリインストールはまず不可能なような。でも、dメニューとdマーケットのアイコンを置いたのはドコモだからできた技のように思える)

―― ツートップ戦略が、パナソニックやNECカシオが撤退した決め手になった面もあるようだが、結果的にマイナスに出ているのではないか。また、今回GALAXYがスリートップ候補から外れているが、選び方というのはどういう基準なのか。

加藤社長 失敗ではありません。我々が目論んでいた成果が得られている。まずはコミットして、調達価格を抑える。お客様にも選びやすくする。フィーチャーフォンからマイグレーションはずいぶん進んだし、ご満足いただけている。

 ただMNPで一定の方は(他社に)スイッチした。これをできるだけ少なくするのが我々の目標ではある。

 ツーの次はスリーかと言われながら、このかたちにしてきたが、その時々で我々は、ずっと、お客様が選ばれる特徴あるものをメーカーに作ってもらった結果。その大きなパラメーターは電池の持ち、日本のユーザーが求められる全部入り、おサイフケータイ、防水だとかを加味しながら、その時々で選んでいるので変化していく。

―― 販促面ではツートップのようなかたちになるのでしょうか。

加藤社長 ちょっと違うかも知れませんが、同じような思想、全体のなかで、我々もコントロールする必要がある。

―― 昨日(10月24日)で、MNPが開始されて7年が経過するが、この制度がドコモに与えた影響をどう見ているか。

加藤社長 まだ総括していないが、ここ1〜2年は大変、苦労しているのは確か。ストックのシェアが高いところが不利に働くという当初の予想はその通りだった。一方では、キャッシュバックによる他社からのポートイン、MNPを促すことは少し、スマートフォンを契機に激化している。本来の競争としてはどうなのか、というのはこれからきっちりと見ていきたい。

(★ そもそも、ドコモのシェアを落とすというのがMNPの狙いだったはずだから、そういった面では成功したのかも)

―― TCAの数字がわけわからなくなってきているのが原因ではないか。

加藤社長 何が一番いいのか。一方では四半期ごとにしか発表しないという会社もある。何がいいのか検討する時期なのかも知れない。

(★ 孫社長もアメリカにご執心だし、そろそろ各社、四半期ごとの発表でいいのかも)

―― iPhoneは企業のお客様に評判がいいと思うが、法人営業でのプラスの側面は期待しているか。

加藤社長 もちろん、コンシューマーだけでなく、法人の方もお使いいただきたいというのは意識している。

―― Xperia Z1と同時にオススメだったArrows NXも発売されているが、それでいてXperia Z1のほうが売れるというのはオススメが間違っているのではないか。

加藤社長 そんなことはない。お客様が何を選ぶのか、オススメの部分とそこに入っていない機種、トータルで我々のラインナップでありますし。

(★ 黙っていたら売れないからオススメというかたちでプッシュしているのではないか。Xperia Z1は放っておいても売れるから、オススメしなくてもいいのでは)

―― 今回、あえてiPadを導入しなかった理由とは何なのですか。

加藤社長 導入しなかった。なかなか難しいお答えです。なかなか答えが難しいんです。難しいんです。そうですね、いい端末ですし、そうしたいのですが、一定の時間がかかるということなんでしょう。

(★ これ、自分の質問。加藤社長、急に言葉をひとつひとつ選び出し、苦し紛れに答えを出したという感じ。「一定の時間がかかる」というのが気になるところ)

―― アップルとの関係なんですか。

加藤社長 いやまぁまぁ。私たちが『これ、売ります』と言っても売れませんからね。

(★ これも自分。噂にきいたところでは「ドコモはiPhone販売に集中したいから、iPadを取り扱わない」という話もあったが、加藤社長のコメントを聞く限り、ドコモは売りたいけどアップルが売らせてくれないというのが真相なのかも)

―― プランですかね。

加藤社長 そんなことないですけど。

―― ソフトバンクはスプリントを買収していたりするが、ドコモが目指すM&A戦略の姿はどこにあるのか。

加藤社長 グローバルでは、それぞれの領域で、いい案件、いいチャンスがあればトライしていきたい。

 いまの状況では上位の部分、言ってみればコンテンツ、ちょっと違うかも知れませんが、お客様のスマートライフを頭に置いております。何がお客様に便利なのか。そこにモバイルを入れたときに、どんなシナジーがあるのか。会社もより伸びるし、お客様も便利になる、というのを探しております。昔、らでぃっしゅぼーやを買ったときには『なんで大根を売るんだ』と言われましたが、それが健康という面では、調理、料理と結びつく。食う、寝る、遊ぶという面に入ってくる。

 グローバルも多角的に考えている。どこかを買って、ぐんとトップラインだけを上げるという考えは持っていない。

―― キャリアフリーを展開していくと、コンテンツが差別化の要素にはならないような気もするが。

加藤社長 強みになると思っています。ドコモのお客様でない人も、ドコモのサービスを使ってもらえる。ドコモのサービスがより多くのお客様に使ってもらえるようになるという側面でそうしたいと思っている。一方ではMNPしやすくなるよねというのもあるが、そんな心配をしても仕方がない。我々のネットワークを磨き、サービスも磨き、端末ラインナップも磨き上げることで、自ずとお客様に選んでいただけるのではないか。不幸、といっては失礼だが、他のキャリアの方でも、我々のサービスが使えるのが魅力となるようにサービスを磨き上げていきたい。

(★ KDDIの高橋誠さんが「うちもかつてオープンIDやったけど、auのユーザー以外にリーチできずに失敗に終わった」と語っていた。docomoIDも他キャリアユーザーにはなじみがないわけで、どこまで普及するか、ドコモの手腕が問われている気がする)

取材を終えて

 iPhone発売直後はかなり苦戦したNTTドコモ。10月中にはほぼすべてのドコモショップでiPhoneを取り扱いできるようになるようで、ようやくソフトバンクやKDDIとまともに戦えるようになりそうだ。とはいうものの、iPadが取り扱えないというのは、かなりのハンデにつながりそう。KDDIがデータシェアプランでiPhoneとiPadをまとめて売ろうとしている中、NTTドコモはかなり見劣りがしてしまうのではないだろうか。なぜiPadを売れないのか、という真相は、どうやらアップル側に原因があるようだが、ドコモとしても一刻も早く取り扱いたいというのが本音としてあるようだ。

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