中国移動のTD-LTEサービスが正式に開始山根康宏の中国携帯最新事情(2/3 ページ)

» 2014年01月14日 15時24分 公開
[山根康宏,ITmedia]

中国移動が始めた「iPhone 5s」「iPhone 5c」取り扱い

 4Gサービスの正式開始後、中国移動はAppleのiPhone 5sとiPhone 5cの予約受付も開始した。モデルはそれぞれiPhone 5s(A1529)、iPhone 5c(A1530)で、香港などアジア各国で販売しているものと同じだ。対応する通信方式は、中国移動のTD-LTEで使う3バンドのほか、FDD-LTEのバンド1、2、3、5、7、8、20、W-CDMA、GSMに加えTD-SCDMAもサポートする。中国国内では中国移動のTD-LTE、TD-SCDMA、GSMネットワークを利用できるだけではなく、海外ローミング中はFDD-LTEやW-CDMA環境下でも使えることになる。

 中国移動版のiPhone 5sとiPhone 5cは、2013年1月17日に発売予定だ。価格や料金は現時点では未定だが、北京では12月26日の予約開始日に9万台弱の注文を受けるなど早くも高い人気となっている。1月17日はiPhone 5sとiPhone 5cの販売に合わせ、4Gサービスを正式に開始する都市が一気に増えるだろう。

中国移動のホームページではiPhone 5sとiPhone 5cの予約が始まっている(写真=左)。中国国内のApple Storeも1月17日には多くの人でにぎわいそうだ(写真=右)

3事業者にTD-LTEの免許を交付、FDD-LTEは2014年中か

 中国移動は2013年9月末から広州などでTD-LTEの商用テストサービスを開始していたが、正式な4G免許の交付を受けたのは2013年12月のことだ。2013年12月4日に中国工業信息部(工信部)は、中国移動と中国聯通(China Unicom)、そして中国電信(China Telecom)の3社に4G免許を発行した。だが通信方式はTD-LTEのみであり、FDD-LTEの免許は与えていない。

 3GサービスでW-CDMA方式を提供中の中国聯通、CDMA2000方式を提供中の中国電信は、4Gサービスの柱としてFDD-LTE方式を視野に入れて国内数都市でテストを行っている。諸外国を見てもFDD-LTE/W-CDMA、FDD-LTE/CDMA2000の組み合わせは、3Gから4Gへの移行として主流の方式だ。しかし、中国が国策としてTD-LTEを推進することから、この2社もいわば「お付き合い」としてTD-LTE免許を受けることは内定していた。だが、蓋を開けてみればFDD-LTEの免許は2013年末にも交付されず、交付時期も「市場の環境がそろってから」ということでいつになるかは不明である。

 中国政府は2009年に独自の3G規格「TD-SCDMA」方式の免許を中国移動だけに与え、中国聯通と中国電信にはW-CDMAとCDMA2000という国際標準規格の免許を交付した。TD-SCDMAは端末開発が間に合わず消費者から支持を受けなかったという要因があったにせよ、3Gの普及で一時はW-CDMAを擁する中国聯通が中国移動を追い抜く勢いをつけ、TD-SCDMAの国内普及はスタートダッシュに失敗した。結果としてTD-SCDMAの海外展開も失敗した苦い経験がある。そのため、4G免許については3社ともにTD-LTEを先行させ、TD-LTEでまずは国内普及を進めたい考えなのだろう。

 とはいえ現実を見ると、3社に割り当てられたTD-LTEの周波数は、中国移動が130MHz、中国聯通が40MHz、中国電信も40MHzとなっており、中国移動が他社よりも倍以上の帯域を確保している。これでは当然のことながら3社間での公平な競争は望めないはずだ。

スマートフォンからM2Mまで中国政府としてはTD-LTEの国内推進を図る(写真=左)。3社に割り当てられたTD-LTEの周波数は中国移動に偏っている(写真=右)

 工信部はFDD-LTEについて1800MHz帯と2100MHz帯、それぞれ、5MHz×4、25MHz×4の合計120MHz分の割り当てを決定している。この周波数帯は中国聯通と中国電信に均等に公平に割り当てられる予定だ。

 最終的には、両社ともFDD-LTEを事業の柱にしたいと半ば公表しているにも関わらず、TD-LTEをまず先に開始させるのは、中国政府は4Gサービスを移動サービスとしてだけではなく固定代替としても利用したいのではないだろうか。中国聯通と中国電信は固定電話サービスとブロードバンドサービスを提供している。一方中国移動は4G免許発行時に、今まで制限されていた固定系サービスの制限が解除された。すなわち今後は固定電話と固定ブロードバンドサービスを自由に展開することが可能になったのである。

 つまり中国移動には携帯電話及び固定代替としてTD-LTEの普及を広げさせ、中国聯通と中国電信には主に無線ブロードバンド向けにTD-LTEを提供する。これにより国内のTD-LTE関連企業の技術力を高めることが中国政府の狙いと考えられそうだ。インフラ未発達の農村部はもちろんのこと、高層ビルが次々と建つ都市部においてもLTEは固定回線の敷設を待たずにブロードバンドサービスを迅速に提供できる。

 中国電信関係者は「TD-LTEはルーターなどデータ回線、スマートフォンはFDD-LTEとTD-LTEのデュアルネットワークで提供する」とも話しており、中国移動のTD-LTEのエリア拡大が早く進めば2社へのFDD-LTEの免許も早い時期、2014年中にも交付されるのではないだろうか。

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