インタビュー
» 2014年12月18日 10時15分 UPDATE

SIMロックフリースマホメーカーに聞く:高いコスパを実現できた秘密とは?――ASUSに聞く「ZenFone 5」日本投入の狙い (1/2)

ASUSが日本で初めて投入したLTEスマートフォン「ZenFone 5」が大きな話題を集めている。自社のSIMカードとセットで販売するMVNOも多く、2万円台後半という安さも魅力だ。ZenFone 5導入の背景や価格設定の秘密などを、ASUS JAPANに聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 MVNOのSIMカードとセットで使う端末として、ASUSの「ZenFone 5」が大きな反響を呼んでいる。ユーザーからはもちろん、MVNO各社からの評判もよく、自社のSIMカードとセットで販売する事業者が続々と登場した。フュージョン・コミュニケーションズの「楽天モバイル」や、ニフティの「NifMo」のように、参入時にZenFone 5を“目玉”に据える事業者もあるほどだ。

photophoto 「ZenFone 5」

 ただ、誤解を恐れずに言えば、ZenFone 5はそこまでスペックが高い端末ではない。端末に採用されたチップセットは、ミッドレンジ向けの「Snapdragon 400」。ディスプレイもトレンドの5型だが、解像度は720×1280ピクセルで、ハイエンドモデルで一般的なフルHDよりは低い。にも関わらず、実際使ってみると、快適に操作することができる。チューニングが優れているのはもちろんだが、ユーザーにとって必要な機能をスペックを、きちんと見極めているのだろう。

 もちろん、カメラの仕上がりやマルチタスクで多数のアプリを立ち上げたときの挙動などは、ハイエンド端末に比べれば劣る部分もある。一方で、価格は16Gバイト版がわずか2万6800円(税別)。ハイエンドモデルとの機能差を考えると、破格の値段にも見える。逆に、同価格帯のモデルと比べれば、まさにASUSが言うところの「ワンランク上のぜいたく」を実現しているモデルとも考えられる。

 実際、MVNO各社に話を聞いても、ZenFone 5の売れ行きは好調なようだ。ASUS自身も、「継続して商品が出ている」(マーケティング部 シンシア・テン氏)と順調な売れ行きであることを認める。このZenFoneは、どのようにして日本に導入されたのか。また、市場投入後の反響はどうだったのか。ASUS JAPAN マーケティング部のシンシア・テン氏、出浦聖子氏、システムビジネス部のソフィー・リー氏、阿部直人氏に、これらの疑問をぶつけた。

photo 左からリー氏、阿部氏、出浦氏、テン氏

日本向けのZenFone 5に施したカスタマイズ

photo シンシア・テン氏

―― まず、「ZenFoneとは」というところからお聞かせください。

テン氏 日本では後発になりますが、ASUSは、海外でスマートフォンを4、5年やってきています。ZenFoneには、(PCの)ZenBookと同じ、「シンプル」という思いが込められています。会長がよく言っているのが、「安いケータイにデザイン性を求めてはいけないのか?」ということや、「人々がiPhoneやGALAXYのようなプレミアムなものばかりを使うのか?」という疑問です。こうした点に応えるために、「ワンランク上のぜいたく」というコンセプトで生まれたのが、ZenFoneです。Zenは日本語の「禅」で、この部分(端末正面の下部、ヘアラインのような加工がされている部分を指しながら)もそうですが、シンプルで美しくというコンセプトです。

出浦氏 Zenは座禅の「禅」から来ている言葉で、心に平和をもたらす、無駄のない美しさという意味もあります。外観だけでなくUIもそうで、ZenFoneには「Zen UI」が搭載されています。使いやすいUIであることはもちろろん、「やることリスト」のようなアプリもオリジナルです。カレンダーをロック画面で通知してくれたりと、忙しいときにあくせくせずに済む。その分、家族と過ごしたり、もっと生活を豊かにしたりといった、思いが込められています。

テン氏 海外で本格的なスマートフォンとして手応えを感じたのは、ZenFoneからですね。

―― 海外版との違いは、どこにあるのでしょう。

リー氏 ZenFoneには、4、5、6と3つのラインアップがあります。日本版は、その中のZenFone 5になります。日本の方には、スマートフォンでいろいろなタスクを完結させたい、SNSやメールだけでなく動画も見たいというニーズがあります。そこで、比較的大画面で、かつ片手で持てるサイズということで、6型のZenFone 6ではなく、ZenFone 5を導入しました。日本の方は、通勤電車で片手で使う方も多いですからね。また、日本語は複雑です。漢字だけでなく、ひらがな、カタカナに数字、英文もあります。それらをストレスなく変換できるようにするために、ATOKを搭載しました。

阿部氏 弊社もこれまで端末を出してきた中で、日本語入力が弱いというフィードバックがありました。これがベストじゃないかということで、ATOKを選んでいます。日本語入力は、うちの製品の弱みではありましたが、ATOKを載せることで、逆に強みに変えることができました。

リー氏 ATOKは、そもそもGoogle Playで1500円で販売されているアプリです。ユーザーの方々にも、お得感を感じていただけるのではないでしょうか。

阿部氏 まさにワンランク上のぜいたくで、ハイクラスなSIMフリースマホです。安い部類のスマホですが、ATOKも含め、ユーザーの声を聞き、満足度を高めています。

photophoto 日本語入力システムにATOKを搭載。片手で操作しやすいよう、キーボードのサイズ変更もできる
photo 阿部直人氏

―― 日本への最適化という点では、プリセットされているMVNOのAPNも充実してますね。あれなら、面倒な入力の手間が少なくなります。

阿部氏 17のAPNをプリセットしました。これはSIMカードを取り寄せて、自分が調べました。挿して押してつながれば終わりなので、簡単に設定できると思います。

―― SIMフリーということで、試験も大変だったのではないでしょうか。

リー氏 ASUSの本社側に、フィールドトライアルをやる部隊がああり、そこで各国の通信テストを行っています。日本にも数名派遣してもらい、各地でテストを行いました。

阿部氏 あとは、私個人でもテスト場所を確保してやっています(笑)。よくある、ここは800MHz帯しか入らないという場所に行って実際につながるかどうかを繰り返し、さらに品質を高める努力をしています。

―― 端末の対応周波数もグローバルモデルとは違いますね。

阿部氏 台湾モデルとは、対応周波数が1つしかかぶっていません。

テン氏 日本で初のスマートフォンなので、ラインアップが1つでも、技術的なところは苦労しました。

photo SIMカードを挿入してAPNを選択すれば、すぐに通信可能になる

ZenFone 5の良い評価と悪い評価

―― MVNOも取り扱っていますが、やはりキャリアからの評価もよかったのでしょうか。

テン氏 SIMロックフリースマートフォンのマーケットはまだそこまで大きくありませんし、弊社1社ではやれることも限られてきます。(MVNOさんとは)一緒にマーケットを開拓できればいいという共通の認識を持っています。

―― 自社でオンラインショップもオープンされました。反響はいかがでしょう。

テン氏 SIMロックフリーがどのくらい知られているのか、不安な部分はありました。初出荷で動きが止まってしまったらどうしようかとも思っていました。ふたを開けてみたら、継続的に商品が出ています。また、ZenFoneを購入していただき、ほかの方に勧めるといった状況も見受けられます。

―― 実際、ユーザーからの反響は届いていますか。

テン氏 いいところから挙げると、やはり「コスパがいい」「APN設定が便利」「デザインが気に入った」という声があります。ユーザーフレンドリーなUIや、あとは手袋モードを気に入ってくださった方もいるようです。逆に、悪いフィードバックとしては、画面が少し暗いという声や、センサーキーが光らないといった声があります。

photo 正面のキーは刻印されているだけで、光らない

―― あ、このバックキー、ホームキー、タスクキーは、普通にプリントされてるだけなんですね(笑)。

阿部氏 静電容量式のセンサーですが、書いてあるだけです。ただ、キーを画面の外に出したことで、表示に丸々5型分使えるのがメリットです。

テン氏 こういう風にしたらもっといいという意見が多くて、うれしかったです。あとは、カメラがもっとよければという意見もありましたが、この値段ならいいかと自己完結されている方も多く……。

出浦氏 SIMカードを挿すとき、裏ブタを開けないといけないのですが、ここが固いという声をよく聞きます。実はそれを解消するためにチュートリアルビデオも作って広めようとしているのですが……。この裏ブタは、手のひらに向けて持って、周囲を爪でなぞるようにしていくと簡単に取れるんです。

―― それは知りませんでした。自分がやったときも固くて、取ろうとすると「バキっ」と音がなるので、壊してしまわないか心配でした(笑)。

photophoto 左下のくぼみに爪を引っかけた後に、周囲を爪でなぞれば、簡単にフタが取れる
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