積極的な情報公開で信頼を回復したい――バイドゥが事業戦略を説明、「Simeji」新製品も明らかに(2/2 ページ)

» 2015年02月03日 21時26分 公開
[平賀洋一ITmedia]
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全社を挙げて信頼回復に取り組む

 Simejiと同社のPC向け日本語IME「Baidu IME」については、2013年12月に、入力された文字列がユーザーに無断で外部のサーバーに送信されていると指摘され問題となった。また政府機関や自治体でも使われていたことから、内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)が中央省庁に対して注意喚起を出す事態となった。

 入力ログは本来、変換精度の向上を目的に、許可を得たユーザーのものだけが送信される仕様だった。しかし調査の結果、ユーザーが許可していなくてもログを送信するバグが見つかり、同社は修正版をリリース。また入力された文字の変換候補をクラウド側で処理するクラウド変換については、送信する情報には暗号化されているほか、クレジットカード番号や住所、電話番号などの個人情報が含まれていないと説明している。

 チャールズ氏は当時について、「一生忘れられないできごと。ただし、あの危機によって、Simejiはさらにすばらしいプロダクトになったと思う」と振り返った。問題が明らかになってから約2週間、バイドゥには問い合わせが続いたが、スタッフは誰1人も退職しなかったという。またユーザーからは“これからもSimejiを使い続ける”という応援や励ましも届き、「涙を流しながら対処した」ことも明らかにした。

photo 信頼獲得のための取り組み

 問題発覚後、バイドゥではSimejiの安全性について第三者機関(インターテック ジャパン)による検証を受けるなど対策を強化。さらに情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際認証規格である「ISO27001」も事業部単位で取得している。高部氏は、「法令順守はもちろん、セキュリティやプライバシーに対する配慮を最重要項目として、社内に徹底した。各種ガイドラインの解釈など、国内のローカルスタッフが国内市場の事情を加味した上で主導している」と説明する。今後は日本語入力処理に関わるコアなFEP技術の開示なども通じて、信頼の回復に努めたいとした。

 「技術的な点で誤解を生まないよう、テクニカルな部分は積極的に公開したい。それも、極力分かりやすいコンテンツとして公開していく。情報開示を続けて、ユーザーに身近に感じて欲しいが、それだけで信頼が回復するとは思っていない。日本ではコンプライアンスが、また世界ではスピード感が重視される。成熟市場である日本では、第三者機関による安全性の検証やISOの獲得で弊社の姿勢を示すと同時に、スピード感ある開発を続けていきたい。信頼を獲得するには、良い商品を作り続けていくことだと思う。新商品の投入とともに、既存商品の底上げをしたいのはもちろん、Simeji以外のプロダクトもその方針だ」(チャールズ氏)

日本企業の中国進出もサポート

 Simejiなどのコンシューマー向け事業に対して、もう一つの広告やマーケティング、ライセンス事業はBtoB向けの事業だ。バイドゥが日本から中国への進出をどうサポートしているのかを、同社 国際事業室 室長の高橋大介氏が説明した。

photo 国際事業室 室長の高橋大介氏

 バイドゥはこれまでに、のべ400社の中国進出に関わってきた。特に中国向け広告事業は2008年の北京オリンピックから急成長を遂げ、2013年の領土問題で一時的な落ち込みを見せたが、以降も高い成長率を示している。

photo 同社の中国向けビジネス
photo 同社の中国向け広告サービスを利用している日本企業

 高橋氏によると日本企業による現地でのEC事業が活況で、「4〜5年前は法規制が多く難しいといわれたが、実は3年くらい前からかなり改善され、現在は参入障壁が低い。Alibabaなどの現地で強いECサービスを使わず、自社サイトでビジネスするケースも出てきている。マーケティングをしっかりやれば、結果を出せる市場」と分析した。Baiduではコンサルティングの一環として、約25億回の検索結果からユーザー動向を分析し、日本企業の中国向けサイトを構築。中国でもっとも検索されている日本のドラマやアニメの結果を発表するなど、現地のニーズを日本に広める取り組みも開始した。

photo 中国国内で検索されたキーワードから、人気の日本コンテンツを抽出

 また日本へ旅行に来る中国人向けのビジネスにも力をいれている。観光情報サイト「Baidu.Travel」では訪日中国人向けに、国内各地の観光情報を掲載。さらに「地球の歩き方」の翻訳コンテンツを電子書籍として販売を開始した。高橋氏は「“正規”の日本情報を、日本に来る前にしっかりと読んでもらうことで、文化理解を事前に促進したい」と狙いを話す。同じように、中国国内向けの航空券販売サイトからJALとバニラエアの航空券を直接購入できるようにもする。これで現地ブローカーを介さずに日本行きチケットを格安で販売できるのに加え、LCCが運航する地方空港を使った経由便の利用を促進することで、「地方活性に結びつけたい」(高橋氏)という狙いを説明した。

photo 訪日中国人向けに、ドコモSIMを販売

 訪日中国人の不満ナンバーワンが、ネット接続環境の少なさだという。旅行者向けの無線LANサービスは整備が始まったが、低コストで利用できるプリペイドSIMの販売はまだまだ広まっていない。「インターネット事業がメインのバイドゥとして、ネットに接続できないのではビジネスにならない」(高橋氏)ということもあり、Baiduでは訪日中国人向けに、NTTドコモのLTE通信が利用できるSIMカードを販売している。料金は日本円にして約2700円だが、協賛企業の商品やサービスに利用できるクーポンを付け、実質無料として提供している。

 同社は国内の映像コンテンツをライセンス販売する事業も行っているが、キーワードはなんといっても“正規版”であること。シェア1位という検索サイトの規模を生かし、コンテンツの商標侵害や海賊版がネット経由で広がらないよう、SEOを強化して正規版以外が検索結果に出ないよう対策しているという。

photo 商標侵害や海賊版への対処もスピーディに行われるという

 高橋氏は中国進出のサポートビジネスについて「ただ右から左へと動かすだけの代理店事業ではなく、お互いの環境や文化の差をなくしていけるようにしたい」と語った。

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