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» 2015年03月31日 11時00分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:日本の技術が貢献 “スマホ以外”で先進国開拓を目指すFirefox OS (1/2)

KDDIと「Fx0」を開発し、さらに新カテゴリー端末の共同開発構想も打ち出したMozilla。これからのFirefox OSはどう進化していくのか? Mozillaのアンドレアス・ガルCTOに聞いた。

[佐野正弘,ITmedia]

 KDDIの「Fx0」で国内進出を果たした「Firefox OS」。3月に開催されたモバイル関連イベント「Mobile World Congress 2015」(MWC 2015)では、KDDIなど世界4キャリアと共同でフィーチャーフォン型など新しいカテゴリーの端末開発を目指すなど、日本市場にも影響を与える取り組みを発表した。

photo Mozilla CTOのアンドレアス・ガル氏

 Firefox OSはFx0の開発でどのように進化したのか。また今後の日本市場に対し、Firefox OSはどのような変化を与えようとしているのか。MozillaのCTOであるアンドレアス・ガル氏に、日本市場におけるFirefox OSの取り組みについて話を聞いた。

日本絡みの大きな発表が相次ぐFirefox OS陣営

 GoogleのAndroidと、AppleのiOSが圧倒的な市場シェアを獲得しているスマートフォン市場だが、2社に対抗するべくチャレンジを続けているOSはいくつかある。そうした第3勢力の代表格が、MozillaのFirefox OSだ。

 これまで新興国向けのエントリーモデルで採用されてきたFirefox OSだが、ガル氏は「最近、日本にも大きく関係する動きが相次いでいる」と話す。1つは、パナソニックが4K対応のスマートテレビにFirefox OSを採用したこと。これによって、従来スマートフォンに限られていたFirefox OSが、スマートフォン以外にも道が開かれ、Web技術の活用の幅も広がることになる。

photo Firefox OSを搭載した、パナソニックの4K対応スマートテレビ。パナソニックはHTMLの高速レンダリングやハイレゾ対応などの技術開発に貢献したとのこと

 そしてもう1つは、2014年末にKDDIがFirefox OSとしては初のハイエンドモデルFx0を発売したことだ。これまで市場に投入されてきたFirefox OS搭載スマートフォンは、新興国向けに低価格を実現するため、性能的にはロースペックで、機能も絞られたシンプルなものとなっていた。だがFx0は「KDDIと密に連携しながら、ハイエンドのスマートフォンを展開することを目指した」(ガル氏)と話しているように、クアッドコアプロセッサやHDディスプレイ、そしてLTEによる高速通信に対応するなど、最近の一般的なスマートフォンに近いスペックを実現した内容となっている。

 しかもFx0は、開発者やエレクトロニクスの操作が好き人などをターゲットとしていることもあり、ボディが透明でオープン性が高く、完全なオープンソースから成り立っているFirefox OSとマッチしていると、ガル氏は話す。そうした特徴的な要素が好評を得たためか、Fx0はMWC 2015で米Trusted Reviewsが選出したBest of Mobile World Congress 2015を受賞するなど、海外でも高い評価を受けている。

photo MWC 2015のMozillaブース
photo 2014年末に発売された「Fx0」も展示。賞も獲得するなど高い評価を得た

「Fx0」でKDDIが実現したFirefox OSの高度化

 従来のFirefox OSでは新興国向けを重視してきたMozillaが、日本企業とタッグを組んで、日本での取り組みに力を入れているのはなぜだろうか。ガル氏は日本市場への取り組みに関して、「日本を狙ったというより、Firefox OSの対象範囲を広げたという考え方になる」と話す。

 Firefox OSの新興国市場開拓は順調に進んでいるようで、最近ではMWCに合わせて、フランスの大手キャリアであるOrangeと提携し、アフリカへの展開も進めるとも発表している。そうしたことから、次のターゲットとして先進国の市場開拓を進めたい思いが、Mozillaにはあるようだ。

 だが先進国のユーザーが相手となると、ローエンド向けを重視していたこれまでのFirefox OS端末による市場開拓は難しい。そこでFirefox OSも、先進国が求める性能をキャッチアップする必要があったとのこと。そうしたFirefox OSの高度化に向けた協力に大きく貢献したのが、KDDIであったという。

photo ガル氏は2014年末のFx0発表イベントにも登壇している

 実際KDDIはFx0の開発に際して、Mozillaのエンジニアと密に連携。Firefox OSのソフト的な互換性は維持したまま、HDディスプレイやLTEなどの機能を付加することに貢献したという。この取り組みによってFirefox OSがハイエンドモデルにも対応できることが証明されたことから、「Fx0は興奮を持って受け入れられた」と、ガル氏は話している。

 ちなみに、KDDIの田中孝司社長が「日本人は詳細にも注目するから」といって、Fx0のために金色のネジまで特注で作って用意したのには、ガル氏もかなり驚いたとのこと。そうしたこともあってか、「MWCでもFx0は“非常にクールだ”と関心が高く、他のスマートフォンと比べ引き立っていた」と話すなど、ガル氏はFx0を非常に高く評価しているようだ。

Firefox OSがフィーチャーフォンで狙うのは?

 KDDIの協力によって高度化を実現したことで、Firefox OSはより幅広い市場環境に対応できるようになったと、ガル氏は話す。その上で、先進国市場の開拓を進めるために打ち出したのが、やはりMWCに合わせて打ち出した新端末開発の取り組みだ。これは既報の通り、MozillaとKDDI、そして米Verizon Wireless、韓国のLG U+、そしてスペインのTelefonicaと共同で、新しいカテゴリーの端末を開発するというものである。

 その背景として挙げられるのは、ガル氏が「東京の街中を歩いていると、いかに多くの人がフィーチャーフォンを持っているかが分かる。日本ではいまだに携帯電話契約者の約50%が従来型の携帯電話を使っているという統計もある」と話しているように、スマートフォン以前の従来型のデバイスを支持するユーザーが、先進国には一定数存在し続けていることだ。

 キャリアやメーカーが各社がスマートフォンへまい進する中、フィーチャーフォンの進化は非常に限定的で、最新技術に対応できていないとガル氏は指摘する。最近では「AQUOS K」のようにAndroidをフィーチャーフォン向けにカスタマイズする取り組みも進められているが、本来フィーチャーフォンに向けたOSではないことから、開発には多くの苦労があるとも聞く。

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