「ネットには得体の知れない怖さがある」ITオンチの妻が見る“メディアの影響力”(1/3 ページ)

» 2016年03月06日 06時00分 公開
[中山順司ITmedia]
彼女はiPhoneを使いこなせない

 超ITオンチな妻に最新iPhoneを渡して、奮闘する様をつぶさに観察する本連載「彼女はiPhoneを使いこなせない」。いよいよiPhoneに慣れてきた妻は、なんと敬遠していたはずのSNSにも知らずと手を出していたことが分かった。お気に入りのダイエット健康アプリ内で、不特定多数のユーザーと交流を楽しんでいたのだ。

 今回はさらに掘り下げて、妻の「ネットに対する得体の知れない恐怖心」はどこからくるのか、話を続けてみた。テレビやラジオとは何が違うのか? 「ネット民」に対するイメージは? 今回もまた驚きの結末が待っていた。

ネット上ではゼロの存在でありたい


僕

 キミって、二言目には「ネットは怖い、ネットはヤバイ」って言うけど、テレビやラジオに対してはそうでもないみたいだよね。どうしてネットだけそう感じるの?


妻

 自分の知らないところで、知らない誰かに、個人情報が伝わってしまっているんじゃないかって不安があるのよね。


僕

 自分の写真をネットに公開することすら、めちゃくちゃ嫌がるよね。


妻

 うん。ネットに自分の画像は載せたくないし、名前もプロフィールも家族構成も仕事も交友関係も何もかも知られたくない。ネット上ではあたしはゼロの存在でありたいね。


僕

 「ゼロの存在でありたい」って、なんかすごくカッコいい言い回しだけども……。


 僕がスマホで妻の写真を撮ろうとすると、びっくりするほど嫌がる。写真を勝手にブログやFacebookに公開されてしまうと思っているようだ。

テレビの街頭インタビューから走って逃げる妻

 実は、かつてITmediaで連載していた記事の中には、妻の顔がばっちり写っているものもあるのだが(もちろん本人了承済み)、それについてはすっかり忘れているようだ。妻がネットへの理解を深めつつある今、それを蒸し返すと面倒なコトになりそうなので、あえて伝えないでおく(笑)。


僕

 じゃあ、オールドメディアと呼ばれるテレビやラジオや紙媒体も怖いのかな? テレビに街頭インタビューされたらどうする?


妻

 走って逃げる。カメラに映りたくないし、放送電波に乗りたくない。


僕

 街頭インタビューなら、名前も出ないし、個人情報流出の心配はないはずだけど……。じゃあラジオはどう? 音声だけだから、さすがに逃げないよね?


妻

 全力で逃げる。雑誌や新聞からも逃げる。


 新旧全てのメディアから逃げ続ける妻。一体彼女は何を恐れているのだろうか。過去に痛い目にでもあったのかを聞いてみたら、高校時代に部活帰りの歩道橋の上で、すれ違いざまに中年男性に抱きつかれた過去を告白した。たまたまほかの通行人が現れたのを見て、中年男性は逃げ去ったとのこと。

 なるほど、これがトラウマになって、他人に不用意に個人情報を知られたくないという気持ちを強めたのかもしれない。

インターネットは、テレビやラジオよりも影響力が低い?


僕

 ちょっと確認させてほしいんだけど、ネット、テレビ、ラジオを恐ろしいと感じる順番に並べてもらえる? ここでいう恐ろしいとは「どのメディアがもっとも情報流出の危険性が高そうか」って意味ね。


妻

 (間髪を入れず)1位がテレビ、2位がラジオ、3位がインターネットだね。テレビがいちばん危険。


僕

 (え、ネットじゃないんだ……)つまり、ネットがもっとも安全って解釈でいいの?


妻

 いや、どれも危険だけど、テレビがぶっちぎりで危険。


僕

 もうちょっと詳しく。


妻

 テレビは全国、ほぼどの家庭にも普及していて、パソコンを使わないお年寄りや子供だって見ているし、ラジオだってかなりの台数が普及しているでしょ。パソコンよりも圧倒的に人の目に触れる機会が多いはずだから。


 総務省の最新の「情報通信白書」では、2014年末の時点でインターネット利用者数は1億人を超えており、スマホを含む「携帯電話・PHS」の世帯普及率は94.6%だ。普及度という意味では十分な数字だと思うが、妻が言っているのは恐らくそれだけではないのだろう。


妻

 なんていうか……ネットには得体の知れない怖さがあるの


 ネットには得体の知れない怖さがある……なんとなく分かる気もするが、そのままではちょっと抽象的すぎる。その辺をもうちょっと突っ込んで、言語化してみることにしよう。

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