「IPv6」とMVNOの関係MVNOの深イイ話(2/3 ページ)

» 2018年01月08日 06時00分 公開
[堂前清隆ITmedia]

MVNOでのIPv6利用状況

 その一方で、総務省が2017年11月13日開催した「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」(第36回)の資料によると、IPv6に対応した通信サービスを提供しているのは3社(今後提供を予定している事業者3社)と、決して多くありません。

 MVNOがIPv6サービスを提供するためには、キャリアの場合と同様、通信サービスのIPv6対応と、スマートフォン本体のIPv6対応の両方が必要になります。

 次の図は、MVNOがドコモのネットワークを利用する場合の接続方式の概要です。ドコモの設備は既にIPv6に対応していますが、MVNOのサービスの場合それだけではIPv6を提供する事はできません。MVNO自身がもつ設備について、赤枠で囲った部分についてIPv6対応の設備を用意することで、通信サービスをIPv6対応とすることができます。

 また、自社では通信設備を持たず、他のMVNO(MVNE)の設備を利用している二次以降MVNOの場合、MVNEの通信設備がIPv6に対応している必要があります。

IPv6

 MVNOが扱うSIMロックフリーのAndroidスマートフォンは、大手キャリアと異なり、以前からほとんどの機種でIPv6が利用できます。しかし残念なことに、出荷時にプリセットされている通信設定(APN設定)がIPv4のみとなっていることが多く、わざわざ設定を変更する方を除いてほとんどの利用者はIPv6を使わないままになっていたのだと思われます。

IPv6

 MVNO利用者の中でもiPhoneを使っている方が少なくありませんが、iPhone(iOS)でも従来はIPv6の利用に支障がありました。前述の通り、iOS自体は以前からIPv6に対応していたものの、キャリア(ドコモ)がAppleに提供する「キャリア設定」という情報でIPv6が無効に設定されていたのです。

 MVNO(ライトMVNO)が提供するSIMカードはキャリアが提供するものと同一のID(PLMN)が書き込まれているため、MVNO利用者でもSIMカードを取り付けると、このキャリア設定が有効になってしまいます。

 さらに、iOS 10.2まではMVNOが提供する「APN構成プロファイル」にてIPv6無効の設定を上書きすることができず、実質iPhoneでIPv6を利用する方法はありませんでした。

 その後、iOS 10.3ではiOSの動作が代わり「APN構成プロファイル」に特定の記述を追加することで「キャリア設定」にあるIPv6無効を上書きしてIPv6を有効にすることが可能になります。ところが、このAPN構成プロファイルはAppleの公式ツールで作成できず、非公式な方法で制作するしかありませんでした。また、iPhoneの動作にも一部不審なところがあり、万全の状況でIPv6に対応したとは言い難い状態でした。

au回線のSIMは?

 auが提供する「キャリア設定」では、IPv6が有効となっていました。このため、au網を使ったMVNOである、IIJmioモバイルサービスタイプAでは、iOS 10.2以前でもIPv6を使うことができました。


 冒頭に挙げた、IIJmioでのIPv6利用率が2%〜3%という状況は、このような端末の事情によるところが大きかったのだろうと考えています。

IPv6普及の兆し

 ところが、2017年10月には突然IPv6の利用率が急上昇します。これは、2017年9月に配信されたiOS 11が理由だと考えています。

 iOS 11では、それまでのiOSと異なり、APN構成プロファイルに特別な記述を追加しなくても標準でIPv6を利用できるようになりました。つまり、iOS 11では契約中の通信サービス(MVNO)がIPv6を提供していると、利用者が何も特別なことをしなくてもIPv6で通信を行うのです。

 このため、9月20日(日本時間)にiOS 11が配信され、アップデートがiPhoneに行き渡ると同時に、IPv6の利用が増えていったのだと思われます。日を追いかけて調べると、2017年9月21日の段階でIPv6の利用率が5%程度、そして10月27日には25%にまで急伸し、その後2018年1月初頭には32%まで増えたことが観測されています。

 この時点での通信量(トラフィック)を見ると、全体の15%程度がIPv6で行われていることが確認できました。

IPv6 IIJmioのケース。同時期に、Androidスマートフォンについて大きな変化ありませんでしたので、この25%への変化はほぼiOS 11によるものではないかと考えています

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