米国シンクタンクが「端末購入補助規制は間違っている」と提言――5Gに向けて、消費者の購入意欲を奪う危険性を指摘石川温のスマホ業界新聞

» 2018年01月26日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 1月19日、アメリカのシンクタンクである「Progressive Policy Institute」が主催する公開シンポジウム「モバイル通信政策〜イノベーション推進のインフラとして〜」のパネルディスカッションに参加してきた。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年1月20日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 冒頭、チーフ・エコノミック・ストラテジストのマイケル・マンデル氏による「生産性革命と日本の携帯電話市場における規制」というレポートが発表された。その内容が「日本における端末購入補助規制はよろしくない。まもなく導入される5Gに向けて、消費者の購入意欲を奪うことなる」というものだった。

 個人的には「総務省のモバイル業界に向けた規制は間違っている。端末購入補助規制も見直すべきだ」という原稿を何本も書いてきたこともあり、マンデル氏の主張に背中を押された気持ちであった。

 パネルディスカッションでは、総務省の総合通信基盤局電気通信事業部の料金サービス課長が隣に座っていたこともあり、普段、自分が抱いている総務省に対する意見を思いっきり主張してきたのだった。

 端末購入補助規制が導入されたことで、何が起きたとかいえば、やはり端末代金は高い印象になり、気軽に新製品を買えなくなったように思う。端末に対する割引が減ったことで、一部キャリアは3年や4年と言った割賦販売を導入してきた。結果、ユーザーは長期間、キャリアに縛られることになった。総務省としては競争を促進したかったはずが、キャリアがユーザーをさらに長年拘束する逆効果に働いている。

 総務省は、昨年12月から始まった検討会において、「中古端末の流通促進」を議題にしているが、そもそも新製品が売れなくなり、買替え需要が減っている中で、中古端末の流通が促進されるわけがない。新品が売れてはじめて、中古品が出回るわけで、どうしてそんな簡単なことが総務省にはわからないのか。

 総務省検討会では、サブブランドやキャリア関連会社のMVNOが提供する通信サービスが安定的に高速で、通信料金も安いと言うことから、彼らを潰しにかかろうという機運がある。議論では「サブブランドやキャリア関連会社のMVNOにおける会計をキャリアとは分離して、NTTドコモ系MVNOと平等に戦えるコスト構造なのかを検証する」といった、いかにも学者先生らしい意見が飛び交っている。

 しかし、そんな回りくどいやり方をしても、消費者には何の意味ももたらさない。

 NTTドコモ系MVNOに話を聞くと「ワイモバイルやUQモバイルは消費者のためになっているのだから、いまさら足を引っ張るつもりもない。これまでキャリアは、端末購入補助規制で余っていたお金をサブブランドに使っていたが、会計分離などを行うと、そのお金の流れが止まり、今度はキャリア自身がさらなる値下げに踏み切る可能性がある。そうなると、ドコモ系MVNOにとっては死活問題になりかねない」と危機感を示す。つまり、総務省がやろうとしていることは結果として、ワイモバイルやUQモバイル潰しではなく、NTTドコモ系MVNO潰しに発展しかねないというわけだ。

 では、どうすればいいのか。

 NTTドコモ系MVNO関係者は「現状、NTTドコモから回線を借りているMVNOは、同じ条件で接続しているため、他社との差別化がしにくい。MVNOによってはNTTドコモに対して回線をさらに数百万売るから、昼間も高速な回線を提供しろとか、もっと安価に接続させろと言った交渉ができれば、MVNOも競争力がつく。ワイモバイルやUQモバイルに真っ向勝負できるNTTドコモ系MVNOを誕生させる環境づくりが不可欠ではないか。そのほうが健全な競争環境が生まれる」と語る。

 総務省では、接続料をもっと値下げさせる流れも作ろうとしているが、接続料はすべてのMVNOに適用されるため、結果として、MVNO業界全体のARPUが下がり、利潤が確保しにくくなり、共倒れする危険が増してしまう。

 全体的な接続料を下げるよりも、ワイモバイルやUQモバイルに対抗できるNTTドコモ系MVNOを作るほうが、MVNO業界の発展につながることだろう。

© DWANGO Co., Ltd.

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