「AI for everyone」を掲げるGoogle 新GoogleアシスタントやAndroid Pで何が変わる?Google I/O 2018

» 2018年05月09日 16時30分 公開
[太田百合子ITmedia]
Google 「Google I/O 2018」の基調講演
Google 基調講演に登壇したスンダー・ピチャイCEO

 Googleは5月8日(米国時間)、開発者イベント「Google I/O 2018」を本社のある米カリフォルニア州マウンテンビューで開催。基調講演にスンダー・ピチャイCEOが登壇し、Androidの次期OS「Android P」の詳細や主要サービスのアップデート、Googleアシスタントの進化などについて発表した。2017年の同イベントでは「AI First」を強調したピチャイCEOだが、今回はさらに進んで「AI for everyone」を掲げ、AIが既にGoogleの多くのサービスに用いられていること、公開されているAIを用いてさまざまな取り組みが進んでいることを紹介した。

Google
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Google 冒頭ではインドで実用化されている、画像認識技術を用いた糖尿病網膜症検査や、同時に話す2人の会話を切り分け個別に認識する様子、障がい者のアクセシビリティー向上といった、AIを用いた事例を紹介した

 ビチャイCEOによれば、AIは既にGoogleの多くのサービスに活用されている。先日、大幅なアップデートが行われたGmailもその1つ。現在はまだ簡単な返信メッセージが選べる程度だが、基調講演ではAIを用いることで、送る相手や内容によって先の文章がサジェスチョンされる様子を紹介した。AIを用いたサジェスチョン機能はGoogleフォトにも実装する予定で、暗い写真を明るくする、顔を認識した友人にシェアするなど、写真ごとにおすすめのアクションが表示され、素早く処理することが可能になる。またモノクロの写真に、自動的に色を付けるといったこともできるようになるという。

Google
Google AIを用いることで、モノクロの写真をごく自然にカラー写真化する新技術も実装予定
Google AIを実現するGoogleの機械学習ライブラリ「TensorFlow」向け専用チップ「TPU」の最新版「TPU 3.0」も発表。「TPU 2.0」から8倍高速化したという

Googleアシスタントは新たに6つの声が選べるように

 AIを用いた最も身近なサービスの1つ、Googleアシスタントの新機能も多数発表した。Googleアシスタント事業を率いるスコット・ハフマン氏によれば、現在Googleアシスタントが利用可能なデバイスは5億台に上り、40のカーブランドが採用。5000のIoT製品につながっているという。

 音声合成技術の進化により、新たに6つの声が選べるようになる他、著名ソウルシンガーのジョン・レジェンド氏の声も加わるとのこと。さらに自然で継続的な会話のやりとりや、複数の質問を含む問いかけに対応する。最近日本でも提供開始した「ファミリーリンク」によって13歳以下の子供の利用が可能になったことを受け、丁寧な言葉遣いを促す機能も追加されるという。

Google Googleアシスタントは2018年末までに80カ国で利用可能になると発表したスコット・ハフマン氏

 2018年のCESで発表されたスマートディスプレイに加えて、スマートフォン向けのGoogleアシスタントでも、よりビジュアルを用いた体験を強化。例えば音声で料理をオーダーするとメニューの写真が表示され、より簡単に料理の注文ができるデモも紹介された。

 2018年夏には、Googleマップのナビゲーションと並行して、Googleアシスタントが利用可能になる。スマートフォンのGoogleマップをカーナビ代わりに使っている人は多いが、画面を切り替えずに音声で音楽再生やメッセージの送信ができるようになれば、利便性が大幅に向上するだろう。

Google ナビゲーションを表示したまま、音声によるGoogleアシスタントの利用が可能なる

Googleアシスタントが電話をかけて予約をしてくれる?

 Googleアシスタントについての発表で、最も会場がヒートアップしたのは、Googleアシスタントが自動的にヘアサロンやレストランに電話をかけ、予約をする新機能が紹介されたときだ。

 これは「Google Duplex」という新技術を用いて実現するもので、人間のアシスタントのごとく電話で希望する日時や人数を伝え、予約を取ってくれる。さらに予約内容はそのままGoogleカレンダーに記録されるという。紹介されたムービー内での電話のやりとりはごく自然で、相手がGoogleアシスタントだとは絶対に気付かないレベル。しかも遠い未来の話ではなく、この夏から早くもテストを開始する予定という。

Android Pにはスマホの使い方を見直すための機能も

 基調講演では新OS「Android P」の詳細も明らかにされた。大きく変更されるUI(ユーザーインタフェース)は別記事で詳しく紹介する予定だが、ここでもやはりAIを用いることで、どのアプリをどのくらい使っているかといったユーザーの使用状況を把握して省電力に役立てる機能や、周囲の明るさに合わせて最適な明るさに調整する機能、よく使うアプリやユーザーの行動を予測して、必要なアプリやその一部を素早く利用できるようにする機能などが搭載されている。

 少し驚いたのは、ユーザーのスマートフォンの使い方を学習し、それを省電力やより便利に使うために役立てるだけでなく、スマートフォンの使いすぎを制御して、デジタルとの健全な付き合い方を見直すための機能が追加されていること。アプリ使用時間を制限したり、夜間には画面をグレースケールにフェードアウトできる。

Google アプリの使用状況を「Dashboard」で監視し、使用頻度に応じて電力を最適化する「Adaptive Battery」を採用
Google 「Android P」のβ版は5月9日から提供し、「Google Pixel」や「Xperia XZ2」などでも利用できる

Google Mapで進行方向が分かる新機能

 最後にもう1つ会場を沸かせたのが、「Google Map」と「Google Lens」にも用いられているAR技術を組み合わせることで実現する、新機能「VPS」だ。Google Map上で現在地にいる自分が、どちらの方向を向いているのか分からなくなるというのはよくあることだが、衛星による位置情報=GPSではなく、周りの建物などを認識して位置を把握するVPSなら、どちらを向いているかどう進めばいいかより確実なナビゲーションが可能になる。

Google 実際の風景に重ねてナビ情報を表示できる「VPS」で、Google Mapの移動がさらに便利に

 5月8日にローンチした新しい「Google News」や、Google Mapに追加されるユーザーの好みに応じてお店をレコメンドする機能などにもAIが活用されているとのこと。またGoogleのAIを用いることで、大きく進化を遂げた、Google傘下のWaymoの自動運転技術についても紹介した。

Google AIを活用し、ユーザーの関心に基づいたニュースを表示する新「Google News」で、より効率的な情報収集が可能に
Google Waymoのジョン・クラシク氏が登壇。センサーのノイズを除去することで、難しかった雪道での走行が可能になるなど、Google Aiの効果を強調した

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