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» 2018年05月22日 21時37分 公開

Xperia不調の要因は「商品力強化の遅れ」 IR Day 2018で語られた、復権への道筋

ソニーが2018〜2020年度の中期経営方針を発表。あらためて「感動」と「人に近づく」を重視することを表明。苦戦を強いられているスマートフォン事業では、商品力を強化し、開発の効率化とスピードアップを目指す。

[田中聡,ITmedia]

 ソニーが5月22日、2018〜2020年度の中期経営方針(第三次中期経営計画)を発表した。同社は「感動」と「人に近づく」を重視し、エレクトロニクス、エンタテインメント、金融の3領域で持続的な社会価値と高収益の創出を目指す。

 具体的には、「ユーザーに近いDirect to Consumer(DTC)サービスとクリエーターに近いコンテンツIPの強化」「ソニーブランドのデバイス(ブランデッドハードウェア)で安定して高いキャッシュフローを創出すること」「CMOSイメージセンサーで世界ナンバーワンを維持し、センシング用途でも世界ナンバーワンになること」の3点を挙げる。

ソニー ソニーの吉田憲一郎社長
ソニー CMOSイメージセンサーで世界ナンバーワンを維持し、センシングでもナンバーワンを目指す

 ブランデッドハードウェアには、ソニーのテレビやオーディオ製品、カメラ、スマートフォンなどが含まれる。モバイル・コミュニケーション事業は2018年度に150億円の赤字を見込んでおり、同社のハードウェアでは唯一苦戦を強いられている。吉田憲一郎社長兼CEOは、同事業について「今年度(2018年度)も赤字見込みであることは重く受け止め、総力戦で事業の安定化に取り組んでいる。(スマートフォンの)調達から製造、販売までのサプライチェーンを持続可能なものにすること、5Gなどの通信技術を獲得することも重要な目的と考えている」と話す。

ソニー ソニーブランドの製品で安定した利益を生み出せるようにする
ソニー Xperiaスマートフォンは、この夏に「Xperia XZ2」シリーズを日本でも投入する

 ソニーは2018〜2020年度で2兆円以上の営業キャッシュフロー創出を目指すが、「中でもブランデッドハードウェアは多額の投資をしないことから、大きなキャッシュフローに貢献すると見込んでいる」と吉田氏は期待を寄せる。

 十時裕樹EVP CFOは、「スマートフォン事業は集中と選択を行い、オールソニーでターンアラウンド(事業好転)を強化した上で、中期の時間軸でできるだけ収益を安定させていく」と説明した。

 CMOSイメージセンサーは、現在はスマートフォン向けが中心だが、「今後は車載向けが重要になる」と吉田氏。「CMOSセンサーでは対象物までの距離、移動方法、スピード、対象物が何かが分かる。CMOSイメージセンサー事業には最も大きな研究開発と設備投資を行う」(同氏)

Sony IR Day 2018で明かされた、Xperiaの課題とロードマップ

 22日には、投資家向けに「Sony IR Day 2018」も開催され、各事業での詳細な戦略が説明された。モバイル・コミュニケーション事業のうち、固定通信サービスは会員数が右肩上がりで伸びており順調だが、スマートフォン事業はXperiaの販売台数が右肩下がりで減っており、2015年度から3年連続で目標の販売台数に届かなかった。

 ソニー 執行役EVP イメージング・プロダクツ&ソリューション事業担当/モバイル・コミュニケーション事業担当の石塚茂樹氏は、スマートフォン事業でOPEX(運営コスト)と製品保証費用を削減できたことを良かった点に挙げたが、販売台数の減少は大きな課題となっている。その原因として「商品力強化の遅れ」を挙げる。「他社が狭額縁、ディスプレイサイズの拡大、複眼カメラなどを取り入れてきたが、それに対抗する商品を出せなかった。設計、商品化のスピードが他社に劣後していることをしっかり認識して、それを改善することが必須だと考えている」(同氏)

ソニー スマートフォン事業では、OPEXと製品保証費用の削減に成功した
ソニー 販売台数は右肩下がりで減っており、課題は明白だ

 確かに、他社が積極的に狭額縁デザインや2眼(3眼)カメラのスマートフォンを投入する中、Xperiaはまだ額縁が他社と比べて太く、2眼カメラのスマートフォンも、2018年夏に発売する「Xperia XZ2 Premium」でようやく実現した。

 なぜ、Xperiaは進化のスピードがここまで遅くなってしまったのか。石塚氏は、“裏の競争力”が足りなかったことを挙げる。「設計のプロセスも相当に無駄がある。価値にならない内向きの業務プロセスがまだある。岸田(ソニーモバイル社長の岸田光哉氏)と共にメスを入れたい」と話し、具体的には「商品設計のリードタイム短縮、業務プロセスの改善、組織改革」などに着手する。

 もちろん、“表の競争力”を強化すべく、Xperiaの商品力強化にも努める。デザイン、カメラ、レンズ、オーディオ、ディスプレイなどで、ソニーの技術アセットを活用し、差異化の源泉としていく。特に「デザイン、質感には徹底的にこだわる」と石塚氏は強調した。

ソニー ソニーの技術を徹底活用して差別化を図っていく姿勢は以前から変わらない

 スマートフォン事業では「5G時代に向けての新しい顧客価値の創造」を中期ビジョンに掲げる。商品、販売、製造、調達などでソニーグループの資産を活用することで、商品力強化と効率化を両立させ、規模を追わなくても利益を出せる“筋肉質な構造”に変えていく。

ソニー スマートフォン事業の中期ビジョン

 商品力強化の方法は先述の通り。販売力強化は欧州から着手し、キャリアとのパートナーシップを強化する他、(キャリアを介さない)オープン市場での販売力も強化する。自動化ラインの導入、パートナーとの長期関係構築、ソニーグローバルのネットワーク活用などで、製造・調達・オペレーションも強化していく。

ソニー 販売力を強化し、製造・調達・オペレーションも改善していく

 5G時代に向けて、大容量の映像配信サービス・ソリューションの提供や、画像処理・ネットワーク伝送・アンテナなどの技術開発にも注力する。そのハブとして中心にあるのは間違いなくスマートフォンだろうが、他のデバイスと5Gを活用したサービスの展開も視野に入れている。

ソニー 5Gに関連するサービスや技術の開発にも努める

 5Gのビジネスモデルの一例として、石塚氏は現在提供している、LTEを内蔵した業務用カメラからニュース(の映像)をクラウドにアップして放送局に転送するサービスを挙げる。「LTEだと映像の品質や遅延などで制限があるが、5Gなら高画質でリアルタイムに転送できる。ハードだけではなくてサービスのリカーリング(安定した利益を生むビジネス)につながる」と期待を寄せた。

 また、5Gのアンテナ関連の技術力を高めていくことも、差異化のポイントになると考えているようだ。「5Gのアンテナ技術は、想像以上にハードルが高い。チップを買ってきてソフトウェアを変えたらできるわけではない。モバイルでこの技術を獲得できなければ、他の商品に導入できない。あらゆる機能が通信機能を内蔵するのは目の前なので、アンテナを含む通信技術を獲得して、それを熟成していく必要がある」(石塚氏)

 ソニーは、モバイル・コミュニケーション事業で、2020年度に営業利益200億〜300億円を達成することを目標に掲げる。

 石塚氏自身も、スマートフォン事業には強い思いを持っている。「シェアが低いのは本当に情けない話。徹底的に磨き上げるしかない。私は30数年ソニーにいるが、後半はヒットモデルをプロデュースすることに人生を懸けてきた。まだ結果は出ていないが、私と岸田のパッションで何とかしたい」と同氏。商品力と開発スピードを強化することで、他社を一歩リードするXperiaが2020年までに見られることを期待したい。

ソニー モバイル・コミュニケーション事業のロードマップ

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