MVNOが生き残るために必要なことは? ジャーナリストとIIJ中の人が徹底討論IIJmio meeting 20(1/3 ページ)

» 2018年07月18日 11時36分 公開
[房野麻子ITmedia]
IIJmio meeting 司会を担当したITmedia Mobile 田中聡編集長

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は、20回目となるファンミーティング「IIJmio meeting 20」を7月14日に東京で開催した。20回記念のスペシャルセッションとして、「ITmedia Mobile Presents:ジャーナリストが本音で語る、MVNOここだけの話」というテーマで、ITmedia Mobile 田中聡編集長の司会のもと、ジャーナリストの石川温氏、石野純也氏、太田百合子氏、IIJの佐々木太志氏によるトークセッションが行われた。

 トークセッションは、MVNOについて取材する中、重要だと判断した(1)業界動向、(2)通信品質、(3)料金・サービストレンドの3つのテーマについて、田中編集長が概要を説明し、ジャーナリスト3氏と佐々木氏がコメントするという流れで進んだ。

IIJmio meeting トークセッションのテーマは、業界動向、通信品質、料金・サービストレンドの3つ

サブブランドはMVNOにとって悪なのか

 MVNOの業界動向については、まずY!mobile、UQ mobileといったサブブランドに関する問題が挙げられた。2018年の1月から4月に開催された総務省の有識者会議でサブブランドがやり玉に上がり、MNOから帯域を不当に安く買っているのではないかという疑惑があがった。この疑惑は晴れたが、MNOがサブブランドに対して資金を提供し、それによって帯域を増強しているという、いわゆる“ミルク補給”疑惑も指摘された。

IIJmio meeting Y!mobileやUQ mobileなど、サブブランドに関する問題について討論
IIJmio meeting 石野純也氏

 UQ mobileの通信速度がMVNOにしては速すぎるという指摘について、石野氏は資金力の高さが背景にあるとした。「UQコミュニケーションズは、WiMAX 2+としてKDDIに回線を売っている。auはAndroid端末もiPhoneも全部WiMAX 2+に対応しているので、数千万契約分のお金がKDDIからUQに入ってくる状態。それをMVNO事業に使ってはいけないというルールはない」と説明し、問題はないという見解。むしろ「Y!mobileとUQ mobileを一緒に扱って議論していたMVNO側の攻め方が下手だった」と指摘した。また、ミルク補給については「程度問題だとは思うが、どこまで悪いのかが切り分けにくい問題」と法的に整理して制限するのが難しい問題だと語った。

IIJmio meeting 太田百合子氏

 太田氏は、「サブブランドが悪とは思えない」とユーザー目線の認識を語った。「安くて便利であれば、サブブランドであろうがグループ会社であろうが、ユーザーには関係ない。一般ユーザーの多くは、格安スマホといえばY!mobileという認識」で、多くのCMが流れたことで、3キャリア以外の安価な選択肢があることを広く知らせるきっかけになったと評価した。一方で、「例えばソフトバンクに解約に行ったらY!mobileを勧められるというような囲い込みが行われるのはフェアではないと思う」とも。MNPの際にWebで転出の手続きができるようにすべしという総務省の指導を歓迎した。

 MVNOの立場として佐々木氏は、業界団体のMVNO委員会が、ここ3年ほど総務省で開かれる会議に呼ばれていないのが問題と指摘。「MVNO数社がバラバラなことを行っていると撃破される。業界の問題として取り組んでいきたい」と述べた。また、ユーザーにとって、UQ mobileやY!mobileは安くて速い良いサービスという太田氏の意見に賛成し、「なぜMVNOはそれを実現できないのかという観点から考えるべき。お金の問題で正当な競争ができない状況があるなら、業界としてメスを入れて提言していくような、ポジティブな議論にしたい」と語った。

MVNOの淘汰が始まっている?

 2017年はFREETELを展開していたプラスワン・マーケティング(POM社)の破綻、2018年は楽天の携帯電話事業参入が注目された。

IIJmio meeting 2017年はPOM社が経営破綻。MVNOの事業は多くが赤字といわれる
IIJmio meeting 石川温氏

 POM社について石川氏は「最初からうさんくさいと思っていた」とバッサリ。他社と同じような条件でネットワークを借りているMVNOは、目立ったことができないはず。それなのに次々とサービスを出してきたPOM社の増田薫社長に対し、「プレゼンテーションはうまいけれど、見栄っ張り。メディアに載るようなフレーズを言ってみたり、Twitterで盛り上がっているからやったりと、後先考えずにサービスしているという感じがした。何か裏があるんじゃないかと見ていて、自分のラジオ番組に一度も呼ばなかった」と振り返った。

 何度が増田社長を取材したという石野氏は、「端末事業とMVNO事業の両方があって、MVNOの方が危なかったというのが意外だった。なぜPOM社はわざわざそちらに踏み込んでいったのか」と疑問を呈した。ユーザーは楽天モバイルに引き継がれ、「最悪の事態は免れたので、うさんくさいながらも最後は頑張った」としながらも、今後はユーザーに「MVNOの選球眼が求められる。MNOは会社が変わりながらもサービスは続くと思うが、MVNOは規模が小さいので、なくなってしまうリスクもある」と警鐘を鳴らした。

 一方、楽天の参入については、ドコモの吉澤社長が、MNOになりながらMVNOでドコモの帯域を借りることは基本的にないという考えを示している。石川氏が吉澤社長にインタビューしたときに、楽天にとって厳しい状況になることがうかがえたという。「楽天の設備投資6000億円が厳しいということは、みんな言っている。吉澤社長も『私には無理です』と言っていた」と設備投資額の少なさを指摘。

 石野氏は、2月にバルセロナで行われたMobile World Congress 2018で、楽天の三木谷氏の講演後に話を聞く機会があり、三木谷氏が「勝算がなかったらやらない。バカじゃないんだから」と語ったことを紹介した。

 太田氏も「楽天は読みが甘かったかなという感じがする。電波を割り当てられて、それなりの責任があるので、そこの意識が大丈夫かなと正直、思うところがある」と苦言を呈した。

 POM社が破綻したり、MVNOの純増の伸びが鈍化したりしている状況で、MVNOの業界再編があるかという田中編集長の質問に対しては、太田氏が「そういう議論はまだ早いと思う」と発言。「インターネットの普及期もISPがたくさん出てきて、淘汰(とうた)された。その過程で、成長したときもあれば、停滞したときもあった。この波を繰り返しながら市場は成長していくもの。MVNO事業は、格安スマホ以外にも、働き方改革でモバイルワークが増えて法人需要が高まるとか、IoTとか、まだまだ伸びる要素はある」との認識だ。

 佐々木氏も、「まだMVNOは伸びているんだから、業界再編をというより未来をつかんでいくポジティブな考えで戦う」と前向きだ。「どこに行ってもクレイジーだと言われるのが日本のMVNOの数なので、間違いなく再編は来ると思うが、それはもう少し先の話」と語った。

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