8月6日、楽天は2018年度第2四半期決算説明会を開催。そのなかで、2019年秋に開始する携帯電話事業への言及があった。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年8月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
同社は2018年から10年間で5263億円を基地局構築に充て、残りは1.7GHz帯を使う既存事業者の移行措置のために使う計画だった。しかし、今回の説明会で、6000億円を下回る金額で設備投資が可能になるとのことだった。
業界関係者の間では「6000億円でも少ないのに、もっと金額が減ってしまうのか」という、驚きの声が上がっていた。
8月10日付のケータイWatch「見えてきた楽天の基地局ネットワーク構成」で指摘があったが、おそらく楽天は、CORE・RANのオール仮想化によるネットワークを構築するものと見られている。楽天にはレガシーの設備がないため、イチから仮想化によるネットワークが構築できる。これにより、汎用サーバーを使い、安価なイーサネットスイッチを利用できるため、既存キャリアとは比較にならないほど、低コストでネットワークが構築できるというわけだ。
ただ、業界関係者の間で不安視されているのは、コアネットワークというよりも、基地局側の問題だ。
楽天では、CTO(最高技術責任者)として、インドで2016年に新規参入した通信キャリア、リライアンス・ジオで上級副社長だったタレック・アミン氏を起用したと発表した。
アミン氏は、インドだけでなく、ファーウェイやアメリカ・T-Mobileでの経験がある模様。
ただ、インドのキャリアで成功した経験があるからといって、日本のキャリアでのネットワーク構築に実力を発揮できるかといえば、かなり未知数なのではないか。
残念ながら、インドは自分にとって未踏の地なので、ネットワーク品質のことはよくわからないが、少なくとも、日本以上に、地下街や地下鉄、高層ビルの上層階などで、スマホが快適に使えるとは思えない。
楽天では2026年3月までに人口カバー率96%を目指すとあるが、すでに3キャリアは99%以上を実現しているだけに、開業7年経過しても相当、見劣りしたネットワークにしかならないのではないか。
個人的には、日本の3キャリアが提供するネットワーク環境は、世界一だと思っている。海外キャリアの経験がある人であっても、3キャリアと同等のネットワーク品質を作り上げるのは、至難の業なのではないか。
楽天では「数ヶ月中に具体的な技術を紹介したい」(MNO事業の責任者である山田善久氏)とのことなので、早く披露してもらって、我々の不安を払拭してもらいたいものだ。
もうひとつ、気になったのが、楽天の組織改編だ。
現在は楽天本体がMVNO事業を手がけているが、組織改編後は、楽天モバイルネットワークがMNO事業とMVNO事業の両方を手がけることになるようだ。
ただ、この座組だと、NTTドコモから「MVNOとMNOの両方を手がけるというのはおかしいのではないか」(吉澤和弘社長)と待ったが掛かる可能性がある。
NTTドコモ回線を使いながら、いまMNOのグループ会社となっているビッグローブやLINEモバイルは、MNOを手がける本体とは「別会社」という立ち位置だからこそ、NTTドコモ回線を使っても、なんとか許されている。
しかし、楽天の場合は、MNO自体がMVNOも手がけることになってしまう。こうなると、NTTドコモも黙っていないだろう。
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