端末では、Huaweiの大躍進が目立った1年だったと総括できる。これまでも、SIMフリー市場で高いシェアを誇っていたHuaweiだが、年始にauが「nova 2」を採用したのを皮切りに、続々と大手キャリアからもスマートフォンが発売された。中でもインパクトが大きかったのは、ドコモが独占提供した「P20 Pro」だ。P20 Proは初のトリプルカメラ採用モデルで、カラーセンサーに1/1.7型の大型センサーを採用したことで、暗い場所にとにかく強い。これにAIを組み合わせた夜景モードは、もはやスマートフォンのカメラの域を超えた完成度だ。
P20 Proは先行して3月にグローバルで発表され、一部では話題になっていたが、ドコモが独占し、しかも日本仕様のおサイフケータイに対応するなど、日本上陸にあたっても話題に事欠かなかった。その後も、ソフトバンクが「Mate 10 Pro」「Mate 20 Pro」を採用するなど、続々と大手キャリアにフラグシップモデルを納入するようになった。SIMフリー市場で自らブランドを築き、性能や品質の高さを周知させた上で大手キャリアに参入するというのがHuaweiの戦略だ。それが見事に結実した1年だったといえる。
実際、Huaweiはシェアを急速に伸ばしている。MM総研のデータでは、2018年度上期のシェアで5位につけ、4位のサムスンに肉薄した。依然としてAppleが全体の半数弱と大きいが、スマートフォン全体の出荷台数が微増と伸び悩むなか、急成長をとげた格好だ。ただ、年末には米中貿易摩擦がきっかけとなり、CFOがカナダで逮捕されたのを契機に、同社に対するネガティブな報道がさかんに行われるようになった。端末に「余計なものが入っている」といった事実に基づかない報道に対しては、即座に抗議の声明を発表したものの、安全保障の観点でネットワーク事業には国内でも逆風が吹いている。
同様に、2018年は対イラン制裁を破ったとして、ZTEが米企業との取引を禁止された。この余波は日本にもおよび、発売済みの端末のアップデートサーバが停止したり、端末の開発が一時ストップしたりといったトラブルにも見舞われている。Qualcommのプロセッサはもちろん、OSにAndroidを採用しているなど、スマートフォンメーカーは米企業への依存度が高い。
HuaweiのCFO逮捕も、対イラン制裁に違反した疑いがかけられており、予断を許さない状況だ。ZTEと同様の状況に陥ってしまえば、キャリアが取引を見直す恐れもある。ZTE以上に端末メーカーとしての規模が大きいだけに、万が一のことがあると、影響は甚大になりそうだ。
機能別のトレンドとしては、やはりAIの進化が目覚ましかった。中でもGoogleのPixel 3/3 XLは、シングルカメラながら、背景を美しくボカすことができ、夜景モードやデジタルズームの画質も高い。AIを主力としているGoogleが手掛けたからこそ実現できた機能といえそうだ。また、AppleもiPhone XRでシングルカメラのポートレートモードを搭載。自社で設計した「A12 Bionic」の力をフルに生かした格好だ。HuaweiもKirin 980でAI処理をつかさどるニューラルエンジンを強化しており、Mate 20 Proではビデオ撮影時に背景だけをモノクロにする機能に対応した。
SIMロックフリースマートフォンでは、OPPOが新規参入を果たし、続々と端末を投入。フラグシップモデルの「Find X」を発売したり、参入からわずか半年で「R15 Pro」をおサイフケータイに対応させたりと、その多彩なラインアップで話題を集めた。大手キャリアへの進出を狙うOPPOだが、SIMフリー市場でも徐々に存在感を高めている。
一方で、分離プランの影響もあり、市場ではミドルレンジモデルの存在感も徐々に大きくなりつつある。フラグシップモデルの進化も目立った2018年だが、実売を見ると、シャープの「AUQOS sense」シリーズや、Huaweiの「P20 lite」の躍進も目立った1年だった。ドコモが分離プランを導入する2019年は、この傾向に拍車が掛かるかもしれない。
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